米調査機関ニールセンの「ページビュー数からサイト滞在時間へ」のリリースを読み解く

2007年07月13日 06:30

インターネットイメージ先に【アメリカの調査機関がページビューでのウェブサイト評価を廃止へ】で報じた、アメリカのネット調査機関【Nielsen/NetRatings(ニールセン/ネットレーティングス、以下ニールセンと略)】による、ページビュー(PV、ページの表示数)に基づく調査の廃止と代替案としての「訪問者の滞在時間」の件で、同社が7月10日に発した【リリース(PDF)】が確認できた。概要は先にお伝えした通りだが、具体例としての数字もいくつか提示されているので、合わせて紹介することにしよう。

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動画などインタラクティブなサイトの評価が高まる

ニールセンではこれまでにページビュー数の他に、平均滞在時間や訪問者ごとの平均セッション数を計測済みで、今後はすべての訪問者の総滞在時間とセッション数のレポートを始める。最近はAjaxやFlashなどの技術に加えて、カーソルをあてるだけでURL先のページをプレビューする機能、さらにはRSSフィードによる全文配信など、ページを閲覧しなくても必要な情報が得られる仕組みが次々に生み出され、導入されている。

これらの技術をたくみに使うことで(処理は重たくなるが)利用者の便益は増える。しかしページビュー数は減ってしまうので、ページビュー数だけだと見た目には「価値の無いサイト」と見られてしまう。「ユーザーのためを思って色々ページに機能を盛り込んだのに、調査会社のランキングではかえって低い評価を受けてしまう」という弊害を避けるため、今回「訪問者の滞在時間」要素を調査対象としたという。

例その一としてニールセンでは有力検索エンジンやコミュニティサイトなどについての調査結果データを公開し、「訪問者の滞在時間」評価採用でどのように変化が生じるかを説明している。以下はすべてアメリカ版・2007年でのお話

・グーグル(25億5700万分/76億2300万ページ/20秒)
・ヤフー(7億6400万分/24億5100万ページ/19秒)
(グーグル÷ヤフー(3.3対1/3.1対1/-))
・マイスペースドットコム(75億3500万分/286億7200万ページ/16秒)
・ユーチューブ(21億1700万分/27億6200万ページ/46秒)
(マイスペースドットコム÷ユーチューブ(3.6対1/10.4対1/-))

※(総滞在時間/総ページビュー数/1ページあたりの閲覧秒数)


グーグルもヤフーも同じような性格のサイトのため、ページビュー数でも滞在時間数でも相対評価は変わらない(3.3対1と3.1対1)。ところが、ページビュー数を稼ぎやすいSNSの代表サービスであるマイスペースドットコムと、動画閲覧・投稿サイトのユーチューブとでは、ページビュー数の相対評価は10.4対1もあったのに、総滞在時間ではその比率は3.6対1と2倍以上の評価変化(ユーチューブの評価アップ)が果たされることになる。

動画や音楽を流すサイトでは特定ページに留まる時間が長い。よってページビュー数計測では評価が下げられる可能性がある。しかしユーザー滞在時間で計測すれば、ユーチューブの評価が上がったように、ランキングに大きな上下変動が起きるのは必至といえよう。

「ページビュー」から「総滞在時間」で大きく順位は変動する

次にリリースでは、総滞在時間のランキングを元にした、総滞在時間とユニークユーザー(ページビュー数ではなく、来訪者数)のベスト10とその変動を示している。こちらもすべて英語版でのお話。

AOLメディアネットワークス(25.0/91.6)
ヤフー(19.6/107.6)
MSN/ウィンドウズライブ(10.6/95.9)
Foxインタラクティブメディア(7.8/64.1)
グーグル(7.4/110.2)
イーベイ(6.1/60.2)
マイクロソフト(3.7/94.4)
EA(3.5/8.7)
アップル(2.8/45.0)
ユーチューブ(2.1/48.2)

※(総滞在時間(10億分)/ユニークユーザー(100万人))


例えばこれまでの評価基準であるページビューに近いユニークユーザーでは5位だったAOLは、総滞在時間では1位に躍り出る。これはAOLの持つインスタントメッセンジャーのユーザー数によるものだろう(利用中は滞在中と見なされる)。一方でグーグルやマイクロソフトはそれぞれユニークユーザーでは1位・4位だったのが、総滞在時間では5位・7位にまで落ちてしまう。

ランキングの上下がそのサイトの価値のすべてではないが、検索エンジンなどのようにそのサイト自身の閲覧時間が短いサービスは、例えそのサービス自身が有益であっても評価されにくい傾向が出てくる。動画配信やAjaxなどの本格導入によりサイトの性質でランキング評価が違ってくるのはおかしいということで導入される総滞在時間なのに、今度は「滞在時間が長ければそれだけでよいサイト・サービスといえるのか」という問題が生じてしまう。

「総滞在時間」評価にも問題は多い。
だが代表格のニールセンが採用した以上、
この手法の重要性は果然高まることに。

先の記事でも指摘したが、本当に長時間の滞在者として認識された読者が「コンテンツを色々利用している良い読者」なのか、「タグブラウザを使ってメインのサイトを見ている人による、目を通していない下層のページを開いているだけの読者」なのか、「離席している」のかは、データとしては判断しにくい。また、同一サイト内の他ページのリンクを片っ端から別ウィンドウで開かせた方が高評価が与えられるということになる。

本来なのは「そもそも論」として何を対象にランキングするのかを確定した上で、「ページビュー」「ユニーク」「滞在時間」すべての要素を反映させた方程式を作り、係数でバランスを取った上で総合評価的な指標を作るべきなのだろう。

ともあれニールセンという影響力のある会社が「ページビューを止めて滞在時間にします」と宣言し、実行することになった以上、少なくとも欧米においては今後「サイトの評価判断」はページビューよりも総滞在時間が重要視されることになりそうだ。


(最終更新:2013/08/20)

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