やる気がない会社ほど早く転職したくなる症候群
2007年09月05日 06:30
NTTデータ経営研究所は8月20日、インターネットリサーチのgooリサーチを使用したビジネスパーソン(働き人)の就業意識調査の結果を発表した。それによると、仕事に対するモチベーション(やる気)が低い人ほど、現在勤めている企業に働き続ける意向年数が短いことが明らかになった。また、40代で急速に低下する転職意識が50代で再び急上昇する傾向もあり、興味深い結果が出ている(【発表リリース】)。
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今調査は7月13日から18日の間、インターネット経由でおこなわれたもので、有効回答者数は1013人。男女比は男女=77.4対22.6.年齢層は30代がもっとも多く36.6%、次いで40代の35.6%など。役職では一般社員がもっとも多く62.7%、次いで管理職20.7%など。
現在勤めている会社で、この先何年働き続ける意向があるのかたずねたところ、全体では、「1年未満」が8.0%、「1~3年程度」が11.6%、「3~5年程度」が8.7%、「5~10年程度」が11.4%、「10年以上は勤めるつもり」が11.4%など、なんらかの形で転職を考えている人が合わせて半数くらいいることが分かった。一方で「定年まで勤めるつもり」は23.0%と約1/4、「よく分からない」が同じく約1/4を占めている。
現在の会社であと何年くらい働くつもり?
性別では男性よりも女性の方が一社に留まる傾向が低く、年齢層別では年齢の経過と共に短期間での離職意識が減少・現在の会社に長期に渡って勤める意志の人が増えているのがわかる。しかしその一方、50代になると急激に「定年まで勤める」割合が減り、「10年以内で辞める(定年まで勤めるつもりはない)」人が増えているのがわかる。
定年間近になったにも関わらず、定年前に現会社を辞めたい人が急増しているのは、早期退職制度の充実(≒自主的退社)や、中高年齢層のリストラ(≒企業都合退社)が増えていることの裏返しといえるだろう。
一方、モチベーション(仕事へのやる気)別に転職意欲を「現在の会社には5年未満しか勤めるつもりはない」という階層でチェックしてみると、モチベーションが低いほど転職しようという意向が強いのが分かる。モチベーション高位層と低移送では、2倍近い差が出ている。他方、「自分が会社からどのような評価を受けているか」に関しては、転職への意向にはさほど影響はないようだ。
【転職の現実は「企業は経験を求め、転職者は仕事内容と才能を活かせる場を求む」】にもあるように、現在勤めている会社から離れ、他の企業への転職を望む人「転職希望者」は、自分の才能を活かせる環境を求め、仕事内容が自分にとってプラスとなる・楽しいものであることを望んでいる。逆に考えれば現在の環境がその希望にそぐわないことであり、そのような場で長時間生活していてはモチベーションが下がるのも致し方ない。やる気と自分の才能を活かせるかどうかは密接な関係にあり、そのバランスが崩れると環境そのものから逃げ出したくなる(転職したくなる)ということになるのだろう。
ポジティブに考えれば、企業も個人も今の会社でやる気を見出すことができれば(できるような仕組みを提供できれば)、離職率も低くなるとも読み取れる。ごく当たり前のことなのだが、なかなか出来ないのが実情でもある。
一方で【「転職したい」理由・トップは「上司との人間関係」】にもあるように、「転職したい」と思うことと「転職した」理由とは微妙なずれが生じている。人間関係も自分の才能を活かせない・モチベーションの低下には大きな理由になるが、それらも結局は「転職を考える」までの域であり、実際に「転職する」というハードルを飛び越えるにはさらにもう一歩大きな理由(現実的な側面)が必要だと思われる。
ここで注目したいのが、今調査で50代以降に転職希望者が急増していること。早期退職制度を活用すれば、正規退職金にプラスして一定以上の金額を確保した上で離職することが可能となる。「転職したいがお金の面で不安があるのでそれも出来ない」という足かせを断ち切ることができるため、他の要素が考えの中で上位に立ち、結果としてより多くの人が転職を考えるようになるのだろう。
「従業員のやる気を高める(離職率を低める)には賃金アップは欠かせない」「早期離職を後押しするためにも割り増し退職金が重要」と、企業にとってはどちらにしても「地獄の沙汰も金次第」ということになるのだろうか。
(最終更新:2013/08/19)
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