イギリス国防省、「見えないように」見える戦車を開発中
2007年11月01日 12:00
【DailyMail】や【Telelgraph.uk】が伝えるところによると【イギリス国防省】が先日、戦車を人間の目で視認できないようにする新技術(不可視技術)を公開した。現在開発途上で、2012年までには実用化する予定であるという。
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正確には「見えない」戦車ではなく「見えないように見える」戦車を作るこの技術、対象となる戦車に対し周囲の背景をカメラとプロジェクターを使って投影することで「見えなく」させる。
戦車や軍服の色彩には、森林や草原には緑色や茶色、積雪地帯には白や灰色、市街地では灰色(コンクリート色)などのまだら模様を描く「迷彩」と呼ばれる方法がある。それのリアルタイム表示&究極版と表現すればよいだろう。あるいは、忍者が壁などに隠れる際に用いたとされる、壁と同じ色合い・模様をした敷物の方がイメージしやすいかもしれない。
概念図。実際にはもっと複雑。しかもこの構造のままではショータイムに用いる場合はともかく、実戦としては何の役にも立たない(笑)。
DailyMailでは公開された試験場でさる軍人が「自分はあの向こうに木や草を見ていただけだと思っていた。しかし実際にはその場所に戦車が実在していたのだ」と興奮しながら答えていたと伝えている。さらにイギリス国防省では対戦車用の「見えない技術」以外に軍服にも同様の技術を用いる計画があるらしい。
現在のところ大きな問題点として挙げられていたのが「カメラとプロジェクターの信頼性が今ひとつ」とのこと。将来的には戦車単独で(周辺備品を用いずに)見えなくさせることを目指しているという。
【軍内部のブログ】では今回の記事掲載について、「一連の研究ではすでにいくつもの成果を出している。しかし研究そのものはまだ初期段階でしかない」とし、実用化はまだ先の話であることを示唆している。
Telelgraph.uk上ではもう少し詳細な状況が語られている。今研究を担当しているJohn Pendry博士によると、「見えない技術」に用いるカメラとプロジェクターはシンプルなもので、これらを用いて実戦用に配備するのは空想のレベルではなく現実的なお話であるという。
Telelgraph.ukで参考事例として挙げられている、【東京大学内で行なわれている同様の実験Optical Camouflage】の動画。
ただやはり「カメラなど他の備品を用いずに、単独で『見えない技術』を実現するのが究極の目標だ」というのが博士の談。説明によると「光を屈折させる材料を用いて(アメリカのDARPA:国防高等研究計画庁によって開発中)可視光線をコントロールするカバーを作り、見た目を操作するものができれば、対象物は目に見えなくなる」とその理論を説明した上で「それを現実のものとするのにはかなりの時間がかかる」と述べている。赤外線を遮断する(赤外線追尾型兵器やレーダーから逃れるため)カバーはすでに実在しているので、「赤外線ができるのなら可視光線とて不可能ではあるまい」ということなのだろうか。
漫画なりアニメで少々こちら方面の話を知っている人であれば『攻殻機動隊』などに登場する光学迷彩のことが思い浮かぶだろうが、まさにそれの戦車版のような形。
もちろん赤外線やレーダーなどの電波系探知機には何の効果もないし、対象物が動くことで発する音や砂煙を隠すのも困難なので、対象物が停止していることが前提となる。いわば「ソナー」という海中への「目視」を避けるために潜水艦が海底に潜み、音響上「そこには海底しかない」と思わせるのと同じようなもの。
作戦準備中に敵に見つからずに待機する場合など、用途はある程度制限されるだろうが、軽装で実装できるタイプのものが完成すれば、兵士や戦車の生存率を飛躍的に高めることができるようになるだろう。
(最終更新:2013/09/08)
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