投信の問題点、手数料の高さや売り手との意思疎通不足
2007年08月23日 19:30
日本経済新聞は8月22日、投資信託に関する調査結果を発表した。それによると投資利用者の約4分の1にあたる人が、「手数料が高い」「購入後の情報提供が少ない」などの不満を持っていることが明らかになった。また購入者と販売側の意見にはかなりの不一致・食い違いがあり、両サイドの意思疎通が何よりも必要と思われる(【関連記事:NIKKEI NeT】)。
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今調査はネット調査会社マイボイスコム経由で7月下旬に20歳以上の投資家に対して行なわれたもので、投資信託の購入経験者1052人が購入した2085本の投信それぞれに対して答えた結果と、金融機関への注文者1051人に対する結果をまとめたもの。
・中間マージンが高い
・提供情報が少ない
それによると投信の販売機関に対する不満では「販売手数料の高い投信が多い」がずば抜けて多く4割近くを占め、次いで2割強が「購入後の情報提供が少ない」、「リスクの説明が不十分」「投信報酬の高い投信が多い」と続いている。「販売手数料の高い投信が多い」と「投信報酬の高い投信が多い」、「購入後の情報提供が少ない」と「リスクの説明が不十分」は買い手からすればそれぞれ「中抜き・手数料が高い」「情報が少ない」とまとめられるため、購入者の不満は「中間マージンが高い」「提供情報が少ない」の2点に絞ることができる。
販売会社別の不満度で見ると、大手銀行は27.2%、大手証券は26.8%とどちらとも3割近くを示しているのに対し、ネット証券では12.4%、直販型投信会社では4.1%に留まっている。前者2社の不満点はやはり「中間マージンが高い」「提供情報が少ない」が圧倒的に多い。最近ノーロードタイプ(販売手数料が無料で、信託報酬も安め)の投信が人気を集めているのも、「中間マージンが高い」と思われている実情ゆえのものだろう。
もちろん投信報酬や販売手数料は、手間賃や報酬以外に、投信そのものやそれに関連する相談・説明を受けるための手数料も含まれている。つまり購入(を検討した)投信を中心に、さまざまな財産相談を受けるための手数料であるはずなのだが、買い手も販売側もその意識は薄いようだ。
実際、調査結果の中には買い手と販売機関の意思疎通上の齟齬(そご)を如実にあらわすような資料も記載されている。「顧客の主な不満点とそれに対する販売(金融)機関の回答」という表なのだが、
顧客「販売手数料が高い。利益が出にくい」
→機関「充実した運用相談にはコストがかかる」
顧客「リスクの説明が不十分」
→機関「説明しすぎるくらいにしているつもり」
顧客「新投信の販売時期や預金満期時に勧誘がしつこい」
→機関「無理な勧誘はしていない」「情報提供への熱意がそう受け止められているのかも」
と話がかかみ合っていないどころの話ではない様相さえ呈している。
投信はいわば「株式などの金融商品のバスケット買いを専門家にお任せする」金融商品。バスケットの中身の選択や売買(と利益確保のタイミング)を任せたりその投信関係の相談を引き受けてもらうなど、販売機関側の負担も大きい。
その観点からすれば手数料の存在は仕方ないのだが、顧客・買い手からすれば「手数料云々などどうでも良い。儲けられなければ意味が無い」ということでしかない。手数料がいくらかかっても、それ以上の利益を買い手に還元できればみんなハッピーなはずなのである。にも関わらず手数料・中間マージンの点で不満が大きいということは、マージンの設定方法か運用益か、あるいは買い手に購入を勧めた際の「期待リターン率」のいずれかに問題があったことになる。
買い手がほしい情報と
売り手が伝えたい情報に
大きなズレが生じている。
&
売り手の説明が難しすぎて
買い手が理解しにくい可能性も。
それよりも問題なのは「情報不足」の点。「リスク面での説明が不足」しているのに「勧誘がしつこい」という不満も買い手からあがっているということは、「買い手と売り手の間の情報の需要供給間の食い違いが生じている」ことに他ならない。買い手はもっと危険性や可能性について教えてほしいのに、売り手(販売機関)は新規販売や乗換えによる手数料発生を望むところから、つい勧誘的な情報提供に力を入れてしまう。これが不満が増加している一因だろう。
例えるなら、今日の夕飯のふろふき大根用に大根1本がほしい主婦が、目の前の大根の価格やどこが産地か、美味しい料理法を聞いているのに、売り手の八百屋がねぎやしらたき、みそやしょう油をセットで販売しようとしたり、ダース単位で大根を売ろうとしているような感じだ。中には親切心に「ふろふき大根で余った大根葉の部分をふりかけにして美味しくいただく方法」や「一工夫するだけでふろふき大根が抜群に美味しくなる方法」を教えてくれる八百屋もいるだろうが、不満に思っている買い手のほとんどは、売り手の対応にネガティブな感想を持っていることになる(販売機関への不満点の第5位に「販売員の知識が不十分」、第6位に「販売員の勧誘がしつこい」が入っているのも気になる)。
今回の調査は7月下旬実施のため、例の「サブプライムローンに端を発する急速な円高と株価の急落」によって評価額を落とした投信の買い手が、今回調査時以上に不満を持つ可能性は高い。一方で9月から施行される金融商品取引法によって、当然のことながら投資信託の販売においても消費者保護の観点からさらなる規制が行なわれるようになる。今後は今まで以上にリスク面など「買い手が納得の行く」説明が売り手には求められることだろう。
そしてそれと同時に「買い手にも分かりやすい」説明、すなわち業者間の専門知識で塗り固められたマニュアル式の説明だけではなく、買い手が心底納得して理解できましたと回答できるような、優しく分かりやすい説明が求めれるに違いない。
……個人的には「現物株式で購入できない国への投資を求めるならともかく、日本国内やアメリカへの投資をするのなら、少々面倒でも現物株式を購入するかRETI(不動産投資信託)を選んだ方がよっぽど気苦労がなくて良いよ」というアドバイスを差し上げたいのだが。
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