経済誌以外はほぼ軟調、5年間で4割減・主要雑誌の売行きデータ

2007年08月04日 12:00

書籍イメージ会員制情報冊子【FACTA】の8月号付け公開ページにおいて、気になるタイトルが目に留まった。いわく【主要50雑誌の「部数激減(秘)データ」】というもので、販売数が漸減していると言われ始めてから久しい雑誌群がどこまでその販売数を減らしているのか、それが分かる内容だった。

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日本ABC協会とは

元記事では小学館が講談社を売り上げの店で追い抜き、ついにトップに立ったことや、その勝利を喜べるような状況ではなく「出版業界は現在『総負け』の氷河期にある」として、各種データを掲載している。そして圧巻なのが、【日本ABC協会】調査による2001・2006年7月~12月期の販売部数(一発刊あたりの部数。総計ではない)。

日本ABC協会による販売部数は、各雑誌社が発表している「公称(自称)販売部数」ではなく、第三者共同機関による正確で裏づけのある部数。見栄を張るため、あるいは広告受注のためにそれぞれの編集部や出版社が自称している部数とは大きな開きが生じているのが特徴の一つ。

データの特異性から一般公開はしておらず、会員以外は関連部局に直接足を運んで取材・資料などの形で請求するしかデータを手に入れるすべは無い(何故知っているかというと当方=不破も過去に「取材調査」の形で資料を請求した経験があるからだ)。ただ、来年2月にはデータのデジタル化を行なう予定があり、これに合わせて一般的な公開も行なわれる可能性はある。

なぜ「真実を不特定多数に知らしめることが存在価値の一つであるメディアが、自らの部数については秘匿したがるのか」不思議なところもあるが「当協会は会員制のため、原則として会員以外の方への部数データの提供はしておりません」という説明書きも目に留まる。

主要雑誌は5年間で4割減が多い、中には8割減も

さて参照ページではFACTA側がまとめた、2001年と2006年の7月~12月それぞれの主要50誌部数、そして増減比率が表組化されている。そして減少の度合で緑色が配されているのだが、ほとんどの雑誌が大きく部数を減じており、表全体が緑がかっているのが分かる。

超有名どころの雑誌についていくつか抽出してみると、

週刊朝日……305,984/202,845(66.3%)
週刊現代……618,161/415,859(67.3%)
週刊プレイボーイ……418,087/251,215(60.1%)

※順に雑誌名、2001年部数/2006年部数(5年間の増減)


といった具合。5年比で20%台に落ち込んだ雑誌もあるが、大体は80~50%内、多くが60%から50%前後の落ち込みというデータが出ている。

一方当サイトの主要読者が気にすると思われる経済誌についてピックアップしてみると、

週刊東洋経済……80,368/78,501(97.7%)
週刊ダイヤモンド……120,938/112,088(92.7%)
日経ビジネス……344,858/333,039(96.6%)
プレジデント……171,042/197,249(115.3%)
オール投資……28,432/35,524(124.9%)

※順に雑誌名、2001年部数/2006年部数(5年間の増減)


意外に健闘しているのが分かる。

総合誌が軒並み激減、カタログ・広告誌が広告収入で底支え?

総合週刊誌は急落
経済誌は健闘中

出版業界紙の【「新文化」のサイト】を見ても、「2007年上半期の販売実績、前年同期比3.3%減と低迷」「6月期は対前年比2.3%減と2カ月連続マイナス」などデータ上ではあまり景気のよくない話が相次いでいる。中でも雑誌市場は1998年以降縮小が続いているとのこと。特にデータ中からも分かるように、知名度の高い・歴史を持つ総合週刊誌(駅のキオスクやコンビニの雑誌コーナーでよく見かける類のもの)が軒並み部数を落としているのが分かる。

参照記事でも言及しているが、「つまみ食い的な総合冊子は既存誌・新刊共に振るわない」「広告雑誌・カタログ雑誌的なものは広告収入の増加もあり営業成績は良い」という傾向がある。また、特に経済誌が健闘していることからも分かるように、「直接金銭と結びつく専門情報誌」は底堅いことが推測できる(パチンコやパチスロ、競馬競輪のようなギャンブル系雑誌がいまだにあれだけ多く販売され、売れているのも理解できよう)。

雑誌は衰退していくのか、変遷期にあるのか

■雑誌衰退の三要因(推測)
・消費行動の変化
・インターネットの普及
・作り手側の「リーマン化」

2001年から2006年といえば、インターネットが大いに普及した期間と一致する。購読者層の趣味趣向の変化もあるだろう。社会情勢の移り変わり(例えば販売店舗の動向、一人あたりの消費単価の減少、新中古書店の増加)も影響を与えていることは間違いない。

しかしながらそれら以上に大きく雑誌販売数の変化に影響を与えているのが、携帯電話も含むインターネットの普及といえるだろう。ネットの普及は「金銭面」「時間面」の双方で読者を雑誌から奪っている。それならばその状況を把握した上で、「シェアを奪った側を活用して自分達の勢力にもプラスの効果が導き出されるような工夫(陳腐な言葉だが「マルチメディア」、あるいは雑誌と新メディアを相互作用する「インタラクティブ」的なもの)をすればよいのだが、その努力と発想が今ひとつうまく行っていないようだ。

また参照ページで語られているのだが、雑誌制作現場では編集者のサラリーマン化が進んでいるという。他にも「優れたコンテンツや書き手を抱え続ける出版社だけが生き残る」という言及があることから、逆に考えればそのようなコンテンツや書き手を生み出したり発掘しようという気概が全体的に欠けているような雰囲気が見て取れる。

雑誌そのものは必要不可欠な存在には違いない。しかしビジネスである以上、利益を出さねばならず、そのためには一定数以上の部数を売らねばならない(販売そのものによる利益に加え、販売数が出ないことには広告を集めることもできなくなる)。しかし今後ますます状況が厳しくなることは容易に想像できる。色々な手法にチャレンジしつつ、雑誌業界も再編や大規模な体裁変え、方針変換が行なわれていくのだろう。

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