【更新】リニューアルした産経と毎日のウェブサイトを斜め見してみる
2007年10月02日 19:35
先に【日経・朝日・読売による「ANY連合」正式発表、販売事業分野でも業務提携】でお伝えしたように先日「日経新聞」「朝日新聞」「読売新聞」の新聞大手三社(「ANY連合」)が共同サイトの構築などを柱にした業務提携を正式に発表した。一方残りの大手新聞社のうち毎日新聞と産経新聞だが、こちらも先に【「新聞没落」…週刊ダイヤモンド最新号を読み解く】や【スクープも「ウェブ・ファースト」! 産経とマイクロソフトで「MSN産経ニュース」が10月スタート】で報じているように10月からそれぞれ大幅なニュースサイトのリニューアルを敢行している。そこで今回は「ANY連合」から外れている、奇しくも同時期にリニューアルを果たした2社の新聞社サイトを斜め読みならぬ斜め見してみることにする。
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背景はすでに「スクープも「ウェブ・ファースト」! 産経とマイクロソフトで「MSN産経ニュース」が10月スタート」説明してある通りだが、「ANY連合」から外れた毎日新聞と産経新聞がリニューアルした背景にはそれなりの関係がある。以前毎日新聞と手を結んでいたマイクロソフトが9月一杯で手を切り、新たなパートナーとして選んだのが産経新聞だったという具合。さらに「ANY連合」にはグーグルが、毎日新聞にはヤフーが背景についていることもあり、大手新聞社のウェブ上のバトルは、検索エンジンの主導権争いをそのままトレースしているような形でもある。
●「信頼のオープンサイト」を目指す……毎日.jp
毎日新聞の公式ウェブサイト、旧毎日インタラクティブが生まれ変わった姿が【毎日.jp】。改編時の[プレスリリースはこちら]。「ニュースセレクト」「エンターテインメント」「ライフスタイル」という3ジャンルでニュースを分け、それぞれ「報道」「楽しさ」「生活」をテーマに情報を伝えていく。ソーシャルブックマークボタンの設置やブログパーツの提供、ニュース写真の検索などが肝。携帯電話版も提供している。
毎日.jp。記事本文のダイジェストは無く、すべてタイトルのみのトップページ。週刊誌の釣り革公告でももう少し詳しいコピーで説明されているというのに……。
後の「MSN産経ニュース」でも触れるが、最近は細い線でスタイリッシュに構築されたシンプルなデザインが流行のようで、ぱっと見はライト感覚のおとなしいデザインに見える。毎日新聞社のウェブの基調カラーのライトグリーンを「ニュースセレクト」にも用い、「エンターテインメント」には薄いだいだい色、「ライフスタイル」には黄緑色を用い、色別で情報のジャンルが分かるような仕組みは好感触。
ただ、第一印象のシンプルさと共に違和感があったのが、「トップページにおけるタイトルの多さ」。トップページにさまざまな情報へのリンクを詰め込んだ感が強く、検索エンジンそのもののトップページのような雰囲気がする。
通常の新聞社系サイトの場合、1段落分程度の前文(あるいは概要文)が記載されていてざっと見でそのニュースが伝えたいことが分かるようにしてあり、クリックして詳細をチェックするというスタイルになっているのだが、「毎日.jp」にはそれがない。トップページはすべて本文記事のタイトル(リンク)のみ。ピックアップしている写真の大きさがかろうじて「検索ポータルではなく新聞社サイト」であることを思い返させてくれる。
「少しでも多くの情報を詰め込みたい」「ボリューム感をトップページでアピールし、読者を圧倒させたい」という狙い・制作側の気合の入れ方は分かるのだが、これでは逆に既存の検索エンジン系ポータルサイトが提供している「ダイジェストニュースサービス」と何ら変わりがなくなってしまう。
詰め込みすぎて逆に損をしている、もう少し「トップページの重要性」を再検討した方がよいようだが、どうだろうか。
●「ウェブ・パーフェクト」を目指す……MSN産経ニュース
続いて紹介するのは、産経新聞がマイクロソフトと手を結んでスタートした[このページ(Sankei Webなど)は掲載が終了しています]。Windows Liveサービスを提供することで質・量共に充実したニュースサービスを提供するとのこと(【プレスリリースはこちら】)。こちらは残念ながらまだ携帯版は無いようだ。
MSN産経ニュース。こちらも細い線を基調にしたスタイリッシュなデザイン。
毎日.jp同様、細めの線で多数の四角を作って各エリアを区分した、スタイリッシュなデザインで構成されている。色も産経ウェブ……というよりMSNの基調色に近いライトブルーで統一。
トップページの構成はトップニュースを概要と共に掲載、ピックアップの写真ニュースと共に目立つ場所に置き、後はコラム記事や各ジャンルごとのニュースをタイトルで一覧化して併記するという、これまでの新聞社サイトとあまり変わらない形。トップページそのものにはあまり目新しさはない。
特定キーワードにカーソルを合わせると
吹き出しが開いて検索結果が出る。
MSN産経ニュースでの最大のポイントは各記事における検索機能。特定キーワードについてカーソルをあてると、MSN産経ニュース内とウェブ全体、そして画像検索の結果を吹き出しで表示させることができる。「うざったい」という人もいるだろうが、便利であるに違いない。また記事単位でWindowsLiveメッセンジャーを通じて知人に「口コミ」るようなメニューもついている。ネットジャンカーには役立つ機能だろう。
ビジュアル上やレイアウトの上での表現とは別に、記事そのものもMSN産経ニュースは大きな特徴がある。先の解説記事で「ウェブ・ファースト」「記事掲載期間を原則6か月に延長。一部記事では削除期間を設けない」「紙面には掲載しきれない記者会見や刑事裁判の詳細、記録を素早く報じる」と伝えているように、スクープでも紙媒体より先に掲載したり、記者会見などの詳細を全文載せるなど、面積上の制限のないウェブ媒体ならではの特徴をフルに活かしているのがありがたい。最新の記事では[町村官房長官の会見]が全文で掲載されるなど、「無料でここまでやって大丈夫なの?」と逆に心配してしまうくらいのボリュームで構成されている。
両新聞社サイトとも初日はアクセスが殺到し、ページの閲覧自身が困難な時間帯があったほどだが、現在はやや落ち着きを取り戻している。
一通り見て回った限りでは、記事のボリュームや編集方針などでやはり「MSN産経ニュース」の方に軍配を上げざるを得ない雰囲気がある。経営上の問題はさておくとしても、読者側からすれば「毎日.jp」よりも「MSN産経ニュース」の方が見る(読む)メリットが大きい。もっとも、スタートしてからまだ二日目ということで、いわば「産声を挙げた」ばかりの両サイト。これが完成形というわけではないので、この時点で結論を出すのは酷過ぎる。
両社とも今後、さらにビックなライバルである「ANY連合」の共同サイトの登場をひかえ、臨戦態勢を崩さないまま、読者の反応やアクセスデータ、編集上の問題などをチェックして、細かい調整や変更をしていくことになるのだろう。
これから来年にかけて、大手新聞社のニュースサイトは色々と楽しいことになりそうだ。
(最終更新:2013/08/19)
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