1967年以降毎年1種類、未知なる病気が発生……WHO報告
2007年08月27日 06:30
世界保健機構(WHO)は8月23日、2007年度における「世界健康報告(The world health report 2007 focuses on building a safer future)」を発表した。それによると1967年以降毎年1種類のペースで新しい、未知の病気が発生しており、一世代前には存在しなかった新種の病気が少なくとも39種類見つかったことを明らかにした。副題には「病気の国際的な広まりは市民の健康を脅かします(International spread of disease threatens public health security)」と書かれてあり、科学文明の発達でこれら新種の病気の蔓延がおきやすい状況にあることも懸念している(【発表リリース】)。
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報告書ではこれら「新種の病気」としてHIV(エイズウイルス)やエボラ出血熱、マールブルグ熱、SARS(新型肺炎)などを挙げている。さらに既知の病気(例えばマラリアや結核)が変移を起こし、抗生物質への耐性を強めている(つまりこれまでの薬が効きにくい)ことにも警告を発している。
報告書では科学文明や交通機関の発達により、国際化は進んだが、それと共にそれぞれの国の国民の安全が脅かされることを「航空会社は1年間に20億人もの人を運ぶが、旅行者と共に病気(病原菌)が他国に移動するのに数時間しかかからない高速度化も助長している」と説明した上で、感染スピードの拡大を警告した。具体例としてSARSを挙げ、SARSの急速な広まりでアジア諸国が2003年だけで概算600億ドル(1兆2000億円)ほどの損失(機会損失を含む)を受けたことを挙げている。
同様にBSE(牛の海綿状脳症)に代表される食に関する疾病も、食物連鎖の複雑化・大変化ともあわせ、大きな国際問題になりうるとしている。
これらの状況を踏まえて報告書では、国際基準としての保険規約(IHR2005)をすべての国が実施することや、各種病症に対する世界的な提携と共有化(発生状況や情報、知識、技術など)、各国政府間の協定などを強く求めている。WHO長官のDr Margaret Chan氏は今件について
「我々は想像以上に病気に対して脆弱性をかかえている。それらから身を守るため、世界的な連帯感が必要である。国際的な健康保全は集約的であり、相互責任を持った対応がなされねばなりません。新しい合言葉は『外交』『協力』『透明性』『備え』である。
(Given today's universal vulnerability to these threats, better security calls for global solidarity.International public health security is both a collective aspiration and a mutual responsibility. The new watchwords are diplomacy, cooperation, transparency and preparedness.)」
と述べている。具体的な例として1997年に最初に人への感染が確認されて以来308名もの人が亡くなっているH5N1型鳥インフルエンザへの対応を挙げている。
かつては海外で新しい病気が流行しても言葉どおり「対岸の火事」であることがほとんどだった。しかし、報告書で指摘されているように飛行機などの交通機関が日常茶飯事で使われるようになり、商品展開のグローバル化で多数の物品が海外製ブランドという生活になった今日では、他人事を決め込むわけにもいかない。
情報や研究成果の共有化は最低限必要不可欠ではあるのだが、国ごとの威厳(意地)や国家体制の問題などから、それですら十分になされていないのが現状といえる。これだけ人口が増えているのだから、「三人寄れば文殊の知恵」どころではない成果が期待できるのに、それすら適わないのは残念な気がしてならない。
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