米メリル、サブプライムで評価損9100億円に拡大し赤字転落へ
2007年10月25日 08:00
アメリカ証券大手の【メリルリンチ】は10月24日、2007年7月~9月期決算を発表した。それによると信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発する有価証券の評価損が大幅にふくらみ、合計で79億ドル(9085億円)に達したことを明らかにした。これにより最終損益は22億4100万ドル(2577億円)の赤字に転落した。前年同期は30億4500万ドルの黒字だった(【発表リリース、英語】)。
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メリルリンチ側では今月はじめに所有証券の評価損が45億ドル程度になるとの見込みを発表していた。今回の発表はそれをさらに、しかも大幅に上回る額となる。これは多種のローン債券をまとめた債務担保証券CDO(Collateralized Debt Obligations、社債やローンなどから構成される、資産を担保として発行される資産担保証券の一種)が大幅に値下がりしたのが原因。サブプライム問題で市場が混乱して買い手不在状態となり、価格が急落。結果として帳簿上との価値との差を損失として処理せざるを得なくなった。
諸表を少々かいま見ると次のようになる。
・収入(必要経費計上済み)……+5.77億ドル(+98.33億ドル)
主要取引……-59.3億ドル(+16.73億ドル)
・各種経費(直接収入に結びつかないもの)……40.42億ドル(57.43億ドル)
・税引き前利益……-34.65億ドル(+40.90億ドル)
・最終収益……-22.41億ドル(+30.45億ドル)
※カッコ内は前年同期
株式売買部門や投資部門などでは好調な成績を収めたものの、主要取引部分(CDOによる損失によるマイナスが多い)が足を引っ張った形となる。
先日【野村ホールディングス(8604)】はRMBS(Residential Mortgage-Backed Securities、住宅ローン担保の証券)事業からの撤退を発表すると共に、サブプライムローンによる市場の混乱で大きく損失を出したことから2008年3月期第2四半期決算において730億円ほどの損失を計上することを発表している(【発表リリース、PDF】)。メリルリンチの場合はあくまでも「評価損」ではあるが、それでも桁違いなことが分かる。
日本国内では野村HDが上記のように「損切り」する形で損失を確定させたが、他の大手金融機関の動向は今ひとつ情報が流れてこないため、投資家の間に不安と不信が広がっている。一部報道では、さる大手銀行系企業がサブプライムローンを起因として百億単位の損失を11月にも発表するのではないか報じられており、市場全体の「足止め感」に拍車をかける形となっている。
大衆心理において不安定要素となるものの一つに「正しい情報が与えられず、宙ぶらりんの状態に置かれる」という状況がある。地震などで最新情報を得る手段が無くなった時がよい例だ。
ここしばらくの間は、内需関係では全体的な内需縮小・賃金問題・物価上昇と改正建築基準法、外部要因としてサブプライムローン関連の情報開示が、市場への大きな重しとなることだろう。
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