「いもづる式」とはアマゾンジャパンの書籍に限定し、「似たような、関連性のある」書籍を多角的に眺められるようにした検索サービス。本家のアマゾンジャパンで検索やトップページにアクセスすると、「この商品を買った人はこんな商品も」「似たようなジャンルの商品」などと、関連性のある商品を提示して近い趣味趣向に該当する商品を見せ、利用者の購入意欲をくすぐる場合がよくある。この「いもづる式」はそれをさらに推し進めて、有効活用しようというもの。まさに「いもづる」式に商品が表示されるという按配(あんばい)だ。

今回紹介する「音楽Rナビ」は、その「いもづる式」の音楽CD版。提供されるサービスはまったく同じ「似たような、関連性のある」商品を多角的に検索し、自分の趣向にマッチした、感性をくすぐる商品をリストアップしてもらって購入モチベーションを刺激しようというもの。

CDショップなどでは「ジャンル」「アーチスト」「発売元」「対象作品」などで区分されているが、「似たような雰囲気のもの」「自分が選択したCDをこれまでに買った人が、他にどのようなCDを買ったか(つまり自分と似たような趣味を持つ人は他にどのようなCDに惚れているのか)」までは教えてくれない。しかしそのようなニーズは絶対にあるはず。そこでアマゾンで一部「この商品を買った人は～」で教えてくれる「不特定多数の他人の意見」や「傾向」「同好の士たちのオススメ商品」を、「音楽Rナビ」では積極的に情報提供していこうというものである。

「らき☆すた」「涼宮ハルヒの憂鬱」などで活躍中の声優、平野綾嬢で検索し、トップに来たCDの関連商品を見てみる。なるほど、と思わせるものばかり。

続いて「セーラー服と機関銃」で同様に検索。むしろ「弱いつながり」の方が興味深い商品が並んでいる。

当方(不破)は音楽CDを積極的に聴くタイプではないのでCDに対するニーズもそれほど大きいものではないが、色々検索してみると確かに興味をそそられるものが多い。「強いつながり」はアマゾンジャパン自身でもタイトル名やアーチスト名で検索しなおせばほとんどリストアップできるが、「弱いつながり」の方は表示・指摘されてはじめて「なるほど」と思わせるものも多く、色々と楽しませてくれる。欲をいえば「弱いつながり」の商品で「どれくらいのつながり」があるのか、「つながり度」の表示があると面白いかもしれない(あるいは内部処理的には別のパラメータで選択されているのかもしれないが)。

現在まだ試験運用中とのことで、操作系に一部難儀するところがある(具体的ページを表示した後に新しい検索を開始する場合、一度トップページに戻る必要がある。各ページに「新しい検索」窓を設ければ操作が1クッション少なくて済む)。しかしシンプルにしてスタイリッシュなデザインは「いもずる式」同様で好感が持てる。

すでに一部データにおいて元祖「いもづる式」と「音楽Rナビ」とのデータ連動化が果たされているようだが、音楽CDと書籍の共通性は多いようで案外少ない。むしろ、「DVD」と「音楽CD」「書籍」の連動・共通性が強いことは、多くの人が実体験から理解できることだろう(例えば好きな小説を検索してみたらドラマ化された作品のDVDを見つけたり、テレビ番組のDVD化された商品を検索したら、原作の小説やテレビで使われたテーマ曲のCDを見つけたりなど)。今後DVDバージョンの「いもづる式」が誕生し、データの相互性が図られれば、飛躍的に利用価値は高まるはずだ。

マルチメディアという観点では、ゲームとの共通性も興味深い。ゲームから映像化(映画など)は『バイオハザード』『トゥームレイダーズ』くらいでサンプルは極端に少ないが、ゲームと、攻略本や設定資料集・原作本、そしてサントラCDなどの関連商品は多数存在する。ゲームそのものが好きならば、関連商品にも興味が沸くのは当然のことであるし、ニーズはある。

「いもづる式」の制作元では技術的には可能だがデータフォーマットが異なることや、購入者が多くないと関連性をたどるメリットがないことなどを実証実験した上で結論づけ、保留したという説明が行なわれている。よほどの人気タイトルでない限り、データの絶対量が少ないのは昨今のゲームソフトの悲しい現実ではあるが、仮にDVD版を作り終えたあとに余力があるようなら、是非ともチャレンジしてほしいものだ。

(最終更新:2013/08/18)