サイトを読者に売り込むための三原則

2007年09月29日 19:30

愛読書『王様の仕立て屋』が連載されていることもあり毎号購入している「スーパージャンプ」(集英社)。そこに最近流行の「ノウハウ指導漫画」の就職活動版ともいえる『銀のアンカー』も掲載されているのだが、その最新回で少々気になる話が語られていた。商品を売るための三原則を就職活動になぞらえ、学生達に「就職活動とは何か」を教え込もうというものだ。シンプルで分かりやすく感心したと共に、「サイト運営にも共通する部分が多いのでは?」と思い、早速「商品を売る三原則」を「サイトを読者に売り込むための三原則」に置き換えてみることにした。

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まず原本では「商品を売る三原則とは、『品質』『流通』『広告』である」と説明している。そして就職活動において「品質」とは人間性や経験・資質、「流通」とは企業へのエントリーやOB訪問、「広告」とはエントリーシートや面接でのパフォーマンスであると置き換え、特に「流通」を止めないことを強調している。

「商品」=「就職活動をする本人」は、「流通」してはじめて価値が出る。そして「流通」して市場に出れば他の商品との違いも分かり「品質」もみがかれるという。

「品質」……サイトの特性・個性、内容、蓄積

「品質」をサイト運営に例えると、「サイトの特性・個性」や「内容」「蓄積」に該当する。不特定多数の中の一つではなく、どこにもありそうにない自分だけの特性・個性があれば興味関心を引く。もちろんその期待を裏切らないだけの充実した「内容」も必要。体裁が派手で企業サイトと勘違いするほどしっかりしていても、中身がスカスカだったりいい加減なことばかり語られていたのではいけない。

「品質」が悪いと
「流通」や「広告」も
無意味なものとなる

読者のニーズにもよるが、単にテキストのみで展開するよりも、図解を加えたり文字の表示方法を工夫したり(大きなコピーを併記、中見出しをつけるなど)、動画や音声などマルチメディアに対応するのも質を高める要素になる。

そして「蓄積」。作りきりのものや表現するものがさほどない場合は絶対量が少なくても良いが、情報を集積できるタイプのものは継続して更新し、情報を蓄積し、歴史の厚みを自他共に認めるようなものとして作ること。実店舗でも老舗のお店の方に信用を置くのと同じ。長きに渡り、継続しているということは、それだけて立派な業績になる。

「流通」……情報の更新や追加

商品販売の三原則なら、商品を輸送ルートに送り出すことを指す。サイト運営の場合には、「日々是更新」。永久不滅に変わらない事象を解説したサイトなら手を加える必要はないが(俗にいう「放置形サイト」)、それ以外の場合には読み手が分かるように常日頃更新し、新鮮さを読者にアピールする。もちろん実際に情報の追加を行い、読者の期待に応えるようにする。

記事が「流通」(公開)されれば
多数の人の目に触れ
意見や訂正が得られる。
→品質の向上につながる

新聞社系のサイトでは一日何回も、それこそ十分単位で新しい情報が盛り込まれる。リアルタイムにサイト(の内容)が流通されることで、サイトそのものの価値が出る。一般企業のサイトでも、何年も更新されていないものと毎週のように新着情報が掲載されているもの、双方を見せられた時にどちらに好印象を持つか、押して図るべし。

また、就職活動へのたとえ話に出ていた「市場に出れば他の商品との違いも分かり「品質」もみがかれる」の件も、サイト運営においても当てはまる。ある出来事や商品について自分のサイトから情報を「流通」(発信、記事の掲載)をすることで、他人に自分の想いが伝わり、賛否両論の意見が寄せられる。また、間違いや関連情報があれば、指摘してくれる人も出るだろう。そのように話が進めばまさにその情報、そしてサイト自身の「品質」もみがかれる。

「広告」……サイト上の明記、RSSやプレスリリースなどの活用、検索エンジン対策

「流通」をスムースにするのに欠かせないのが「広告」。商品の場合にはテレビやラジオ、新聞や雑誌などで不特定多数に、あるいはターゲットを絞った対象に告知し、「存在を知ってもらう」、そしてできれば興味関心を持ってもらうのが「広告」の役割。

サイトの常連さんなら黙っていても定期的に訪れてくれる。その際にきちんと「流通」していれば期待に応えることができる(商品に例えるのなら「流通網を整備して毎日商品を各店舗に送っていれば、買い求めにやってくる常連のお客に答えられる」ということ)。

しかしお客は常連さんばかりではない。他サイトからのリンク、検索エンジンの検索結果、RSSでのチェックを通して、紙媒体からURLを打ち込んでなど、さまざまな機会で来訪する可能性がある。そのようなお客(一見さん)を取り込み知ってもらい、できれば常連さんになってもらうため、少なくとも「一見さん」になってもらうため、色々と手を打つのが「広告」。この「広告」手段は一般の商品が新発売される時にどのような手が用いられているのかを考えれば意外に簡単に分かる。

まずはサイト上に自分のサイトがどんな名前でどのようなタイプのものかを明記する。新商品でもどんな名前でどのようなものかが書かれていなければ覚えてすらもらえない。

そして各媒体への告知。新商品なら各メディアへの広告を打ったり、告知をしてもらったりする。サイトの場合は相互リンクをお願いしたり、RSSで新規記事のお知らせをする。ソーシャルブックマークを用いるのも一つの手。また、大きな機能追加をしたりリニューアルした場合には、プレスリリースを作ってお知らせするのも良い。

実店舗なら「タウンページ」、新商品なら各業界ごとの類似商品カタログへの掲載に例えられるのが検索エンジン対策。不特定多数の人が何かを探して閲覧する媒体に、「自分のサイトもあなたの探しているものにマッチしますよ」と伝え、一見さんになってくれるような機会を作る。ずらりと並ぶ同業他社よりも目立たせて、多くの利用者に自分のサイトを気づいてくれるように工夫するのが「検索エンジン対策」ということになる。

最大のポイントは「流通」を止めない

『銀のアンカー』では「最大のポイントは『流通』を止めない」と語られていた。理由は先に説明されている通り、「流通」することで価値が生まれ、さらに他の要素も磨かれるから。サイト運営の場合もやはり「流通」(情報の更新や追加など)を繰り返し、新鮮味を損なわないことにある、と考えられる。

「品質」と「流通」は
お互いに相乗効果をもたらし
「広告」はその2つを後押しする

「流通」させれば「品質」など二の次、というわけではないが、やはり「流通」の大事さにはかなわない。むしろ「流通」させ続けることで蓄積が進み、奥深さが構築される。さらに多くの読者の目にさらされ、「品質」チェックを受け、さらに「品質」を高められる期待ももてる。決して「品質」をないがしろにするのではなく、「流通」に重点をおいていれば自然に「品質」も高みを望める。そしてさらに、「流通」と「品質」の相互作用を助けるのが「広告」だといえる。

「売り込む」という表現はやや下種(げす)で、あるいは「上手にアピールする」あたりの言い回しを使った方がよいのかもしれない。しかし原作の「就職活動」において学生達が自分達を売り込む姿が、サイト運営において「一人でも多くの読者に見てもらい、満足してもらおう」と考えているサイト運営者(当方含む)の姿と重なり、あえて「売り込む」を使わせてもらった。

「定期的に質の高い情報を更新し、検索エンジン対策や他所へのアピールをしっかりと行なう」と一行でまとまってしまいそうな内容だが、運営サイトの魅力を高め、多くの人のハートをつかみ続けるための大原則としては、欠かせない内容ばかりといえよう。サイト運営は、商品を直接現金とのやり取りで売ってはいないし、就職活動をしているわけでもない。しかし、不特定多数の読者に情報を受け渡し、満足感をちょうだいするという点「ギブアンドテイク」という観点では似たようなものだ。

一人でも多くのサイト運営者に、何らかのプラスをつかむヒントにでもなれば幸いである。


(最終更新:2013/09/08)

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