【更新】次期主力戦闘機問題、現行機F4の使用延長の可能性・産経報じる
2007年07月16日 12:00
産経新聞は7月15日、航空自衛隊の主力戦闘機F4ファントムの新型機(次期主力戦闘機・FX)として本命視されているアメリカ空軍のステルス戦闘機F22Aラプター(Raptor)に関してアメリカとの交渉が難航している問題を受けて、防衛省と自衛隊がFXへの切り替えを数年後に行う予定のF4ファントムの耐用年数を延長する方向で検討に入ったと報じた([該当ページ])。難航の原因はアメリカ側が日本の情報保全体制に不信感を抱いているのが原因としている。
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1973年に導入が開始されたF4ファントムはF15Jイーグルと共に現行の航空自衛隊における主力戦闘機。しかし耐用年数を間近にひかえてFXへの切り替えが模索され、現在「F22A戦闘攻撃機」「F35戦闘機」「F/A18戦闘攻撃機」「F15FX」「ユーロファイター」「ラファール」の6機種が主力選択候補とされている。しかし整備問題なども考慮すると実質的にはF/A18、F15FX、そして今回のF22Aが主力選考対象、ユーロファイターが対抗馬的な位置づけといわれている。
中でもF22は単価が高いもののステルス性や機動性に優れている。数で仮想敵国と比べて劣勢が否定できない現状においては(少なくとも戦力、そして威圧効果という点で)どうしても選択したい対象。4月に行われた日米共同訓練にF22も参加しており、その際には「「日本は手も足も出ないほどの実力差だった」と空自幹部に言わしめるほどの性能を発揮したという。
しかし今年に入ってから日本国内では防衛部門においてですら数々の情報(末端に留まらず中枢部門まで含む)漏えい・流出事件が相次ぎ、アメリカ政府側が日本の情報保全体制に不信感を抱いている。機密のかたまりが空を飛んでいるようなF22を、例えダウングレード版でも日本に手渡したら機密情報が第三国に渡ってしまい、F22の優位性が損なわれてしまうのではないか。そのような疑心暗鬼がアメリカ側にあり、日本へのF22の提供を拒んでいるというのが実情らしい。
ただ、今回の産経新聞に指摘・報じられるまでもなく、アメリカ側では日本の情報管理体制の甘さに何度と無く苦言を発している。情報管理部門の弱さは明治時代以降日本の(良くない意味での)お家芸のようなものだが、逆に考えれば半世紀以上過去から何も学んでいないことになる。ただ、それ以前(日露戦争以前)ではそれなりに「情報」を重要視し、管理する考えを持ち、体制も整えていることを考えると、一概に「地政学的・人種的な問題」と言い切れるわけでもなさそうだ。
情報を管理し、守るべき機密情報はしっかりと保護しなければならないのは軍事部門のみならず経済・産業その他すべての部門に共通した、大切なこと。情報は使い方次第で何よりも大きな力となるからだ。ましてやネットの普及で「情報」の概念・価値がケタ違いに変わりつつある昨今では、ますますその重要性は高まっている。
アメリカに指摘されるまでもなく、「守るべきものは守らねばならない」のだが、一向にその体制がとられないのは危機感が薄いからなのだろうか。それとも守るべきものを守る仕組みが出来ると困る人たちがいるからなのだろうか。
ともあれ、より強固な機密情報の保全体制の確保と、さまざまな防御策の実施は、F22をはじめとする次期主力戦闘機の選考だけでなく全般的な案件として必要不可欠なもの。いくら美味しいスープを作っても、それを納める鍋や皿にヒビが入って漏れ出していたら、その美味しさを味わう事はできない。いくら一生懸命掃除をしても、そのそばから散らかされてしまったのではいつまで経っても部屋はきれいにならないもの。本来守るべきものを守ろうとしない方々、あるいは「あなたたちはどこの国の人ですか」と言葉をかけたくなるような人たちにはそろそろご退場願いたいものではあるが……。そうでなければ、このような事情で老体に鞭打って耐久年度を延ばされたF4があまりにも不憫(ふびん)でならない。
また、今回の報道を読む限りでは、本命視されていた機種のうち、F15FXやF/A18が事実上の「当て馬」だったことも予見させる。あくまでも産経新聞の報道で、防衛省などからの正式な告知ではないので正しさ云々を語ることはできないが、一つの可能性として十分ありえるだろう。自国でF22Aに負けないくらいの性能を持つ戦闘機が開発できれば、それに超したことはないのだが。
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