私生活を充実させてやる気を高める制度は必要。でも企業側は「負担重」として及び腰

2007年08月29日 06:30

時節イメージ【厚生労働省】が8月3日に発表した2007年度版「労働経済白書」(労働経済の分析)によると、従業員に対する「仕事と私生活の調和を図るためのさまざまな決まりごと(制度)の整備」についての考え方が、雇用側と被雇用側、つまり従業員と企業では食い違いが生じていることが明らかになった(【白書完全版】)。

スポンサードリンク

今件は第2章「人材マネジメントの動向と勤労者生活」内の第3節「働き方の変化と勤労者生活」の部分に該当する話となるが、「仕事と私生活の調和を図るためのさまざまな決まりごとの整備」とは、つまり「仕事にかかりきりになって私生活をないがしろにすると、結局仕事の効率も落ちてしまう。仕事と私生活双方を充実させるため、制度で企業がバックアップする」というもの。従業員の仕事への負荷があまりにも高まると、私生活で息抜きをすることもままならず、オーバーフロー状態となってしまったり、うつ状態に陥る可能性もある。

具体的な決まりごと(制度)の整備としては、例えば「自己啓発のための休暇制度」「育児経費の補助」「ボランティア休暇制度」「子どもの送迎などのための早退・遅刻の許可」「育児・介護をする従業員への残業・休日労働の減免措置」「法定以上の育児休業制度」「フレックスタイム」などが挙げられる。

それではこれらの「仕事と生活の調和を図るための制度整備」について、従業員と企業はどのように考えているのか。その調査結果が次の表である。

「仕事と生活の調和を図るための制度整備」の効果をどう考えているか。従業員と企業それぞれに対する調査結果
「仕事と生活の調和を図るための制度整備」の効果をどう考えているか。従業員と企業それぞれに対する調査結果
■従業員側
「私生活の充実こそが
 仕事の充実につながる」
■企業側
「従業員の私生活の充実の
 必要性は理解できる」
「しかし企業側の負担が大きい。
 ちゅうちょしてしまう」

これをみれば分かるように、「仕事一辺倒ではなく従業員の私生活を守る制度を作らないと、結局企業も発展していけない」という考えに対しては企業も従業員も同程度の肯定派がいることが分かる。むしろ「人材確保」や「企業の社会的責任」の観点では企業の方が肯定派が多い。

しかしながらその重要度、傾注度の大きさで比較すると、従業員のそれに比べて企業側はその半分程度でしかないことも同時に見えてくる。要は「従業員側は自分自身に直接関わってくるから大切に考えている」一方で、企業側としては「大切なのは分かっているが、優先順位は低い」という認識なのだろう。

それを裏付けるのが、次の表。「仕事と生活の調和を図るための制度整備」について、「企業にとっての負担が大きいかどうか」という項目を含めた、企業への意見調査結果。

「仕事と生活の調和を図るための制度整備」への企業調査
「仕事と生活の調和を図るための制度整備」への企業調査

実に65.3%の企業が「仕事と生活の調和を図るための制度整備」は企業にとっての負担が大きいと考えていることが分かる。結局のところ企業側が制度整備をちょうちょしているのは、財政面やマンパワーの確保の面において企業側の負担が大きいからと推測される。


白書では「人口が減少する以上、一人一人の意欲や能力の発揮によって労働生産性・就業率の向上が不可欠」「特に女性においては育児期のサポートが必要」「少子化の根本対策にも私生活の充実と働きすぎの是正を推し進める必要がある」と語り、企業への一層の努力と「若者が結婚し、家庭を持つことができるよう、仕事も生活もともに充実する、バランスのとれた働き方を実現していくことが求められる」と述べている。要は「頭数が減るのだから一人頭の生産性を上げねば。そのためには従業員のやる気を奮い立たせろ」「少子化に歯止めをかけるためには私生活を充実させねば」ということになる。

他の白書に関する分析でも語られているが、企業の従業員への配分(直接的な金銭上の配分に留まらず、今回のような制度整備なども含めて)をもう少し増やすだけで、従業員のモチベーションは高まり、企業へのロイヤリティ(忠誠心)は向上する。外資系企業のように自分のスキルをフル活用して企業から企業へ渡り歩くことが真のビジネスマンだとする考えもあるが、そのような器用な働き方が出来る人はほんの一握りにしかすぎないことも事実。

むしろ一昔前の日本スタイル的な雇用制度(年功序列制はともかく、終身雇用制となど)と充実した私生活への環境整備という「新旧併せ持ち良い所取り」が、中長期的に見れば企業・従業員共にプラスに作用するのではないだろうか。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ