このAlbert村はテキサス州の州都オースチンから120キロほど離れた場所にある、【正直寂れた村】。1920年に建てられた家が一軒、学校の校舎やダンスホール、500年物のオークの木の下にバーのある宿屋(雑貨屋、週末のみ開業)、トラクター小屋があるがそれ以外に目立った建物はない(他に桃などの果樹園がある)。なおこの学校の校舎はかつてのアメリカ大統領リンドン・ジョンソン(Lyndon Johnson)氏が若い時分に建てたとのこと。ちなみに現在の「村の住民」は、現在の「村の所有者」であるBobby Cave氏以外は土木作業員だけ。

競売に出されていたAlbert村のトップページ。「Historic Town For Sale(由緒ある村、売ります)」のコピーが踊る。

Bobby Cave氏は10年計画でこの土地をレジャー施設を含めた観光スポットとしてよみがえらせようと考えていた。いわく「小家族がキャンプを楽しめるような、あるいは小イベントを開催できる場所を提供したかった」とのこと(【計画書、PDF】、【計画書、PDF】【最終構想図、PDF】)。記事によれば3年半の月日を費やした上で、「次のプロジェクトに自分の事業を移行する準備が出来た(つまりこの地での開発にはさじを投げた)」とし、売却を決めたとコメント。

Albert村のホール(ステージ)。
このようなコンサートの場として
用いられることもあるようだ

Bobby Cave氏はこの村を250万ドルでeBayに競売に出品し、結局300万ドル(3億3000万円)で落札された(BBCでは300万ドルだが他の米系メディアでは380万ドル・4億2000万円と報じている)。購入者はイタリア人とのことだが、それ以上のことはノーコメントを貫いている。eBayでは通常の商品と異なり不動産取引においては何の拘束力もないため、実際の契約を済ます前においては取引を終了したとはいえないからだ。しかし380万ドルで落札したイタリア人以外にも5人の購入希望者がいるため、心配は無用だと答えている。

住宅地や工場建設用地、商業用地の売買ならともかく、住宅が1軒しかなくとも曲りなりも「村」を売買できるというのはアメリカらしい大らかさがある、と表現すべきだろう。それにしてもわざわざイタリアからアメリカの片田舎の村を購入しようとしているこのイタリア人、別荘でも建てるつもりなのか、それともBobby Cave氏以上のビックプロジェクトをここに興すつもりなのか。現在のところ真相は明らかにされていない。