パート・アルバイトなど増加する非正社員に、正社員並みの仕事をさせる傾向強まる

2007年08月08日 08:00

時節イメージ【厚生労働省】が8月3日に発表した2007年度版「労働経済白書」(労働経済の分析)によると、パートやアルバイト、契約社員や派遣社員など「非正規雇用者(非正社員)」の割合は年々増加し、さらにその中でも毎週35時間以上という正社員に近い就業環境に置かれている者が増えていることが分かった。各種保証で経費のかかる正社員を切り詰め、足りない労働力を非正社員で穴埋めしようとしている企業の姿勢がうかがえる(【白書完全版】)。

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「労働経済白書」によると、雇用形態別の従業員数で見た場合、正規の従業員数の割合は年々減少している。2000年には74.0%だった正規従業員は2007年第1四半期においては66.3%と10%近く減少。その分、非正規の従業員(パート、アルバイトの他に契約社員、嘱託、派遣社員)が26.0%から33.7%に増加しているのが分かる。中でも契約社員の伸びが著しく、3倍以上に増えていることがわかる。

雇用形態別従業員数の変遷
雇用形態別従業員数の変遷

一方、「正社員」「派遣・契約・嘱託(非正社員)」「パート・アルバイト(非正社員)」と3つに項目分けし、非正社員については週当たりの労働時間を35時間未満と35時間以上に区分し、それぞれの項目について雇用数がどのような変化を見せているかという「就業時間別・雇用形態別内訳」を見てみると、いくつかの「実情」がうかがいしれる。

「就業時間別・雇用形態別内訳」
「就業時間別・雇用形態別内訳」

表図では2003年以降のデータしかないが、それだけを見ても、2005年までは年々正社員が減少していったことが分かる。2006年になるとようやく企業の業績回復や現場での突き上げなどもあり、正社員の増加に転じている(赤丸部分)。

一方、正社員が増加する2006年に入るまでは毎年「派遣・契約・嘱託(非正社員)」「パート・アルバイト(非正社員)」が増加していることが分かる。しかし2006年に入ると週の労働時間が35時間未満の非正社員は減少しているものの、35時間以上、つまり正社員とほぼ同じ労働条件を求められ(かつ経費は正社員より安くて済む)ている非正社員は増加していることが分かる。特に派遣や契約社員の増加は著しい。

これらのデータから、「正社員を減らして経費的な負担を減らし、足りないマンパワーは非正社員で補う」「2006年以降は正社員を増やす傾向にあるが、同時に非正社員に対して正社員に近い仕事をさせる傾向も顕著なものになりつつある」ということが分かる。

中には非正社員時代の働きぶりを見て、正社員としてスカウトするパターンもあるが、大抵の場合はアルバイト期間や契約期間が過ぎれば雇用関係は解除される(そもそも一定期間以上非正社員として雇っていると、正社員として雇わねばならないという法的な取り決めがある)。つまりいくら正社員と同じような仕事をさせて経験を積ませ、「人材」として育成できたとしても、その成果は企業に反映されることがない。また非正社員側の立場としても、自分の経験を活かし続けることができず、「数年の経験と知恵がすべてムダ(リセット)になる」可能性も高い。当然モチベーションも上がらない。

容易な経費削減や雇用の手間を惜しんで、正社員の穴埋めを非正社員にまかせても、中長期的には雇用側・非雇用側双方で不幸を招くだけ。「労働経済白書」内で提示している数々の問題の原因の一端が、ここにも現れていると見てよいだろう。

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