「ハリネズミのロースト」「イラクサプリン」など真の「伝統的」英料理レシピが公開
2007年09月15日 12:00
【イギリスの新聞DailyMail】にて、午後9時からイギリスで放送される「The People's Cook Book」に関連する興味深い記事が掲載されていた。イギリスの究極な伝統的料理のレシピを紹介するというものだが、ローストビーフやキドニーパイなどの世間一般的な「伝統的料理」ではなく、考古学的なレベルでの古さを誇るものだった。もっとも古いものは6000年も前に食べられていたものだという。
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6000年前といえばまだ石器時代。その時代に作られた料理として、イラクサなどの葉と水、塩を大麦粉に混ぜて創った「イラクサプリン」を紹介。さらに、ベーコンやくん製の魚で作った「くん製シチュー」、「ミートプリン」「ソーセージ(の起源のようなもの)」などもある。
元記事に掲載されていた「伝統的」レシピ。もちろん番組制作のもので、このようなレシピが実際に発掘されたわけではない。
さらに上記番組では「8000年前はハリネズミをローストして食べていた」とも説明している。もちろん針はすべて取り除かれ、野ガモなどと共にシナモンのソースで食べられたようだ。さらに大麦によるパンは紀元前5000年前からポピュラーで、3000年後(紀元前2000年くらい)にはポタージュや肉・野菜のシチューと共に食べられるようになった。
そしてイギリスにローマ人が侵攻する(ローマ帝国によるイギリス本土上陸)ことで、イギリス人は卵を料理の食材として使うことも覚えた。これによりパイのバラエティは飛躍的に増えた。
番組ではこれらシンプルでワイルドな料理の解説をすると共に、
「イギリスでは最近急激な食生活の変化が起きている。変化そのものは古代から今にいたるまで日常茶飯事的に行われている事実だが、今の食生活がゴミを大量に生み出すことを反省し、古代の食生活に学ぶ必要はあるだろう。
何しろ冷蔵庫の中の食べ物の1/3は、毎週捨てられてしまうのだから。古代人達は食材を集めるために必至になって働き、その苦労を知っているので、ほとんどゴミを産み出すことはなかったのだ」
と、ウェールズ大学の学者の言を伝えている。
さらに元記事では、さまざまな「伝統的」古代メニューのレシピを公開している。そのレパートリーは「Nettle pudding(イラクサプリン)」「Smokey Fish Stew(魚のくん製シチュー)」「Patina of Elderberries(ニワトコの実の料理)」「Liquamen or Garum(魚醤)」などなど。例のハリネズミのローストやパンケーキ、ミートプリンなども掲載されている。
例えば幻の調味料とも言われている「Liquamen or Garum(魚醤)」のレシピは次の通り
●材料
・塩漬けのアンチョビ……100グラム
・水……700ミリリットル
・塩……400グラム
・乾燥オレガノ……一つまみ
・Sapa※……15ミリリットル
●調理方法
1:弱火で水に塩を溶かします。
2:オレガノ、Sapa、アンチョビを塩水に加えます。
3:'2'を20分ほど煮込みます。そして自然冷却します。
4:専用のびんに入れます。
5:完成です。
※Sapa……古代ローマ時代に多用された、グレープジュースを濃縮した甘味料。ただし酢酸鉛も原材料に用いられていたので、身体には良くない。これが古代ローマの衰退の一因とする学説もある。
「どうやってSapaなど手に入れるんだ。第一そんな(鉛を多分に含んだ)危ないもの口に出来るか」というツッコミはこの際ナシとしておく。他にも原材料の調達が非常に困難だが(笑)ちゃんとレシピの体裁をなしているのが興味深い。
これとは別に、安全で今でも調達可能なレシピも記事内からのリンク誘導で掲載されている。例えば【古代パンケーキ】のレシピをはじめ、【NEMETON】というサイトでは、イギリスの伝統的……というよりは古代的なレシピの数々が再現され、紹介されている。興味がある人はのぞいてみるとよいだろう。
また、関連する書籍を4冊ほど見つけたので下記に並べておく(日本古代の、実践的なレシピ関連サイトや書籍も探したのだが、栄養学的な話や歴史そのもののばかりで、古代というよりは「大昔」程度のものしか見つからなかった……)。料理に興味がある人は、これらの「古の、ワイルドでたくましく、そして素朴で力強い」料理にチャレンジしてみるのも一興。もしそのような物好き奇特な方がおられたら、是非とも写真を投稿してほしい。
(最終更新:2013/09/08)
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