Youtubeの動画識別技術開発、国内からは角川が初参加

2007年07月28日 19:30

【角川グループHD(9477)】の関連会社でコンテンツの編集や運営などを総括して行う【角川デジックス】は7月26日、動画共有サービスで最大シェアを誇る【YouTube】が開発している、動画識別技術の実証実験に参加すると発表した。著作権保護のためにYoutubeがGoogleの協力で開発している、「その動画がどのような内容であるのか」を識別する技術で、日本からは初の参加となる(【発表リリース】)。

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Youtubeは動画の投稿を受け付け、その動画を不特定多数に気軽に配信できるシステムを提供したことで多数の利用者の支持を受けた。最近ではアメリカの大統領選挙で二大政党の選挙公報活動に使われるほどメジャー化しており、放送局も多数公式にコンテンツを掲載している。自作動画を世界に気軽に公開するという新たな文化を切り開いた立役者でもある。

一方で著作権法上問題のある動画の投稿も後を絶たず、著作権保有者からは問題視する意見も多い。指摘を受けて削除をしても次から次へと投稿されるのでイタチゴッコ状態となり、単なる「申請を受け付けて逐次削除」以外の方法を強く求められていた。Youtube側でも親会社となったGoogleの技術協力を受け、この問題を解決するために「投稿されている動画を自動的に検証し、著作権上問題のある動画を逐次ピックアップ・削除できる、いわばフィルタソフトのようなもの」を開発している(日本の著作権団体に対し「指摘された問題に対する対応策」の一つとして提示したのがこの方法)。

Youtubeが開発中の動画識別技術への実証実験には、すでにディズニーやタイム・ワーナーなど海外の大手コンテンツプロバイダーが先行して参加している。日本では今回発表された、角川グループが初めての参加となる。

リリースによればYoutubeにはすでに『涼宮ハルヒの憂鬱』や『らき☆すた』など、角川グループの有力著作物動画が多数(リリースによるとそのファイル数は約15万件)閲覧状態で投稿されており、同グループでも管理方法について検討を重ねていた。そして今回の実験参加により、「従来の管理ツールに加え、動画認識技術も含む著作権管理が実現することにより、ただ動画を削除するというだけでなく、ユーザー(ファン)の楽しみを尊重し、同時に著作権者の権利を守ることができる、新しいテクノロジーの確立に、大きな一歩を踏み出すもの」としている。

具体的には角川から各種テスト用動画が提供されて投稿され、試験運用中の動画認証技術で「正しく」識別できるかどうかの試験が行われるものと思われる。

動画の認証はテキストの認証以上に事情が複雑で、デジタルデータ化された動画ファイルの識別技術で、2次元の動画+音声データからなる動画そのものの類似検証をどのように行うのか、またどこまで認識できるのか、精度の高さには非常に関心を寄せるものがある。

例えば音声やカラーリング、縦横比、再生スピードの点でオリジナルデータと1~2%のズレをわざと起こさせて動画を作成し投稿した場合、動画ファイル化のデジタルデータ上はまったく別物になるので、オリジナルとは別物と判断されてしまうかもしれない。見た目にはほとんど同じものが「別モノ」として認識されてしまうことになる。テキストの検索技術で百戦錬磨の経験と技術を持つGoogleが、どこまでこの問題をクリアできるモノを提供できるのか、非常に楽しみといえる。

今回の技術開発が終了すれば、その技術を活用することで、角川が指摘しているものもあわせ「問題著作権物」は早急に削除されるものと思われる。ただしリリースにも「YouTube日本版をコンテンツの宣伝媒体としても積極的に利用していく予定です。ユーザーがコンテンツを楽しむと同時に、クリエーター(著作者)の権利保持と利益拡大を推進できる、新たな動画共有モデルの確立を目指します」とあるように、関連するものすべてが削除されるのではなく、何らかの指針とルールのもと、口コミ効果を狙うべく、投稿が許可されるものと推測される。

またこの技術による適切な管理が行われることが確認できれば、他の類似サービスにも同様の責任や管理義務が求められるだろう。動画ファイルを一般公開していない・管理側もそれなりに適時削除をしている・著作権法はそもそも親告罪だから問題ないだろうとし、著作権上問題のある動画ファイルの投稿を事実上野放しにするだけでなく、その動画に広告を関連付けてビジネスモデル云々すら提唱しているところもあるが、今後の状況次第では姿勢を改める必要に迫られる可能性は高い。

動画投稿型サービスの状況を大きく動かす可能性のある今回の技術開発がどのような方向で進み、形を成していくのか、注目したいところだ。


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(最終更新:2013/08/20)

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