「生活に悩みや不安」過去最高の7割・「将来に不安」3割……若年層への不安が特に増加

2007年09月11日 08:00

時節イメージ内閣府が9月10日に公式サイト上へ公開した2007年版【国民生活に関する世論調査】によると、日常生活で悩みや不安を感じている人は69.5%になり、過去最高を記録したことが明らかになった。また、今後の生活が悪くなっていくと回答した人は29.1%と前回より増加、若年層における「将来に備えたい」と考える割合が23年ぶりに5割を超えるなど、世間一般、特に若年層において将来生活への不安が高まっていることが分かる。

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今調査は7月5日から22日、20歳以上の男女1万人を対象に個別面接方式で行なわれ、回収率は60.9%。男女比は2847対3239で、やや女性の方が多い。

「悩みや不安を感じている」69.5%

日常生活の中で悩みや不安を感じているかとたずねたところ、「感じている」と答えた人が69.5%、「感じていない」は29.6%に過ぎなかった。全体的な数字として前回調査と比べると不安度が増していることがわかる。

日常生活での悩みや不安
日常生活での悩みや不安

「不安を感じている」人の割合は1990年代半ばから徐々に増加を続け、このままの増加率でいくと来年あたりには7割に達することになる。

また、性別に差はないものの、定年退職を迎える60代にいたるまでの間、少しずつ不安度が上昇していくのがわかる。職場に長年勤務し、地位も収入も上昇しているはずではあるが、現状において「いつ肩を叩かれるか分からない、会社そのものがどうなるか分からない」という不安も同時に蓄積されていくのだろうか。さらに、自身の健康問題もあると思われる。

一方で、60代を境目に不安度が減少しているのは、退職して少なくとも仕事面での心配事がなくなったからだろう。

具体的な悩みの内容については次の順位で、この並びは前回調査と大きな違いはないという。

1.老後の生活設計について
2.自分の健康について
3.家族の健康について
4.今後の収入や資産の見通しについて
5.現在の収入や資産の見通しについて


健康の部門では個々の問題によるところが大きく仕方ないところではあるが、1・4・5においては収入の問題が大きく関わっている。内需軽視・外需偏重の経済・企業政策が個々の国民の財布事情を改善させず、結果としてそれぞれ個人の不安に拍車をかけていることが想像できる。

ありかきりぎりすか、全体的にはきりぎりす派、若年層はあり派が増加

先に【全体ではキリギリス増加、若者は過半数が「アリ」派……生活への不安が若者層に広まる】で速報の形でお伝えした、今後の生活において「貯蓄や投資など将来に備えることに力を入れたい」か「毎日の生活を充実させて楽しむことに力を入れたい」かという、いわば「ありときりぎりす」の選択を求めたところ、全体ではきりぎりす派こと「毎日の生活を充実させて楽しむ」が60.5%(過去最高)、あり派こと「貯蓄・投資など将来に備える」が30.2%となった。

「貯蓄や投資など将来に備えることに力を入れたい」か「毎日の生活を充実させて楽しむことに力を入れたい」か(一部抜粋)
「貯蓄や投資など将来に備えることに力を入れたい」か「毎日の生活を充実させて楽しむことに力を入れたい」か(一部抜粋)

両派は1986年に逆転現象を見せたあと、常にきりぎりす派が増加している。しかし今世紀に入ってからあり派の減少に歯止めがかかり、ここ数年はむしろ増加傾向にあるのが気になるところではある。

一方、男女別・年齢層別で見ると、40代までとそれ以上の年齢層で大きな違いを見せているのが分かる。

性別・年齢層別「貯蓄や投資など将来に備えることに力を入れたい」か「毎日の生活を充実させて楽しむことに力を入れたい」か
性別・年齢層別「貯蓄や投資など将来に備えることに力を入れたい」か「毎日の生活を充実させて楽しむことに力を入れたい」か

先の新聞記事を元にした速報とは多少違う結果となったが、40代を境目にそれより若い若年層ではあり派が半数を占めている一方、50代になると急速にその割合が減り、70代以上になると1割を切っていることが分かる。

平均寿命から逆算してあと何年生きられるか(平均余命)を考えると、高齢層にきりぎりす派こと「毎日の生活を充実させて楽しむことに力を入れたい」が多いのは、先行きがそれほど長くないのに将来のことを考えてどうするのか、という思いもあるのだろう。また、「セカンドライフ」という言葉にもあるように、定年退職後においては生まれ変わった気持ちで、しかも年金や退職金などで暮らすパターンも多いから仕事や金銭面での悩みもあまりなく、日々の生活を充実させたいといった意向も強いものと思われる。

一方、若年層にあり派が増加しているのは先の先行記事でも説明したように、年金問題や経済的な不安定さが影響しているものと思われる。


上記図表上に赤い線を引いたのは、「貯蓄や投資など将来に備えることに力を入れたい」が半数を占める年齢層と、そうでない層との区切り。この層は奇しくも、数年前において一部で流行った「年金の払い得・払い損の境界線」、つまり年金保険料の支払総額と年金の受け取り総額を差し引きして、「その時において」損になるか得になるかという金額的な算出における「損得ライン」とほぼ一致する。

その当時ですら年齢構成比・人口ピラミッドの変化・高齢化社会などで支払側の負担が増えることが懸念されていたのに、いざフタをあけてみたら管理運営をする社会保険庁(自治労)の仕事の怠慢さや保険料の詐取などが山ほど発覚し、現状はそれどころではないことが明らかになりつつある。

「不安」要素をすべてが年金を起因とする、というわけではないが、年金問題の実態が徐々に判明しつつあることが、将来の不安を駆り立てる要素であることに違いはなかろう。

それと共に、先の記事でも指摘したが一部高齢者層の「勝ち逃げ」的な面も、翻って自分たちの生活への不安を助長する要素になっているものと思われる。


(最終更新:2013/08/19)

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