億万長者が『幸せじゃないかも』と感じるシリコンバレー事情

2007年08月07日 06:30

老人とお金イメージ【NewYorkTimes】に少々興味を引く記事が掲載されていた。特にIT系のビジネスで成功し多くのお金を手に入れた億万長者が多く住むアメリカのカリフォルニア州シリコンバレーにおいて、多くの「億万長者」が自分自身を「幸せではないのかも」と感じているそうだ。そこにはシリコンバレーならではの複雑な事情があるのだという。

スポンサードリンク

自らを「オタク(Geek)」と称するSteger氏(51)は200万ドル(2億4000万円)以上の貯金を持っている。太平洋を見下ろす住宅は130万ドル(1億6000万円)。純資産額350万ドルはアメリカ全体からすれば上位2%の富裕層に相当する。

しかし彼は新興企業のマーケティング管理者として朝7時から地道に働き、週末の残業時間も10時間に達するという。「なんであなたのような金持ちがそんに一生懸命働くのか」という問われることもあるが、「1970年代にイメージされているような、執事を雇ったり大きな家に住んでいるようなお金持ちのイメージはもう過去のもの。一生懸命働かないと『億万長者』を維持することはできない」とコメントしている。

Steger氏同様に多くのシリコンバレーに住む、デジタルエリートたる「億万長者」は、人生において大いに豊かであるといえる。自分の好きな仕事をしつつ、十分以上ともいえる給料を手にしているからだ。しかし彼らの多くは幸せを感じていない。なぜなら世間一般に言われているような「真の億万長者」が自分達のいるポジションより上に存在するからである。いわば「隣の芝は青い」。

例えば、年間何千万ドルの報酬を得る上級役員、年間10億ドルもの資金を集めるファンドマネージャー。そういう「真の億万長者」の話を見ると、Steger氏ら「億万長者」は自分達の存在をちっぽけなものだと感じてしまう。

「上を見ればきりがないが、ついつい見てしまう」シリコンバレーの状況は、ウォール街に似ていると称する人もいる。別の例として挙げられたKremen氏(43)は純資産1000万ドルの保有者であり、アメリカにおける上位1%の富裕層であるものの、毎週60~80時間は働く。「ここでは1000万ドルなんて大した額ではない」と彼は述べているという。

シリコンバレーの住居費イメージシリコンバレーの給与は同一職種であってもアメリカ平均より押しなべて高い。シリコンバレーにおける事業の質の高さも影響しているのだろう。また、同地域の納税額もカリフォルニア州全体と比べると高額層が多いのが分かる。

しかしその一方、生活費も高めにつく。高額所得者が集まっていることもあり、安全の確保にも十分以上の配慮がなされねばならないし、色々な気づかい(と業者側の相場観の違い)もあり、すべての生活コストが高くなる。

そして「自分より上の存在が身近にあるプレッシャー」が常にのしかかる。自分は世間全体からみれば上位階層の数%の部分にいる、十分な億万長者であるはずなのに、精神は少しも休まらない。「幸せなはずなのに幸せじゃないかもと感じてしまう」人が多いのだという。

まさに「人生色々、億万長者も色々」といった感じではある。お金は重要だし、出来ることならいくらでも手に入れたいのは万人の願いといえよう。ただしそれを「自分の幸せや目的を手に入れるための手段だから、その手段が少しでも多く手に入り、容易に実現できるからお金持ちになりたい」のではなく、「お金を手に入れること」自体を目的と受け止めてしまった場合、いくらでも上がいることに気が付いてしまう。そうなるといつまでたっても心は満たされることなく、渇望感をいだいてしまう、ということなのだろうか。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ