[再録]郵政民営化、「期待」「不安」「分からない」が拮抗
2007年09月24日 12:00
【マイボイスコム】が発表した調査結果によると、10月1日から本格スタートする郵政民営化について、その成果に「期待している層」「期待していない層」「どちらともいえない層」がそれぞれ3割程度をしめ、拮抗していることが明らかになった。広報活動はそれなりに行なわれているものの、情報の伝達量そのものがまだ少ないことや、「実際始まってみないと分からない」という様子見ムードが支配的であることがうかがえる(【発表リリース】)。
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今回の調査はネット経由で行なわれたもので、調査時期は8月1日から5日。回答者数は1万2080人。男女比は46対54.年齢構成比は30代がもっとも多く39%、次いで40代の27%、20代の17%など。
●郵政民営化、期待してる・していない・わからないで三等分
日本郵政公社ではすでに民営化にそなえて、職員を対象とした「接遇・マナーレベル認定制度」を実施しているが、これについてまったく知らない人が8割近くを占めるなど、接客マナーの向上を目指した努力がほとんどお客にアピールされていないことが分かる。
この調査一つをとっても「告知度不足」が分かるのだが、単刀直入に「郵政民営化へどの程度期待を持っているか」とたずねたところ、非常につかみづらい結果が出た。
「郵政民営化」にどの程度期待をもっているか
「期待している」層は31.6%、「期待していない層」は33.9%、「どちらともいえない」は34.5%と、調査上の誤差を考えればほぼ三等分されたと判断してよい結果が出た。「三者三様」という言葉があるが、8月時点における郵政民営化への世間の想いはそのような状況であることが分かる。
●民営化後のサービス利用変化
今調査では民営化前後の郵政事業のサービス利用状況(利用予定)についてたずねているが、三大事業別に民営化前後で次のような動きが予想される。
・郵便事業……(96.6→83.5)
・金融事業……(79.4→66.2)
・簡易保険……(2.5→14.7)
※()内は(民営化前→民営化後)、利用経験・意向%
日本郵政公社(郵便局)事業の最大の特徴は「政府保証」と「地域密着性」にある。民間銀行より手厚い政府の保護を受け、「どんなにへんぴなところでも銀行は無くとも郵便局ならある」といわれるように簡易郵便局制度などで郵政・金融サービス網を日本中に張り巡らせる要(かなめ)となった郵政事業。今回の郵政民営化で政府保証のほとんどは無くなり、地域密着性も薄れる可能性が高い。
特に金融事業部門ではポイントの下落率が高い。民営化されることで他の一般金融機関と横並びすることもあり、既存のサービスを切り替えるのはともかく、「わざわざ新たに郵便局を使うこともないだろう」と考る人が多いのかもしれない。
意外なのが簡易保険事業。元々「かんぽ」はそれなりに魅力のある商品ではあったが、民営化されることでさらなるサービス充実が期待できる、という表れなのだろう。
先日【「郵便局の民営化」で何が変わる?】で郵政民営化に伴う変更点のまとめを記事化したが、おおざっぱな印象としては「民営化で負担が増える税金分を、料金の値上げでまかなう」という雰囲気がある。国鉄からJRの民営化のように分割されることも無かったので、「民営化された郵政事業」企業たちは、民営化後は引き続き日本最大勢力の金融・情報流通企業として君臨することになる
現行の郵政公社のサービスに対し、改善を求める項目についての質問では、「特に無い」が過半数を占め、わずかに「国内への小包の発送」「国内への普通郵便の発送」が10%強の値を示すのみだった。それなりに現行サービスについては満足度が高いと思われる。
その一方個別回答では「ATMの使い勝手が悪い」「融通が利かない」「他の金融機関と比べて手数料や交換レートが割高」「公社化されて配送時間が遅くなった」など、細かい点での(そして指摘されれば「なるほど確かに」という)問題点も多く指摘されている。
民営化後は利用者の声にこれまで以上に謙虚に耳を傾け、サービスの改善に努める必要があるだろう。そうでなければ他の民間企業と同様に、既存利用者からそっぽを向かれ、ライバルにお客を奪われてしまうに違いない。政府の庇護がこれまで通り受けられない中で、どのように「お役人気分」から脱却し、他の民間企業との争いに勝ち残っていくのか、見ものではあるし、期待したいところでもある。
※今記事の元データはすで8月25日の段階で記事にしてあります。今回、郵政民営化を間近にひかえたことや、関連のまとめ記事を作成したこともあり、それを踏まえて後半部分での再分析を行いました。
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