労働者 4人に1人は パートです 仕事はハードで 給与はひかえめ
2007年11月11日 12:00
【厚生労働省】が11月9日に発表した【平成18年パートタイム労働者総合実態調査結果の概況】によると、全国の労働者のうちパートタイムで働く人(「パート」)は全体の25.6%にあたる955万6000人に達しており、その多くが「正社員と同じ仕事をしても、賃金は低めに設定されている」ことが明らかになった。
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今調査は2006年10月1日の現状について、同年10月1日から31日までの間に行われた(個人調査は11月10日までの間)もので、調査方法は職業安定所の統計調査員経由で郵送による返送方式。有効回答数は5人以上を雇用している事務所が6653、個人が1万3426人。
●労働者の4人に1人はパートタイム
調査結果によると2006年の時点でパートの人数は955万6000人となり、2001年の調査時点での人数910万6000人から45万人増加している。
就業業態、性別の労働者数の割合
5年の間に正社員や労働者全体の数が減少しているにも関わらず、パートの人数が増加しているのが分かる。2001年時点では22.8%だったパート比率が2006年では25.6%に増え、正社員の減少をパートでまかなっている(あるいは正社員を減らしてパートを増やしている)のが分かる。
●パートが多いのは飲食店や小売・卸売業
全体では四分の一がパートという状況だが、産業や事業所規模別でその割合は大きく異なる。
産業や事業所規模別の就業形態別労働者数割合
表から見ればお分かりの通り、パートの割合が多いのは「飲食店、宿泊業」「卸売・小売業」。特に前者では全体の7割近くがパートで占めていることになる。一方「鉱業」「建設業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「情報通信業」などはパートの比率が低く、例えば「電気~」では全体の2%強しかパートがいないことになる。
確かに飲食店や一般小売店舗ではアルバイトらしき店員の姿をよく見かける。実情が反映された調査結果といえるだろう。
●パートを雇うのは「割安で忙しい時のみ役立つし、簡単な仕事だから」
なぜ飲食店や小売業でパートが多く、建設業や情報通信業ではパートが少ないのか。それが推測できるのが、「パートを雇った理由」の設問。
パートを雇用する理由
理由のトップ3は「人件費が割安」「一日の忙しい時間帯に対処するため」「簡単な仕事内容のため」となった。特に「人件費が割安」は7割強と過半数の事務所が理由としてあげている。一方で、「簡単な仕事内容のため」「人を集めやすいため」の割合は(「割安」同様)5年前と比べて大幅に増加しているのが分かる。
先の項目を見直してみると、パートの割合が多い業態では「商品の運搬や陳列、レジ打ちなど簡単な仕事内容が多く、離職率も高い」「時間や季節によって忙閑期が発生する」などの共通項があることが分かる。これらの業態ではよりフレキシブルに状況に対応し、しかもコストパフォーマンスを求めるため、パート率を増やしているものと思われる。
他方、「鉱業」「情報通信業」などは技術力や安全性などから仕事内容のハードルが高く、パートに任せられる領域は少ない。人件費の削減はすべての業態が望むところではあるが、忙閑期の発生割合は飲食業ほどではないし、何より「簡単な仕事内容」が見つからない。結果としてパートを雇用する割合が少なくなるのだろう。
●8割が「仕事は正社員と同じ。けど賃金は安い」パート
パートを雇用する最大の理由は「賃金が割安」だった。それでは仮に仕事内容が正社員と同じだった場合、賃金はどのような査定を受けるのだろうか。予想通り「仕事は同じでも賃金は異なる」と答えた事務所が全体の8割を占めていた。
パートの仕事内容が正社員と同じ場合の、正社員との賃金格差の有無
ほとんどの場合が「パートの方が賃金は安い」パターンであり、特に1000人以上の企業では9割がそのスタイルだった。一方で、事業所規模が大きくなればなるほど「パートが低賃金」の比率が高まり、小規模の事業所では「パートも正社員も同じ賃金処遇」の割合が(比較的)高いことが分かる。
よく聞かれるのが「なぜ仕事内容が同じなのに賃金が安いのか」という言葉。その回答は次の通り。もっとも多いのが「勤務時間の自由度が違うから」
仕事が同じでも正社員とパート間に賃金格差がある場合の理由
パートの賃金が安いのは
企業からの「自由」が多いから。
≒賃金格差は
「会社への拘束の代償」
事業所規模で多少のばらつきはあるが、どこも「勤務時間の自由度が違う」「正社員には企業への貢献がより期待できる」さらには「残業の時間数・回数が違う」などの回答が多くなっている。一言で言い換えれば、「企業が拘束できる部分が多いこと」になる。
少なくとも企業側の主張としては「仕事内容が同じでもパートの賃金が安いのは、正社員には仕事そのもの以外の面で企業に貢献している面が多いからだ」ということになるのだろう。目に見えない、見えにくい部分での企業貢献度が、そのまま賃金の格差に反映されているというわけだ。
「時間の自由度」「企業から拘束されにくい」パートならではのメリットから、パートを行なう人も多い。企業側としても人手が足りなくなったが正社員では人数の調整が難しい場合、人件費が安くつくパートで調整をさせるのが一番簡単な方法。
パートの大部分は「需要と供給がマッチした結果」であるといえるが、一方で「正社員として勤めたいのに就職先がないので仕方なくパートをしている」という人も多い。言い換えるならば「目に見えない部分の貢献度が賃金格差に反映されている、と企業側が主張するのなら、その『貢献部分』も行なうから、賃金の差を解消してくれ」つまり「正社員として雇用してくれ」と主張するパートも少なくない。今回の調査では「同じ会社かどうかはともかく、パートではなく正社員になりたい」と答えたパートの人は、5年前の調査結果の15.6%から増え、18.4%に達している。
アルバイトを含めたパートという就業形態はなくならないだろう。しかし単に「人件費が安いから」という理由だけで正社員を減らしてパートを増やしたのでは、企業そのものの統制が取れ無くなり、事業自身が立ち行かなく可能性も出てくる。なにしろ企業はパートに対して「簡単な仕事」を求めており「会社への忠誠度」「会社からの拘束」は求めていない。いざとなればすぐに離反しうるわけだから、モチベーションも上がりにくく、人材の育成による(金銭的には目に見えにくい)スキルアップによる作業効率の向上も望めない。それは企業だけでなく、パートをしている本人にも不幸な話といえよう。
パートをする立場は「パートのままで良いのか」、パートを雇う企業も「正社員ではなくパートの雇用で良いのか」、今一度考え直す必要があるのかもしれない。
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