ジェネリック医薬品、認知度や「効き目に変わりなし」「不安無し」は7割強
2007年11月24日 12:00
健康保険組合連合会は11月20日、医療に関する国民意識調査結果を発表した。それによるとジェネリック医薬品(後発医薬品)について知っている人は7割を超え、実際に服用したことがある人は1割強に登っていることが明らかになった。服用した人の意見では「効果に変わりはない」「不安は無い」と回答する人が7割程度にのぼり、現状ではジェネリック医薬品は好意的に受け止められているようだ(発表リリース、PDF)。
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今調査は郵送による発送・回収方式で2007年9月に行なわれ、2000人を対象。うち1263人から回答が得られた。男女比は554対693。平均年齢は46.9歳。年齢階層は60代がもっとも多く23.4%、次いで50代の22.1%。比較的年齢が高く、医療費にも関心の高い層の回答が多い。
ジェネリック医薬品とは「後発医薬品」とも訳されることのある、新薬特許が切れた後に作られる医薬品のことを指す。厚生労働省の承認を得れば特許料ナシで発売ができるので、先発医薬品と比べて値を抑えられる。欧米では一般名(Generic name:成分名)で処方されることが多いことからつけられたもの。「同じ成分を使って安く提供できる、同等の効果が期待できる医薬品」ということで医薬品業界・政府でも必至にアピールをしているが、医師・患者の双方から「医療費を抑えることができる」という賛美の声と共に「効果が疑わしい」との意見も強い。ジェネリック医薬品の浸透が遅れているのも、この疑問の声が最大の原因であるといわれている。
●知っている人は7割、使ったことがある人は1割
今回の調査結果にはジェネリック医薬品に関する質問項目とその回答も見受けられる。まず「ジェネリック医薬品を知っているか」「知っていたら、使ったことはあるか(知らなければ使うはずも無い)」という質問に対する回答。
■ジェネリック医薬品を知っているか
・知っている……74.4%
・知らない……24.6%
・無回答……1.0%
■(知っている人に対して)ジェネリック医薬品の服用経験はあるか
・ある……17.6%
・ない……82.0%
・無回答……0.4%
普及率については【ジェネリック医薬品への切り替え進まず、6%弱に留まる】などの報にもあるように、1割前後に留まっているという話は以前から伝えられている。今回の調査結果ではやや改善しているようにも見られるが、まだ10%台には変わりがないことが分かる。
また、服用しない82.0%の人に複数回答でその理由を尋ねたところ「医療機関や薬剤師に勧められたことがない」「病気をしないため、薬を処方されたことがあまりない」がそれぞれ52.5%、46.0%と多数を占めた。後者はともかく前者については、【ジェネリック医薬品への「変更可処方せん」はわずかに11%・福岡県調査】にもあるように、「効果面の不安を取り除く説明に時間がかかる」「品質に信頼がおけない」などが医療サイドの不安にあるからだと思われる。
●「効き目に変わりなし」7割、「安くなった」は約半分
実際にジェネリック医薬品を服用した人に感想を尋ねたところ、「効果に変わりはない」と答えた人が7割を超えていた。
★ジェネリック医薬品を服用した感想
■薬の効き目
・変わりない……72.7%
・効き目が落ちた……3.6%
・分からない……23.6%
■薬の安全性
・不安を感じなかった……73.9%
・不安を感じた……13.9%
・分からない……10.9%
・無回答……1.2%
■窓口での負担
・かなり安くなった……46.7%
・それほど変わらなかった……23.6%
・分からない……28.5%
・無回答……1.2%
ジェネリック医薬品の性質上、薬の効き目が先発薬と比べて向上することはないにしても、効果に変わりがないか落ちたのかは、劇的な変化がない以外は「医療の素人」である患者自身には分からないはず。にも関わらず、3.6%に過ぎないものの「効き目が落ちた」という回答があるのは問題視されるべきだろう。
また、先の「医者がジェネリック医薬品を処方しない理由」に挙げられていた「薬の安全性への不安」についても、患者の大部分は不安を感じていないものの、1割以上がわだかまりを覚えていることが分かる。
一番気になるのは窓口での負担、つまり「薬代が安くなったかどうか」。患者がジェネリック医薬品を使うのはひとえに「薬代(=医療費)が安くなる」から。もし価格が同等ならばわざわざジェネリック医薬品を使う必要は無い。それにも関わらず「かなり安くなった」と答えた人が半数程度しかいないのは、どういうことだろうか。選択肢に「多少安くなった」が無いのでそのように感じた人が「それほど変わらなかった」「分からない」に投票した可能性も考えられるが、価格の引き下げが不十分ということも一因としてあるのかもしれない。
現場の医者や服用する患者の思惑とは別に、薬品メーカーでは【ジェネリック医薬品でいずれも増収増益・大手3社の第3四半期出揃う】【2008年のジェネリック医薬品市場は2500億円へ、8.8%の成長】などにもあるようにジェネリック医薬品市場に大きな期待をよせている。また医療のシステムとしても【ジェネリック医薬品の品質を再確認する制度を富山県の医薬品工業協会が創設】などのように、ルールを定めて「品質・イメージをおとしめるようなものを市場に送り出さない」努力が模索されている。
しかしその一方、昨年の記事ではあるが【ジェネリック医薬品「問題あり」73銘柄と報告、日本医師会にて」】にもあるように、医療現場からは具体的な例を挙げて「ジェネリック医薬品はちょっと……」という意見が寄せられている。
医者も患者もジェネリック医薬品にプラセボ(偽薬)効果を求めているのではない。そして医療費は効力が同じならば安上がりで済めばそれにこしたことはない。ジェネリック医薬品を普及させて医療費削減を図りたいのなら、医療のシステムを作る側でも品質管理や安定供給などの仕組みをしっかりとルール化し、安心して患者が服用できるように工夫・助力してほしいものだ。
(最終更新:2013/08/18)
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