「配当は恒久10%、譲渡益は時限10%継続」金融庁正式要望発表
2007年08月31日 08:00
金融庁は8月29日、2008年度の税制改正要望をとりまとめ正式発表し、30日に同庁公式サイト上に掲載した。それによると上場企業株式などの配当所得にかかる税率を恒久維持するよう求め、上場投資信託(ETF)の損益通算への組みいれなど税制手続きの簡素化を要望している(【発表リリースページ】)。
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今件については【証券税制の優遇措置廃止で新展開・金融庁が税率10%を「国際化」の観点から恒久化を要請へ】でも報じたように、「株式の譲渡益・配当にかかる税率は本来の20%から10%に半減されているが、譲渡益については2008年末、配当については2008年度末に廃止が決定している」という前提のもと、「配当・譲渡益共に恒久10%化」と、「配当は10%恒久化」+「譲渡益は時限措置として存続」の二つの意見が金融庁内で案として持ち上がっていた。
正式発表によると、「貯蓄から投資へ」の流れを推進し「リスク資産に投資しやすい環境の整備」「市場の国際競争力の強化」を確実なものとするため、
・配当(上場株式、ETF、グリーンシート)は現行税率10%を恒久化
・譲渡所得は当分の間、現行税率10%を継続
・株式やETFの配当、譲渡所得と、利子所得、さらには雑所得(先物取引など)との損益通算を可能とするよう損益通算の範囲を拡大すること
特に配当所得の税率について「法人税と所得税との二重課税調整の必要性もあり」と名言されたことは注目に値する。元々配当所得は法人税が反映されたあとさらに所得税を取られるという「二度取り」が指摘されており、改善が求められていた。極論として「二重取りがないよう配当課税はゼロ」とするのが道理にかなっているのだが、今回は既存ルールとの兼ねあわせからこのような形に落ち着いたのだろう。
興味深いことに、資料として例示された国のうちアメリカ・ドイツなど西洋諸国の多くでは「長期保有後の譲渡益には税制の特段な優遇」、アジア新興国では「原則非課税」とされているのが分かる。これら資料を併記掲載し、現行の暫定措置ですら国際水準的には魅力が劣るレベルであるのに、2008年の優遇措置撤廃で元に戻されてしまえば、国際競争についていけなくなることが力説されている。金融庁側が「国際競争」という観点において、焦りを感じているのも十分に理解できよう。
(最終更新:2013/08/19)
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