目指すはリッター40円! 「バイオ燃料技術革新協議会」初会合開催
2007年11月27日 19:30
先に【経済産業省と農水省、民間16社が共同で「バイオ燃料技術革新協議会」を発足、バイオ燃料開発促進へ】などで報じた官民学で共同してバイオ燃料(バイオエタノール)の開発生産普及を促進する協議会「バイオ燃料技術革新協議会」が11月21日開催され、資料が11月26日に公開された。事前報道では一部しか分からなかった参加民間企業名もすべて判明している。今回は気になるその企業名と、「何円の燃料精製を目指すのか」の2点に的を絞って紹介しよう(【発表ページ】)。
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●「バイオ燃料技術革新協議会」とは
ここで簡単におさらい。「バイオ燃料技術革新協議会」とは、日本国内でバイオ燃料の導入にあたって問題とされる「食料と競合しないセルロース系エタノール製造技術開発」について、計画表「国産バイオ燃料の生産拡大工程表」に従いながら経済的かつ多量にセルロース系原料からバイオ燃料等を効率的に生産する画期的な技術革新の実現を目指すために作られた、官民学共同の協議会。
分かりやすく言い直すと「バイオエタノールを量産したいがとうもろこしなどの農産物では高いし問題がある。雑草などの植物でバイオエタノールを作るため、政府と企業と研究機関が手を結んで色々がんばろう。そのための協議会を作ろう」というもの。
●参加企業
先の報道では参加する民間企業について【新日本石油(5001)】や[トヨタ自動車(7203)]【三菱重工業(7011)】としか報じられていなかった。今回、参加企業(委員などの形で代表者が顔を出している)の一覧などが公開されたのでここに掲載する。それぞれ、得意な分野を役立てるだろう。もちろん他に各官公庁のメンバーや学会・大学の教授なども参加している。
【新日本石油(5001)】(エタノール製造技術)
【出光興産】(システム・LCA)
【味の素(2802)】
【三菱重工業(7011)】
[トヨタ自動車(7203)](バイオマス原料)
【三菱農機】(バイオマス原料)
【三井造船(7003)】(エタノール製造技術)
【明治製菓(2202)】(エタノール製造技術)
【月島機械(6332)】(システム・LCA)
【東レ(3402)】(システム・LCA)
【王子製紙(3861)】(システム・LCA)
【ヤンマー農機】(システム・LCA)
【日揮(1963)】(システム・LCA)
【日産自動車(7201)】(バイオリファイナリー連携)
※()内はそれぞれの所属するワーキンググループ名。無いものは委員としてのみ参加。
●目指すもの……製造コストは1リットル40円
効率の良いバイオエタノールを元にしたエネルギーに限らず、水素や燃料電池、クリーンディーゼルなど多種多彩な「次世代エネルギー」の開発を目指しているのがこの協議体の特徴。例えば「次世代自動車バッテリープロジェクト」では2010年までにコンパクトEV(電気自動車)、2015年にはプラグイン、2030年には本格的EV普及を目標としている。
今記事において焦点をあてているのは「バイオ燃料」の部門。ここでは「安心・安全・公正」な拡大と第二世代バイオの開発を目指している。「ガソリンが1リットル150円を超えて辛いよ!」という叫びが聞こえてくる昨今、いくらまで燃料費を下げられるのかがポイントとなるわけだが……。
資料上にある、アメリカの計画図。2012年といえば今から5年後。
アメリカでは2012年(!)の段階で製造原価34円/リットルを目指す計画が実行に移されている。【石油の世界地図】にもあるように一日2000万バレル以上の石油を消費するアメリカでここまで製造原価を下げたところで、実売価格がそれに比類するほど下がるまでに量産できるのかが疑問だが、きっとアメリカならこなしてしまうだろう。そういう「火事場の馬鹿力」を持つ国であるのは間違いない。
一方日本では一部報道でも伝えられているように、中間目標として100円/リットル、最終的な目標として40円/リットルを掲げている。
日本の計画。新規技術の開発で2015年までに40円/リットルの製造コストを目指す。
詳しく説明すると次の通り。まず現状の技術の発展型として効率化を推し進め、普及させた場合、2015年までに100円/リットルを目指す。それとは別に、アメリカの「34円/リットル」に対抗できるレベルまで価格を落とすには、既存技術の延長ではない画期的な技術革新が求められ、それを果たした時には2015年までに40円/リットルを達成しようという目標が設定されている(逆にいうと、2015年に40円/リットルのものが作れるよう、新しい技術を開発するようにと尻を叩かれている状態)。
最終的には量産化を推し進め、2020年には既存技術の延長上はそのまま100円/リットルだが、新規技術においては20円/リットルが目標と定められている。
先日NHKで放送されたバイオエタノール関係の特集番組によると、原油価格が100ドルとすれば需給関係で形成される価格はそのうち60ドル程度、残りの40ドル分のかさ上げはヘッジファンドと年金資金が行なっているという。ファンドなり年金は元々価格の急激な変化に対応するための「ヘッジ」的な役割を果たしていたはずだが、いつの間にか投機目的が主流になり、現状のような「おかしな状態」を生み出してしまっている。そしてこの事態は今しばらく続くことだろう(原油価格100ドル突破も時間の問題だ)。
アメリカにしても日本にしても、さまざまな障壁はあるだろうが、一刻も早く有効な技術を開発し、安くて安全で安定供給される燃料(あるいは交通機関・動力源)を作り出し、相対的にガソリンなどの化石燃料の価格を押し下げてほしいものである。
(最終更新:2013/08/18)
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