「都市圏はネット」「地方圏は直接応対」環境で異なる金融商品情報取得元

2007年08月08日 19:35

株式イメージ『楽天リサーチ』が7月27日に発表した夏のボーナスと資産運用に関するインターネット調査の結果発表によると、都市圏在住の人と地方圏在住の人の間には、金融商品に関する情報の収集元に異なる傾向が見受けられることが明らかになった。都市圏は主にネットを駆使し、地方圏では地元密着の専門家(ファイナンシャルプランナー(FP)など)にたずねる場合が多いという。

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今アンケートは夏のボーナス時期直前である6月11日から12日、20代から60代の1000人を対象に行なわれたもの。夏季ボーナスそのものはすでに時期遅れのものとなっているので関連する事項の紹介は省略する。

金融商品には「預貯金」や「株式」「投資信託」などがある。主にこの3商品について、選択する際に参考とする情報源をそれぞれたずねてみた。

預貯金の場合……都市圏はウェブサイト、地方圏ではチラシやパンフ

「預貯金選択時の情報源」として回答した(3つまで複数回答可)結果は以下の通り。

預貯金選択時の情報源
預貯金選択時の情報源

ウェブサイトや口コミ、新聞広告など気軽に入手できる情報源を参考にしていることが分かる。

また、「定期預金」の場合には上記グラフの「一般預貯金」よりも情報収集率が高く、「金融機関のホームページ」は38.5%、「金融機関店頭のチラシ・パンフレット」が22.4%、「親族・親友・知人の口コミ」が16.1%となっている。

定期預金選択時の情報源
定期預金選択時の情報源

定期預金は一般の預貯金よりも銀行ごとの利子率の違いが大きく出るため、利用者側も必至に情報を集めねば、と考えているのだろう。

ネットで高利回りの
金融機関を見つけても
身近に無ければ
意味がない

さらに居住地域別では「都市圏……金融機関のホームページ(46.9%)」「地方圏……金融機関店頭のチラシ・パンフレット(33.3%)」がそれぞれトップになっているという。地方利用者は都市圏の利用者よりも利用できる金融機関が少ない場合が多い。ウェブサイトで比較して情報を収集しても、その金融機関が手身近になければ利用も難しい。あくまでも「利用可能な金融機関」の中から最良の条件を持つものを見つけ出すため、チラシやパンフレットを収集しているのだろう。

例えば自分の居住地域と到達可能距離を入力すれば、その条件にマッチした金融機関をリストアップし、それぞれの預貯金・定期預金の利子率や条件を比較できるような「比較サイト」があれば、わざわざチラシやパンフレットを集めなくとも済むのだが……そのようなサービスは残念ながらまだ無いようだ。また、地方利用者の中には比較サイトなどインターネットをうまく使いこなせない(あるいは環境が整備されていない)可能性も高く、「自分の足を使う」選択肢を選ばざるを得ないという状況も想定できる。

株式の場合……関連情報サイトが最多、地域圏はFPも活躍

投資金融商品の中でもっともメジャーな株式の場合、選択する際の情報源は「マネー関係の情報サイト」がもっとも多く51.7%を占めている。

国内株式選択時の情報源(3つまで)
国内株式選択時の情報源(3つまで)

「マネー関係の情報サイト」という表現があまりにも大雑把過ぎ、これでは「ヤフーファイナンス」のような各種情報を統括するポータルサイトのファイナンス部門サイトから、個人ベースのブログまですべて含まれてしまうので、「金融機関のサイト以外の、インターネット全体から情報を集めている」というくらいにしか表現は出来ない。それでも株式投資においてはネット上で積極的に情報を収集していることが推定できる。

また、地方圏においては「金融機関の担当者・FP」(16.7%)、「金融機関以外のFP」(16.7%)など、都市圏よりも積極的にFPと直接対話をして情報収集をしていることが分かる。FPという職業が地域密着型のワークスタイルであることの証しなのだろうか。元々FPは総合的な「お金の相談役」なので、保険やライフプラン構築の際に一緒に質問しているのかもしれない。

投資信託の場合……金融機関、直接対話による情報収集が多い

株式よりもリスクが低いといわれている投資信託(投信)についてはどうだろうか。投信の場合には株式と比べると金融機関への依存度が高いことが明らかになっている。

投資信託選択時の情報源(3つまで回答可)
投資信託選択時の情報源(3つまで回答可)

投信の調査結果は特に母体数が少なく、世情とのぶれが心配されるが、それでもあえてチェックしてみると、「マネー関係の情報サイト」が相変わらずトップについているものの、「金融機関のホームページ」「金融機関の担当者・FP」がそれに次いでおり、国内株式と比較して金融機関への傾注度が高いのが分かる。

またグラフ化はされていないが、高所得者層では「金融機関の担当者・FP」が回答の過半数を占めているという。現物株式と比べると長期間・高額・安定性を求める場合が多い投信においては、プロの話を聞きたい、販売元に色々な選択肢を説明してほしい、その上でじっくりと選びたいという傾向が強いのだろう。

一方都市圏・地域圏の違いでは、地方圏の場合は都市圏よりも「金融機関の担当者・FP」の回答が21.4ポイントも高く、その分「金融機関のホームページ」が24.0ポイント低い結果が出ているという。株式同様に、地域では直接プロの話を聞いてみようというコミュニケーション重視の傾向が見て取れる。


元データにあるように、実際に窓口で各金融商品を申し込む場合においても、都市圏が(選択肢が多いので)利便性や利率を重視して決める傾向がある(好条件ならオンラインサービスを用いる)のに対し、地方圏では店頭における申し込みが多い結果が出ている。

金融商品の情報収集にしても実際の申し込みにしても、インターネットが非常に役立つツールとして認知されていることは間違いない。しかし地域性など利用者側の事情により、そのメリットが十分活かせず、従来形式の窓口業務やチラシ・パンフレットに頼る傾向も(特に地域圏には)見られることが今回の調査結果からは推測できる。

ネットでなら短時間で多数の情報が収集できる……はずなのだが、その使い方を熟知していないとかえってとまどうこともある。そして情報を収集できてもそれが活かせる環境に自分が置かれていなければ、その情報もムダになってしまう。例えば「A銀行でキャンペーン実施中。今なら利率+0.5%アップ」という情報をネットで入手しても、その支店が自分の近所になければ、その情報はムダになってしまうからだ。

そしてそのネット上においても「Q&Aサイト」が活況を呈していることを考えれば、「出来ることなら地元の専門家に直接相談して、自分の環境に合った答えを引き出せれば」と多くの人が思うのも道理がいく。

さまざまな環境が整っている都市圏においては、今後ますますインターネットによる情報の提供や活用が進展するだろう。しかしその一方、地方圏では(物理的に限られた環境という前提から)ネットを駆使しつつも金融機関関係者やお金のプロたるFPとの直接対話という、コミュニケーション型のやりとりが重視されるスタイルが浸透するのかもしれない。


(最終更新:2013/09/02)

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