地銀のサブプライム損失は54億円どまり・日経調査結果

2007年09月04日 12:30

【日経新聞】が9月4日に伝えたところによると、日本全国にある109の地方銀行やそのグループのうち、アメリカの信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)関係の損失額は約54億円に留まることが明らかになった。「現時点では」業績に与える影響は軽微に留まるとしている。

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サブプライムローンのこれまでと現状

アメリカドルイメージ「サブプライムローン(Subprime Loan)」とはアメリカ国内で貸し付けられた住宅ローンの中でも、非優良顧客(Prime層でない、つまりSubPrimeな層)向けのものを指す。要は十分な信用力・担保力を持たない借主にも住宅ローンを提供する代わりに、貸付利率を通常のローンより高くするというもの。さらにアメリカに限らず住宅ローンでは、将来の借り手の稼ぎ頭の出世や賃金上昇を見込んで、一定期間は返済額が低く抑えられるものの、その期間以降は(収入増に比例するように)返済額が増える仕組みも取り入れられている。

ところが元々信用力・担保力を十分に持たない低所得層に対する貸付なので、返却計画に無理が生じる。借り入れをして住宅を手に入れ、サブプライムローンで支払を続ける中、一定期間後に利率が上がり返済額が急増(通常の場合、2年までは低利率、そのあと利率が急上昇する仕組みになっている)。支払が出来ずに低所得層が住宅そのものを、ローンの担保代わりに奪われてしまうという事態が相次いでいる。

住宅のニーズが大きく住宅価格が値上がりを続ければ、担保となる自分の住宅の価値も上がるので、ローンとの差額を頼りにさらに借り入れすることも出来たのだが、住宅価格はいつまでも上がるわけではなく、当然価格上昇率は鈍化。新たに担保を設定できず、支払を延滞したり住宅が抵当に入れられる世帯が増加している。さらに貸し出し側は「住宅のニーズが下がり価格も下がっているので、ローンの担保として手に入れた住宅も抵当分を回収するまでにはいたらず、財政状態の悪化を招く」事態に陥っている。

このサブプライムローンがアメリカだけでなく、世界中の金融市場に大きな影響を与えているわけだが(ローンそのものを証券化して借り入れるなど、分散化・膨張化させているため)、8月の東京市場の急落をもたらした原因もこれであるとされている。すなわち、サブプライムローン問題で現金を必要としたファンドが、損失もかまわず手持ち証券を売ったらしい。事実、この前後で外国人投資の売買状況は大きく売り超しとなっている。

サブプライムローンについては先日8月31日、アメリカのブッシュ大統領自らが借り手救済策を発表。これを好感し市場は大きく持ち直したものの、専門家の間には内容的に乏しく遅きに逸したもの、応急措置に過ぎず問題は再発するとの意見もある。

日本国内の金融各社においても、心境的な面もあわせて今問題が重要視されると共に株価に影響が生じており、概して軟調に推移しているのが現状だ。

地銀は現状では損失額54億円。では……

グラフイメージ日経新聞によれば、8月下旬に独自に行なった調査によると、5行に1行の割合にあたる23行が、サブプライムローン関係に投融資している。対象はサブプライムローンを組み入れた債務担保証券(ローンや社債などの債務証書を裏付け資産として束ねた金融商品)が中心で、残高は合わせて520億円ほど。損失額は54億円程度。1行の最大損失額は約15億円とのこと。商品の大半が格付けAAA(最高ランク)だったこともあり、売却損・含み損は限定的だという。

しかしこれはあくまでも現状において、ということ。これからアメリカでのサブプライムローン関連の損失が明らかになれば、それに伴い日本でも連鎖的に「新たな」損失が生じる可能性は高い。「格付けAAAだから大丈夫」という表記も元記事にあるが、その格付け会社の格付けがあまりにも甘かったのが今回のサブプライムローン問題を引き起こした原因であるともいわれており、全面的に信用する、というのもリスクがある(実際格付け会社大手のS&P社長が8月31日付けで辞任している。事実上今件における引責辞任と見られている)。

加えて今回報じられたのは地銀のみであり、都市銀行はまた別問題。都市銀行のサブライムローンによる損失は、地方銀行とはまた別のレベルであり、どの程度の額になるのかは現状で不明。「アメリカ次第でまだ増える可能性もある」という点でも地方銀行と変わりはない。


発信源が日本で無いだけに「他人事」のように見受けられなくもない。また、大げさに騒ぎすぎているという感もある。しかし金融そのものが今やワールドワイドに展開するビジネスであることや、「他人事」であるだけにアメリカの状況次第でどうにでも動くこと、そのアメリカのサブプライムローン問題は2008年まで続きうる(問題視されるようになる前の2006年契約分で、利率が急上昇するのは2年後の2008年)ことを考えると、大手を振って「地銀で損失はこれだけしかないから、もう安心」と一息つくのは難しい。

多くの「退場者」を出したとも言われている先の8月中旬の急落のような事態が再び起きても(財務的・精神的に)十分対処が出来るよう、備えておいても悪くはないかもしれない。取り越し苦労ならそれはそれで市場が順調に展開したのだから結果オーライであるし、もし現実のものとなっても「何これ安い」とむしろ機会到来と思えることだろう。

……そういえば2008年は北京オリンピックもあるわけだ……。

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