改正建築基準法、運用面で一部緩和へ
2007年10月31日 06:30
国土交通省は10月30日、先に改正された建築基準法において着工前の建築確認の審査が厳しくなると共に検査体制の不備から住宅着工に大きな遅れが生じていることを受けて、建物の設計の変更の際に、安全性に問題が無ければ改めて申請を求める事はしないなど、運用上で改正建築基準法を一部緩和すると発表した(【発表リリース「改正建築基準法の円滑な施行に向けた取組について」】)。
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【8月の新設住宅戸数、前年同月比43.3%・過去最大の下落率】や【改正建築基準法で影響を受ける周辺業界たち】で解説したように、6月20日に改正された建築基準法では着工前の住宅において安全性などを調べる建築確認の審査が厳しくなった。そのため住宅の着工戸数は前の年の同じ月に比べ、7月は23%、8月は43%と大きく減少し、周辺業界も合わせて影響が広がっている。
新設住宅戸数の変遷(2007年8月まで)
これを受けて国土交通省では、着工後に部屋の間仕切りや窓の大きさなどを変更する場合には、構造の安全性などが低下しなければ新たな申請を求めないなど(逆にいえば建築確認後でも安全性に影響しない設計変更は認める)、改正法の運用を一部緩和することになった。現状ではまだ「案」に過ぎないが、11月中旬にも施行規則を改正し、実施するとのこと。
現行の改正建築基準法では「耐震偽装対策として申請時の添付書類を大幅に増やした」だけでなく、「建物の構造や防火にかかわる計画変更は(再申請無しには)原則として認めない」「着工後の再申請は工事を止めた場合にのみ認める」など、安全性への過度の気配りから住宅建設上進行が遅延する要素を多分に含んだ内容となっていた。
今回の施行規則改正では、住宅そのものの構造や防火に関係する部分でも、構造上の性能などの低下がなければ再審査の必要はなく、完成後の検査などでチェックすることにしたという。また、事前申請の際に「ここの部分を変更する可能性が高い。もし変更する場合にはこのように対応する」(例えば杭のずれを考慮した変更設計や、窓の位置の変更設計)という変更可能性とその場合の変更点を記載しておくことで、計画が実際に変更した場合でも再申請の必要が無くなる。
また今回の発表リリースにより、【改正建築基準法最大の問題点!? 大臣認定ソフトが未だに完成していない現実】で伝えた「構造計算プログラム(大臣認定ソフト)」が10月22日段階で未だに性能評価審査中・準備審査中であり、発売されていないことが確認された。これについてリリースでは「旧大臣認定プログラムも引き続き使用可能であり」と説明しているが、最終的には改正建築基準法に照らし合わせた確認が必要となるため、状況に変化はない。
10月30日の東京株式市場ではこれを好感し、一部住宅建設銘柄が市場全体の雰囲気に反して大幅に上昇している。一方、8月分は9月28日に発表された新設住宅戸数が、9月分については10月30日の段階で未だに発表されていないのが気になるところではある。
(最終更新:2013/08/18)
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