「マルサの女」も顔負け? 富田林市が航空地図システムで固定資産税もれ物件を500件も発見
2007年10月14日 12:00
【asahi.com】によると大阪市の富田林市が独自開発の地図情報システムを用いて、固定資産税の申告と異なる案件を約3000件も発見、うち課税対象となる約500件を確認したことが明らかになった。個別案件毎に評価をしなおして課税する方針だが、少なくとも数千万円の追徴課税が行なわれるとのこと。
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今回富田林市が利用したのは、【統合型GIS整備基本計画】に基づく、独自開発した地図情報システムGIS(Geographic Information System)」。現在すでに完成して稼動中で、【e絵図@とんだばやし】として誰でも自由に利用できる。要は航空写真を用いて基本となる富田林市の地図をつくり、その上に路線図や地形線、基準点、施設マークなど多種多様な用途の地図をトレース(重ね合わせる)するシステムを提供するというもの。実写の写真を見ながらバス路線をチェックしたり、市道の台帳図と照らし合わせて違いを確認することもできる。航空写真は去年の12月から今年の1月にかけて撮影されたもので、比較的新しいデータ。
「e絵図@とんだばやし」を用いて富田林駅周辺の工事予定ポイントを表示。
元記事によると富田林市の市税務推進室ではこの「e絵図@とんだばやし」を用いて、課税物件が記載された家屋図を重ねて調査。すると航空写真上では存在している倉庫や車庫、増設した住宅が、税務調査用に申告された家屋図と違っている案件が約3000件も見つかったという。推進室ではこのうち、農作業機械の雨除けなど課税対象外の物件をのぞき、500件を追徴課税の対象とすることに決めた。
→相違案件をチェック
→簡単に申告もれ案件を抽出
同室ではこれまで家屋図を元に職員が市内を実際に巡回して未課税物件を探していたものの、人数が少ないことや外から眺めるだけだったのでチェックもれが多かったとのこと。今回の「航空写真を用いた『e絵図@とんだばやし』の活用で、労力・コスト共に大規模に削減でき、さらに税収も上がる」と諸手を上げて喜んでいるという。
要は「うちにはこれだけしか建物がないから固定資産税はこれだけです」といった虚偽申請を保有者がしても、「航空写真に映っているこの建物は何ですか!」というツッコミを役所側ができるシステムなわけだ(自動検索は導入されていないので、自力でチェックする必要はあるようだが)。
似たような話は大阪府茨木市でも行なわれており、こちらは【パスコ(9232)】が開発したGISを元に新旧の航空写真同士を比較、新築された未課税物件を探していたという。ただしこれでは以前からある建物の発見はできないため、今後は富田林市と同様に家屋図を使って洗い出し中。やはり数百件の未課税案件が見つかる可能性を示唆している。
地上に露出している建物のチェックに限られる(例えば地下の建物や深い森の内部にあるものは航空写真には反映されない)が、GISの活用は労力の軽減と効率の向上には非常に有効な手立てといえるだろう。
本文中では「深い森の~」と書いたが、実際に森の部分をチェックしてみると、森林内でもいくつかの建物が確認できる。よほどの密林でないと、航空写真から逃れることはできなさそうだ。もちろん意図的に隠蔽するつもりで建物を建て、徴税逃れをしてはいけないことである
民間ベースのデータを使うなら、例えばグーグルやヤフーの地図提供サービスを用いて独自にシステムを開発すればさらに安価に抑えられる。しかし、肝心の航空(衛星)写真の更新期間を自治体の都合でコントロールすることができない。やはり市町村単位で独自にデータを使えるシステムを創るのが一番となる。
それでも例えば周囲の地方自治体と共同で一度に撮影し更新すれば、費用をさらに軽減することも可能だ。さらに人工知能などを用いて、入力されている市道台帳図と航空写真を比較し、明らかに違う部分を自動的に抽出してくれるプログラムが導入されれば、さらに効率は高まるだろう(精度の問題もあるが、プログラムそのものはさほど難しくないように思われる)。
ともあれ、航空写真を用いることで課税逃れをしている物件の所有者も、言い逃れは出来なくなる。IT技術を有効に活用した素晴らしい事例として、今後他の地方自治体でも積極的に活用してほしいものである。
※追記:
富田林市の航空写真システムを開発したのは【インフォマティクス社】でシステム名は【空間情報システム(SIS)】だそうです(参考:Trackback From【mktlab.info】)。
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