今の年収で満足している人は約4割、「あと200万プラスなら満足!」は6割に

2007年08月22日 06:30

時節イメージNTTデータ研究所が8月20日に発表した、gooリサーチの協力を得て行なった「働き手が組織に何を求めているか、どの程度満足感があるのか」に関する調査結果によると、働き手の約4割が現在の年収に満足しており、やる気や評価の高い人ほどその度合は高まっていることが明らかになった。また、「あといくらプラスされれば満足するか」という問いには「200万円以下の範囲」でと回答した人は6割に達するという調査結果も出ている(【発表リリース】)。

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今調査は7月13日から18日、ネット経由で行われたもので、有効回答者数は1013人。男女比は77.4対22.6。年齢層別では30代がもっとも多く36.6%、ついで40代が35.6%。役職は正社員が62.7%、管理職が20.7%、役員が12.8%など。

現収入に満足している人は4割・2割は「大いに不満」

現在の収入に満足しているかどうかという問いには「大いに満足」「満足」をあわせた「満足派」は約4割に達している。

現在の収入にどの程度満足しているか
現在の収入にどの程度満足しているか

「満足派」が4割、「不満足派」が6割、中でも「大いに不満足」は2割という構成は男女・年齢層を問わず共通しているようで、これが全般的なコンセンサスのようだ。一方「モチベーション」(やる気)や「評価」別に見ると、両者共に高ければ高いほど、現行の収入に満足し、低いほど不満足の度合が増えているのがわかる。特に両項目で「低位」の層では「大いに不満足」が4割にも達しているのが特徴的だ。

「モチベーション」と「年収」の関係については「年収が低いからやる気が削げた」のか、「やる気が無いから年収が低くなるのか」の両者が考えられるが、どちらかといえば前者の方だと思われる。一言で例えれば「こんなに懸命にやっているのにこれだけしかもらえない……真面目にやってられるか」という感じだろう。つまりこの点については、年収がかさ上げされればモチベーションを高めることは不可能ではないという結論にも達する。

注目すべきなのはむしろ「評価」と「年収」の関係。「評価」が低いほど「年収への不満が高い(≒年収が低い)」のは、高い評価を得た人ほど高額の報酬・年収を約束される「成果主義賃金」が普及した結果だと思われる。「評価が低く見積もられた」人は、「会社への貢献度も低い」と判断され、対価も低く抑えられてしまう。結果として年収は低額となり、その年収への不満も高まる、という流れだと思われる。こちらについては年収を上げても「評価が上がる」こととの関連性は薄いので、相関関係についての期待はできない。

「年収があと200万プラス」で6割の人が満足に

それでは「現在の年収に満足していない」不満足派に、あとどれだけプラスされれば「満足派」になるのかをたずねてみたところ、全体でもっとも多かったのは「100万~200万円」で35.2%に達している。

あと年収がどれくらいあれば満足するか。
あと年収がどれくらいあれば満足するか。

50万円未満、50万~100万円の層を合わせた「200万円未満」の層は全体で61.5%。200万円の年収アップを実施すれば、現在年収に不満を持っている人の6割を満足させることができる計算になる。

また、男性と女性に分けて比較してみると、女性の方が低額での処遇改善で満足度が向上できるようすがうかがえる。男性の場合100万円未満までの層は20.2%に過ぎないが、女性の場合は48.8%にも達しているからだ。女性の方が現実的に物事を考えているのか、それとも高望みをしない性格なのかは不明だが、これは非常に興味深い結果といえるだろう。

さらに「モチベーション」「評価」の項目で見てみると、いずれも低位になればなるほど低額での処遇改善で満足度が向上することが分かる。先にも説明したように「評価」と年収アップの直接的な関係は期待できないが、「モチベーション」の項目では「低額の処遇改善で満足する≒やる気を引き出させる」効果が期待できるだろう。


年収=お給料が会社のすべてではない。しかし年収は自分自身が会社にどのような評価を受けているかを推し量るモノサシの一つといえる。また、自分自身の生活の糧(かて)として欠かせないものである以上、必至にならざるを得ない。年収が働き手にとって満足のいかない額であれば、不満が高まり、それが企業離れ・転職のきっかけになる可能性は十分にある。「金の切れ目が縁(円)の切れ目」ではないが、時として働き手にとって、そう思い、決断してしまうこともあるだろう。これは単一の会社に勤めている人に限らず、転職者にも同様の心理である(【転職の現実は「企業は経験を求め、転職者は仕事内容と才能を活かせる場を求む」】でも、転職で不満足と回答した人の約半数はその理由に「賃金」をあげている)。

今回の調査結果によれば、女性層に対しては年収で100万円、男性層でも200万円の年収アップを実施すれば、モチベーションの向上や満足度、そして企業への忠誠心のアップを期待することができる。これらはすべて企業生産性を高める要因になりうる。直接、すぐに成果が出るわけではないが、離職率が低下し各従業員の士気が高まれば、数年、十年単位で年収アップ分の回収は可能なはずだ。そしてそこにはお金ではけっして手に入らない優秀な人材のストックと経験が残ることになる。

【大企業の業績アップ分は労働者には回らず、企業自身の拡大や役員報酬に~景気拡大の内訳とは】にもあるように、本来「働き手への年収アップで満足度を高める」政策を採らねばならない大企業が、かえって賃金を上げず、企業自身の内部留保や規模拡大、役員報酬のアップに充当する傾向が見られる。だからこそ【家計消費は先行き不透明さから減少中、さらに収入格差の拡大も顕著に・労働経済白書は語る】でもデータとして出ているように、各家計のサイフのヒモはきつくなり、内需が縮小する結果が出てしまう。

現実問題としていきなり年収100万円、200万円のアップは不可能だろう。基本給100万円/年アップとすると、8万円強のベースアップという計算になる。このような急速な年収アップなど、好条件での転職やヘッドハンティング以外に聞いたことがない。また、働き手の要望をすべて充足していたら、会社経営など成り立たないのは間違いない。

とはいえ、働き手=従業員こそが、会社が事業を継続していく上でもっとも重要な構成要素であるのも事実。100万円上乗せはムリだとしても、会社側はそれを目指すべく少しずつ生活の安定度を上げて安心して、そして満足のいく環境で働けるよう手を打ったり、モチベーションを高める工夫をしていくべきだろう。従業員は将棋のコマでなければお金で買えるトレーディングカードでもなく、それぞれ個別の考えを持った人間なのだから。

(最終更新:2013/08/19)

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