【更新】経済産業省と農水省、民間16社が共同で「バイオ燃料技術革新協議会」を発足、バイオ燃料開発促進へ
2007年11月18日 12:00
[日経新聞]は11月18日、[新日本石油(5001)]や[トヨタ自動車(7203)][三菱重工業(7011)]など国内大手16社が、経済産業省や農林水産省などと共同で「バイオ燃料技術革新協議会」を11月21日にも発足させ、来年度からバイオエタノールの低コスト量産技術開発に関する実証研究に取り組むことを明らかにした。
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原油価格が60~100ドル、最近では90ドル前後で高止まりする現状において、代替燃料として期待されていたバイオエタノールも、とうもろこしなどの穀物を利用したものについては食料価格を押し上げる結果となり、新たな問題を引き起こしている。
バイオエタノール量産における弊害・食料価格の高騰を示すグラフ(資源エネルギー庁「運輸エネルギーの次世代化について」から)
元記事によるとこの協議会では、現状を踏まえ資源の有効活用の観点から植物廃材を原料にしたバイオ燃料について、2015年に1リットル当たりの生産コストを40円まで下げ、国際競争力を持ったものの開発(≒輸入品と同価格かそれよりも安く、「国内産より輸入品の方が低コスト」という状況から脱却する)を目指すとしている。
協議会における開発目標表(資源エネルギー庁「運輸エネルギーの次世代化について」から)
今件の詳細は5月に経済産業省資源エネルギー庁が提示した【運輸エネルギーの次世代化について】でまとめられている。それによると「バイオ燃料技術革新協議会」は、「国産バイオ燃料の生産拡大工程表」(国内でバイオ燃料を量産するための計画表、ロードマップ)との整合性を図りつつ、経済的かつ多量にセルロース系バイオマスからバイオ燃料などを効率的に生産する画期的な技術革新の実現についての具体的な検討、スケジュール作成、開発など官民連携して行うための協議会とのこと。とりわけ民間との連携や、食料との競合を避けるために農林水産省や関連省庁との連携が重要としている。
バイオ燃料技術革新協議会の位置づけ
参加企業は元記事では3社が具体名を挙げられただけで、16社全社名については元の資源エネルギー庁の資料を探しても見つけることができない。ただ、「石油化学やプラント、自動車など幅広い業種の国内有力企業」という表記があることから、列挙された3社と同レベルの有力企業でこの分野に属するところをピックアップすれば、該当することだろう(どちらにしても21日以降正式に発足すれば、上記関連ページで公開されるはず)。
バイオエタノール(バイオガソリン、バイオ燃料)は石油代替燃料・エネルギーの供給源多様化の面で有望視されているが、現状では原油以上に生産・輸出国が限られ、価格変動幅がガソリンに比べて大きい(つまり市場動向に左右されやすい)。さらにカロリーあたりの価格はガソリンより高い状態に留まっている。
バイオエタノールの生産・輸出量
また、バイオエタノールの大量導入・利用切り替えを(機材の変更なども合わせて)行なうと、現状の石油生産に大きな影響を及ぼすことや(例えば原油からはガソリン以外に灯油や重油、軽油など色々な生産物がもたらされる。ガソリンの需要が減るとその他の生産物の生産量も減らされかねない)、切り替えた後に原料供給が減った場合に石油製品の安定供給に支障が生じるなど、「エネルギー供給の安全性」上マイナス効果を生み出してしまう可能性も懸念されている。
これらの問題点も考慮した上で、「バイオ燃料技術革新協議会」では食料と競合しないセルロース系原料(要は草植物)を利用したエタノール製造技術開発を進めると共に、経済性を向上して各種問題の解決案を図るとしている。
具体的にどの程度「本気」で「成果」が期待できるのか、現状では未知数。21日の発足で明らかになる民間企業の顔ぶれや、その際に明らかになるであろうロードマップ、そして後の中間報告に注目したい。
また、バイオエタノールばかりに注目が集まっているが、バッテリー式や水素・燃料電池式の自動車、クリーンディーゼルなどの開発も今協議会では計画されている。この方面にも注意を払うべきだろう。
個人的には【プロジェクト名は「オーシャン・サンライズ計画」・東京水産振興会発の「海藻からバイオエタノール年間400万トン」構想詳細判明】などで報じられた、「オーシャンズ・サンライズ計画」などの「海藻からバイオエタノール量産計画」の進展も見たいものであるのだが……。
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