新聞とテレビ、相互に好影響を与える関係に
2007年09月22日 17:00
日経リサーチが運営するデータシグナルでは9月21日、「テレビ」「新聞」「雑誌」の3メディアについて、それらの利用を促進する他のメディアに関する調査結果を発表した。それによると「テレビ」と「新聞」はお互いの利用を促進する影響力が強い一方、「雑誌」は新聞や店頭で見た結果など、きっかけが分散していることが明らかになった(【発表リリース】)。
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今調査は8月23日から27日、16歳から69歳の一般個人男女に対してインターネット経由で行なわれたもので、有効回答数は5310人。男女比率は2893対2417。年齢層は50代以上がもっとも多く1922人、次いで30代1176人、29歳以下1114人、40代1098人。
●テレビは新聞、新聞はテレビがきっかけ
「テレビ」「新聞」「雑誌」の3メディアについて、それぞれを利用するきっかけは何かをたずねたところ、次のような結果が出た。
「テレビ」「新聞」「雑誌」の3メディアを利用するきっかけ
それぞれのメディアそのものの内容(例えば「新聞」なら「新聞記事」)を別にして、他メディアが与える影響を考えてみると、「テレビ」は「新聞記事」、「新聞」は「テレビ番組」がもっとも高いことが分かる。
一方、「雑誌」は自身以外は「新聞記事」「新聞広告」がやや高めであるものの、「店頭」もそれに近い割合が出ており、その他のメディアもあわせ分散傾向にある(取り分け高いきっかけがない)のが分かる。「テレビ」「新聞」は互いに仲良く、「雑誌」は一歩引いた立場にある、ということなのだろうか。また、インターネット経由の調査であることを考慮しても、雑誌が相変わらず「店頭での衝動買い」によるところが大きいことも分かる。
既存メディアへの
利用事由には
なりにくい
→1.ネット上で満足?
→2.他メディアへの影響力が
小さいから?
気になるのは「パソコン」系の情報をきっかけとした数字がきわめて低いこと。「パソコンのポータル・検索サイト」「その他のパソコンサイト」「掲示板・ブログ・SNSなどの口コミサイト」をきっかけに「新聞」「テレビ」「雑誌」を利用した人が、このデータから見るとほとんどいないことが分かる。これらインターネット上の情報を利用している人は、ネット上の情報で満足・完結してしまっているからなのか、それとも単に「新聞」「テレビ」「雑誌」への影響力が少ないからなのか、このデータからでは推測しきれないが、興味深い話ではある。
●新聞の壮齢・高齢層への影響力は高い
次に公開されていたデータは、「雑誌」を読むきっかけになったメディアについて、項目をしぼり年齢層別にグラフ化したもの。各年齢層別の傾向が如実に現れている。
雑誌を読むきっかけになったこと・年齢層別(項目限定)
10代~20代、30代くらいまでは「店頭」が大きな影響力を占めているが、年齢の経過と共にその影響力は低下する。一方、「新聞広告」「新聞記事」など、「新聞」をきっかけとするのは50代~60代がもっとも多く、新聞の壮齢・高齢層への影響力が高いことや、他メディアに対する波及効果も見逃せないことが分かる。
先に【新聞は高齢層、雑誌は若年層、ウェブニュースは壮年層……三者三様の「読みモノ」たち】などで調査結果を示したように、高齢層と比べて若年層では新聞を読む割合が少なくなっている。情報そのものから離れているのではなく、インターネットや携帯電話を代用しているというのが実情。そして今調査結果を見る限り、インターネットや携帯電話など、ネットメディアが既存メディア「新聞」「テレビ」「雑誌」に(、あるいは購読のきっかけを)与える影響力は概して小さい。繰り返しになるが、ネットメディアを多いに活用している人たちは、よほどのことが無い限りネットメディア自身で情報収集を完結してしまい、他メディアの必要性を感じていないからだと思われる。
完結しうる新メディア
→既存メディアは「食われ」る一方で
恩恵を受ける機会は少ない
【「新聞没落」…週刊ダイヤモンド最新号を読み解く】にもあるように、新聞業界では「新聞を読むお得意様である高齢層の数」が減少し続け、新聞市場が縮小することによる経営危機が間近に迫っているといわれている。高齢者社会の実現により高齢者そのものは増加するものの、「新たに高齢者になる人たち」は「これまでの高齢者」のように、新聞を愛読する傾向が少ないのも新聞市場縮小の一因。
そして「新聞」の市場が小さくなれば、それに強い影響を受ける「テレビ」「雑誌」の購読傾向も大きく様変わりすることだろう。
同様にネットにおけるストリーミングや投稿サイトなどによる動画配信、さらには「地デジ」の切り替えで、将来テレビそのものの視聴者も緩やかなカーブを経て減少するといわれている。「新聞」同様に「テレビ」の影響力が小さくなれば、他に影響を与えている「テレビ」「雑誌」の購読傾向も、これまた大きく様変わりすることは想像するに難くない。
要は「テレビ」「新聞」、特に「新聞」の市場規模の縮小によって、互いに支えあっていた「テレビ」「新聞」、そしておこぼれをもらう形だった「雑誌」も、突然劇的に影響力を減じる時がくる可能性があるといえる。例えるなら1×1は1でしかないが、それぞれが半分になった0.5×0.5は0.25となり、1/4にまで減じてしまうからだ。
互いに影響を与えている「テレビ」「新聞」がインターネットに「食われる」ことで、近い将来メディアそのものの構造図、影響力は大きくその様相を変えていくことだろう。その時はそう遠くないかもしれないし、すでに今現在、ひそかに現在進行形の形で進みつつあるのかもしれない。
(最終更新:2013/08/19)
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