新型インフルエンザ「不安」85.8%、封じ込め失敗58.6%に~情報不足がネックか

2007年09月17日 12:00

新型インフルエンザイメージgooリサーチが9月6日に発表したアンケート調査結果によると、対人新型インフルエンザが広範囲に広がる可能性について、不安に思う人が85.8%に登ることが明らかになった。また、感染確認後に日本国内で行なわれる各対処(感染拡大封じ込め処置)がうまくいかないと考えている人は58.6パーセントと過半数に達することも分かった。新型インフルエンザに対して現状に不安を抱えつつも、政府や公共機関の対策法にすべてをゆだねるには不安要素が大きいことを懸念しているようすがうかがえる(【発表リリース】)。

スポンサードリンク

今調査は7月23日から7月27日までの間にインターネット上で行なわれたもので、有効回答者数は3万4428人。男女比は49.5対49.6(不明0.9)。年齢構成比は30代37.1%を筆頭に40代25.3%、20代18.9%など。

新型インフルエンザとはH5N1型などの鳥インフルエンザが変異し、鳥から人間、そして人間から人間へ伝播する能力を獲得したものを指す。また、「パンデミック」とは鳥インフルエンザのようなウイルスなどが広範囲に広まった時、発生したばかりなのでウイルスに対する免疫を誰も有していない状態なため、大規模な流行が発生してしまう状況を指す。何度と無く当サイトでもお伝えしているように、状況次第では新型インフルエンザが日本に広まりパンデミック状態となれば、約3200万人が感染しうると想定されている(厚生労働省想定)。もちろんすでに国や医療機関などが法整備や即時ワクチンの開発・量産体制の準備、対処薬の備蓄など、各方面で「備え」を進めている。

「不安」は8割強

まず「近い将来に新型インフルエンザが流行しパンデミックが起こる可能性についてどう思うか」とたずねたところ、「非常不安」「ある程度不安」をあわせ85.8%の人が「不安である」と答えている。

近い将来に新型インフルエンザが流行しパンデミックが起こる可能性についてどう思うか
近い将来に新型インフルエンザが流行しパンデミックが起こる可能性についてどう思うか

昨年10月31日に発表した前回調査と比較すると、「ある程度不安」が減った以上に「非常に不安」の人が増え、全体的な「不安」層の増加に結びついていることが分かる。別項目で「政府や自治体からの情報伝達・説明は十分でない」という結果が出ているが、その段階ですら心配している人が多数に及んでいることが把握できる。

「水際作戦はうまくいかない」は9割強

これまでの鳥インフルエンザなどの感染状況を見ると、日本国内で広まるとすれば海外経由、例えば港や空港を介して入ってくる可能性が高い。もちろん検疫体制は強化され、水際対策が取られるが、それでも国内に感染者が入る可能性があるかどうかについてたずねたところ、実に94.8%が「可能性はある」と答えている。

海外からの感染者流入はありうるか
海外からの感染者流入はありうるか

水際対策をしていたにもかかわらず、SARS発生時には2003年5月に台湾人医師が自己申告を怠り結果として感染者の入国を許してしまった事例がある。対策そのものは必要不可欠だが、100%の防御は不可能であることもまた事実といえよう。

国内の封じ込め措置はあまり期待されていない

万一国内で感染者が確認された場合、法的措置も含めて本人や家族、その他接触者などに対して隔離や行動制限などの「封じ込め措置」が取られることになる。この措置によってパンデミックの発生を防ごうというものだが、これがうまくいくと考えている人は4割にも満たないという結果が出ている。

国内の封じ込め措置は成功するかどうか。
国内の封じ込め措置は成功するかどうか。

封じ込め措置が成功するかどうかは、その措置がどうして必要かということを事前に十分に告知し、啓蒙しておく必要がある。しかしそれが満足に行なわれていない以上、封じ込めがうまくいかないと思う人が多くても仕方ないのだろう。

実際に「うまくいく」「うまくいかない」それぞれの回答者にその理由を答えてもらったところ、次のような結果が出ている(上位三つのみ抽出)。

■封じ込めがうまくいくと思う理由
・関係する医療機関などが適切に対応するため……62.9%
・患者が発生した政府や自治体が適切に対応するため……43.6%
・患者や家族その他感染が疑われる人が積極的に協力するため……37.0%

■封じ込めがうまくかないと思う理由
・患者が発生した自治体が適切に対応できない……59.4%
・患者や家族その他感染が疑われる人が協力しない……51.1%
・政府が適切に対応できない……48.9%


封じ込めに期待する人は「現場の専門家の腕」に期待し、不安な人は政府と現場(医療機関や患者自身)の板ばさみとなる自治体の対応を疑問視していることが分かる。

鳥インフルエンザに対する封じ込め措置は、最終的には国レベルの判断が必要となる案件ではある。しかし即時対応性が求められることもあり、自治体が一時的にも現場の最高指揮権を握った場合、その場しのぎや責任回避、見て見ぬふりなど問題に立ち向かうことを避けてしまい、結局事態が拡大する前例が多いことを考えると、あながち「封じ込めがうまくいかない」という意見も間違っていないように思えてくる。

集合住宅でのゴキブリ退治が全戸一斉に行なわないと意味をなさないのと同じように、隣接する自治体同士が協力する体制を事前に構築するだけでなく、国との事前協議や「もしも」のための行動マニュアルの徹底も必要だろう。


「新型インフルエンザへの不安」を抱えている人が多数に登っているという調査結果が出たが、これは「知っているから」ゆえの新型インフルエンザそのものに対する不安というより、「断片的な情報しかないことへの不安」あるいは「情報が無いことへの不安」という、情報不足からくるところが大きいと思われる。正しい情報を適量で、そして素早く伝達することは情報戦略において必要不可欠な手立てに他ならない。

ワクチン開発体制の準備や対処薬の備蓄、法体制の整備や緊急マニュアルの策定など、実働部分の体制作りはもちろん必要。だがそれと同時に、現段階から一般市民に対する正しい情報の伝達システムの構築とその実働がなされなければ、不用意な不安をかきたてるだけに過ぎない。そして仮にパンデミックが現実のものとなれば、「情報伝達」方面への軽視姿勢は、他の対処をも台無しにしてしまう・効果を減じてしまう結果を導きかねない。

情報は目に見えないだけにどうしても後回しにされがち。しかし多くの準備や対策関連の部外者(≒一般市民)たちは、情報伝達でしか現状を把握できない。「正しい情報を伝えるとかえって噂ばかりが先行して手がつけられなくなる」といった前世紀のような思考は止めて、積極的で分かりやすく、多くの人がすぐに理解できるような情報提供を検討するべきだろう。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ