動画投稿サイトの閲覧経験は8割近く、「著作権侵害では?」との関心はわずか6.4%
2007年11月06日 06:30
アイシェアは11月5日、【Youtube】などの動画投稿・共有サービスについての調査結果を発表した。それによると動画共有サービスを使って動画を見た経験のある人は8割近くにのぼる一方、投稿動画の中に著作権法上問題があるコンテンツが多数見受けられることについて、不満を感じる人はわずか6.4%にすぎず、利用者の法的意識が薄いことが明らかになった(【発表リリース】)。
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今調査は無作為抽出したパソコン利用者285人から有効回答を得られた上でのデータで男女比は75.4対24.6。年齢層は30代48.8%、ついで20代32.6%など。回答者数が少なめのため、世間の実情とは多少のぶれが生じていることを考慮してデータを見る必要がある。
●動画共有サービス利用者は78.6%、使わない人は「見る必要がない」から
動画共有サービスを利用したことがあるかどうかの問いには、72.6%の人が「見たことがある」と答えている。
■動画共有サービスを利用したことがあるか
・見たことがある……72.6%
・利用したことはない……21.4%
・動画を投稿したことがある……6.0%
動画を投稿した経験のある人は必然的に見たこともあるはずなので、「見たことがある」人は事実上78.6%ということになる。パソコン利用者の約8割が「動画投稿サイトを利用した経験がある」という計算だ。
一方、「利用したことがない」と答えた約2割の人にその理由を尋ねたところ、「動画を見る必要がないため」という回答が4割強を占めた。
■動画共有サービスをなぜ利用しないのか
・動画を見る必要が無いため……43.9%
・動画共有サービスを知らなかった……28.8%
・利用しているパソコン性能が十分ではないため……9.1%
・通信速度、利用回線が十分ではないため……9.1%
・動画共有サービスに違法性があると感じたため……7.6%
・その他……1.5%
パソコンのスペックなどから閲覧できないという人は仕方が無いが、「見る必要がないため」というのは少々残念なお話。直接動画共有サイトそのものにアクセスする以外に、動画をブログパーツ化してサイトやブログに組み込み、状況の説明・解説を分かりやすくするという「画像以上の解説手段」としても動画共有サイトを利用することができる。当サイトでもいくつかの記事でその手法を用いており(もちろん著作権上のチェックは十二分に行なっている)、単なるテキストより分かりやすい内容を作り出すのに大きな手助けとなっている。
●動画共有サービスの不満や問題点とは
文章や画像を掲示板にアップロードし情報を共有化するのと同じスタイルで、動画を簡単に共有、利用、投稿できる動画共有サービスは、直接動画を閲覧したり投稿する以外に、直上出説明した「ブログパーツ化」など、さまざまな利用方法で楽しむことができる。しかしその一方、技術や仕組みの進歩の過程にあることから、色々な不満や問題点も多い。
そこでまず、動画共有サービスについて不満に感じることを確認したところ、「画質が悪い」という意見がもっとも多く、回答者の約半数が答えている。
■動画共有サービスに関する不満
・画質が悪い……46.8%
・画面が小さい……34.8%
・特に不満に感じる事は無い……26.2%
・動画が止まる……26.2%
・音ズレが気になる……16.5%
・監視体制……8.6%
・続きが見つからない……8.2%
・著作権を侵害している動画が多い……6.4%
・その他……2.2%
画質の悪さや画面の小ささなど、動画の質の問題は、回線速度や利用者側のパソコンのスペック、サービス提供側のシステムの許容量の問題から現状では仕方ないものといえる。今後インフラがさらに整備され、再生側のスペックや各種技術が進歩すれば、少なくともこれまで以上の質の動画が提供され、これらの不満のかなりの点は改善されることだろう(あるいは法的問題を回避するため、あえて画質を落としている……という意見もある)。
その一方、「監視体制」「著作権を侵害している動画が多い」など、動画共有サービスのもう一つの、そして今後もっとも大きな課題となるであろう点への問題意識はきわめて少なく、両方とも1割にも満たないことが分かる。啓蒙活動が足りないのか、あるいははなから無視するものと決め込んでいるのかは不明だが、非常に気になる値ではある。
「今後改善して欲しいこと」でも、「サービス充実優先、法的整備は軽視」という同様の傾向が見られる。
■動画共有サービスで今後改善してほしいこと
動画の高画質化……52.1%
画面サイズの拡大……32.2%
回線の拡張……30.7%
ノイズ処理……24.3%
動画検索機能の向上……17.2%
著作権を侵害している動画の削除……6.7%
監視体制の強化……4.5%
特に改善して欲しい事は無い……23.2%
その他……2.2%
品質向上が数十%もの数字をはじき出しているのに対し、「監視体制の強化」は4.5%、「著作権侵害動画の削除」は6.7%でしかない。
ほぼ一年ほど前に同様の調査が日経新聞のウェブサイト上で行なわれ(【動画投稿サイトで「テレビ映像無くなれば利用減る」が6割、日経調査】)ている。ここでは
・動画共有サービスの利用者は49.7%
・著作権上問題のある動画が掲載されなくなったら動画共有サービスの利用頻度は落ちる、と回答した人は現利用者の2/3
・著作権上問題のある動画でも投稿して良いかどうかについては賛成・反対・中立がほぼ同数
・「閲覧だけなら著作権上問題のある動画でも見て良いと思う人が6割近く」
という結果が出ている。調査そのものが1年ほど前であることや、調査方法・調査数・選択肢の内容などあらゆる面で差異があるため一概に比較はできないが、動画共有サービスの利用者における著作権への考え方はあまり変わらないか、むしろ法的問題への意識が薄まっているようにすら感じられる。
著作権法は基本的に親告罪(権利者が「問題があるよ」と訴えなければ事が起こせない)。そのため、権利を侵害され被害を受けている側が労力を費やしてチェックをし、わざわざ申告しなければならないという、権利者側からすれば不条理な状況にあるのが動画共有サイトの現状の一面ともいえる。
お互いの利益のために
歩み寄りが必要
そのような動画を投稿する側にも色々な主張(商品ではすべての人に見られる可能性が低い、生産中止で手に入らない、「楽しければいいじゃないか」、情報の隠ぺいをされてしまっている、商品のアピールや販売促進につながるなど)をし、正当性を主張している。また中には「法的な縛りが無いからといって何でもやってよい、と言うわけではない」と主張する当事者が、一方では率先して「何でもやって」いる状況が見受けられる。
過去の報道や歴史的イベントの情報など、「報道」「マスコミ」を名乗るのなら展開を許可しても良いはずという考え・たぐいの動画も少なくない。法上の「引用」の解釈も諸般あるだろう。この点では著作権も今以上に柔軟性のある発想を持ち、歩み寄る必要がある(既得権益を失うリスクは否定できないが、工夫を施せばそれ以上に得られるものも多いはず)。
しかしその一方で、自分の都合ばかりを優先させるあまりに「して良いことと良くないこと」を見失っているように見える現状は、改めねばならないだろう。
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(最終更新:2013/08/18)
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