なぜ中国製おもちゃは鉛問題が多発するのか

2007年09月13日 08:00

時節イメージ先日【米マテル社、中国製のおもちゃを多数新たにリコールへ】などでお伝えしたように、特にアメリカからの摘発で「中国製品に基準値以上の鉛が混入していたので回収する」という話が相次いでいる。鉛が人体にプラスとならないのは容易に理解できるが、ではなぜ身体に良くない鉛が中国製の商品、特におもちゃで大量に見つかるのか。それに関する説明が先日の【NewYorkTimes誌】で行なわれていた。理由はずばり「安いから」だという。

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アメリカで回収されている中国製おもちゃの大部分は「必要以上に鉛を含む塗料」が問題。そのような塗料を使う理由について、中国関連の専門家やおもちゃメーカーは「単純明快にいえば、価格の問題だ(The simplest answer, experts and toy companies in China say, is price.)」と説明している。

例えば高度の鉛を含む塗料は、あまり含まない塗料と比べて1/3ほどの価格で売られているという。市場競争のみが先行して「発達」し、しかるべきルールが浸透していない中国では工場主が利益追求のためだけに安くて鉛が大量に含まれる塗料を使ってしまうという。

鉛に関する規制はそれを使用する人、子どもの場合には特に、の健康を考慮すべき。鉛の必要以上の摂取は人体にさまざまな問題を引き起こすことが、これまでの研究で明らかにされている。ところが中国の規制は(存在していても)実際に適用されることはあまりないという。

冷戦時代のソ連では
環境関係のルールは
事実上「建前」だった。
それと同じことが
現在の中国で起きている。

元記事では環境衛生の専門家であるScott Clark教授の説明として、冷戦時代のソ連の例を挙げている。ソ連は当時非常に厳密な規格を定めていたが、それがほとんど実施されなかった。「それはまさに見せ掛けでしかなかった(It was just for show.)」とはClark教授。それと同じ現象が、現在の中国で起きているのだという。

教授らの検査チームは中国の上海やその他の地域で実際に塗料のチェックを行い、26%のケースでアメリカ・中国の規格を満たしていないという結果を得た。上海の高級ショッピングモールで販売されている商品ですら、基準量以上の鉛を含んでいたという。ただ、似たような症状はインドやマレーシアなどでも観られ、シンガポールだけが基準を満たしていたという。

さらに検査チームが現地調査を続けたところ、いくつかの中国のおもちゃメーカーが実際に高レベルの鉛を認めた(あるいは同業他社が利用しているのを知っていると答えた)。彼らは鉛を多く含む塗料が安いから、そして鉛の含有量が多いほど色がきれいに出るから、それらの塗料を使うのだという。具体例として、ある塗料は鉛が含まれないものより30%安かったとのこと。また、「依頼主の請求条件で、価格上の問題があるのなら、依頼主の合意を得た上で鉛の塗料を使う。そうすれば依頼主の願いがかなう価格にすることができる」とし、ルールが事実上形骸化していることを明らかにしている。

役人は何もせず
事業主は費用削減のため
依頼主の求めに応じて
大量の鉛を含む塗料を使う。
「工場はどんな塗料も
選ぶことができる」

他のメーカーの販売部長も似たような言及をしている。いわく、役人は監視をする義務があるが実質的には何もしていない、「国家規格はあるが誰もそれを守らない」「工場はどんな塗料も選ぶことができる」。

同記事では鉛を含む塗料以外にも、例えばおもちゃの宝石について「鉛を多量に含むスクラップを元に作られているので、結果的に鉛成分が多い、問題のあるおもちゃの宝石ができる」という事例が紹介されている。さらにこれら「中国鉛問題」について、一方で「発注元がコストダウンを常に要求するので、現地の中国人事業経営者は鉛の塗料やスクラップを使用せざるを得ない」という可能性も示唆している。

要は「中国政府は規格があるから問題ない」「現地生産者は価格競争に勝つため・クライアントが要求するため安い鉛塗料を使う」「アメリカなどの輸入先はルールが守られていないと文句を言う」といった形で、自分たちにあまり責は無く他に責任がある、として押し付け合いをしている感がある状況といえる。ただ、先のマテル社のように「契約を守らず勝手に指定外の塗料を使って問題が発生した」場合は問題外というよう。

一連の問題に対し中国側では安全性を強調する一方で、報復と受け取れるような措置を次々に打ち出している。それらのすべてが正しいのかどうかの判断は別として、「安全」と「決められたルールの厳守」に関する問題が再認識され、厳しい監視の目が注がれるのは良いことである。

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