創られたブームに醒めるユーザーたち? 「『セカンドライフ』に興味は無い」は76.4%

2007年07月31日 08:00

『セカンドライフ』イメージインターネット上で市場調査などを行う【アイシェア】は7月30日、>多人数同時参加型ネッワークコミュニケーションツール【セカンドライフ(Second Life)】について意識調査を行った結果を発表した。それによると「現在の」『セカンドライフ』に興味がなく、プレイをするつもりはないと回答した人は全体の76.4%に登ることが明らかになった。この結果などから同リリースでは「『セカンドライフ』の現実は空虚?」「『セカンドライフは空っぽの洞窟』? 未成熟なメタバース(仮想空間)に熱狂する企業vs冷静な消費者」というコピーが踊っている(【発表リリース】)

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同調査は7月にネット上のアンケート形式で行われたもので有効回答数は585。男女比は51.3対48.7。年齢層など他の分類は不明。調査母数が少なめのため、世間一般の状況とはぶれが生じている可能性があることを考慮に入れた上で結果を見る必要がある。

『セカンドライフ』を知っている人は63.9%、ネットで・テレビや雑誌でが大半

まず第二の人生ではなく多人数同時参加型ネットワークコミュニケーションツールとしての『セカンドライフ』を知っているかどうかについての問いには63.9%が知っていると答えた。その「知っている」人のうち、52.4%が「雑誌・テレビで」で、42.2%が「インターネット」知ったと回答しており、ほとんどの人が他の一般情報同様にネットや雑誌でその存在を知ったことになる(リリースの図版では両者が逆になっている)。ネット上のサービスであるのに情報源が雑誌であるあたり、興味深いものがある。

また、実際に利用している(した)人(3.8%)にその理由を尋ねたところ、多数が「話題になっているから」(72.2%)「新しいことだから」と答えており、他の流行モノ同様に「強い求心力がある」わけではなく「何となく騒がれているから」触れてみた程度であることがうかがえる。

『セカンドライフ』を利用している(利用した)理由。
『セカンドライフ』を利用している(利用した)理由。

その傾向は「『セカンドライフ』をやらない理由」からも推測できる。「周囲にやっている人がいない」(20.3%)「パソコンのスペックが足りない」(17.4%)「始め方が分からない」(15.3%)といった、興味はあるが(始めたくとも)始められないような他のネットサービスにありがちな回答はあまりなく、ほとんどが「特に興味が無いので」(76.4%)と答えている。

『セカンドライフ』に挑戦しない理由は。
『セカンドライフ』に挑戦しない理由は。

日本では特にこのようなサービスではビジュアル面での第一印象が強いインパクトをユーザーに与える。その面で『セカンドライフ』はお世辞にも強いとはいえず、それが「特に興味がないので」層につながる結果となっているのだろう。

関心はあるがいざフタを開けてみたら……?

『セカンドライフ』への期待は多種多様。仮想都市体験やお金を実際に稼げること、企業のサービスを体験できること、同一趣味の人とのコミュニケーションや各種イベントに参加できることなど、『セカンドライフ』のセールスポイントに対する興味は高い。

しかしその一方、実際に『セカンドライフ』を体験した人に感想を聞いてみると「何をすればよいのか分からない」「パソコンが重い(動作不安定)」など初心者向けガイダンスやシステム・環境レベルで不十分というハードルを感じている意見が多いことが分かる。

『セカンドライフ』を体験して気が付いた事は
『セカンドライフ』を体験して気が付いた事は

また、『セカンドライフ』に限らず3D仮想世界を自由に行動できるソフトやショップについては、関心がある人は23.2%に留まり、あまり高い求心力があるわけではないことも判明している。


『セカンドライフ』については昨今、利用者率が0.8%や0.7%という、決して高くない数字が相次いで調査結果として報告されている。そのいずれもが精査してみると実際に体験した人は「ミーハー的感覚でトライしてみたけど、何をしていいのか分からないしつかみどころがない。いわれているほどのめりこめるものじゃない」「何をしてよいのか分からない」「マシンスペックそのものが低くて満足に動かせない」という内容以前の問題、プレイしない人は「企業や広告代理店ばかりが先行して大騒ぎしている。事前環境の整備は分かるけど、企業の金稼ぎのために『創られたブーム』のようでかえって醒めてしまう」という意見が多い。

実は今調査における「『セカンドライフ』をプレイした上で感じた(不満点)」の上位に上げられている「何をすればよいのか分からない」「パソコンが重い(動作不安定)」「英語が分からない」の3点は、多人数同時参加型ネットワークゲームの黎明期において二大巨頭ともいえる『ウルティマ オンライン』『エバークエスト』の両者でも初期段階で問題視されていたことに他ならない。

これらに対して両ソフトは「サポートの充実や初心者向けガイダンスの拡充」「他メディアを用いて積極的に解説を行う」「口コミによる説明者(伝道者、スニーザー)を増やす仕組みを提供する」「ソフトの改良を行う」「翻訳ソフトの導入」など、時間をかけて逐次改良などの手立てを打ち、対処してきた。両タイトルが金字塔を打ち立てることができたのも、これらの努力のたまものといえる。

企業が先行進出して
箱モノを作るだけで
需要が生まれるはずはない。
地方開発の失敗例の
二の舞を踏もうとしている
……のかも。

『セカンドライフ』はシミュレーターレベルでの再現度が高く、著作権や金銭面での可能性もあわせ、色々な展開が期待できるサービスには違いない。特に公的部門やビジネスの面では、色々な使い方が考えられる。しかし多くの一般顧客を望むには、まだハードルが高く、多くの「一般客」を望むのは難しい。むしろビジュアル的な面で考えると、『ラグナロク・オンライン』や【HABBOホテル】の方がハードルが低く、なじみやすいかもしれない。

『セカンドライフ』をその言葉通り「セカンドライフ」的なポジションにつかせるためには、企業の参入による環境整備はもちろん必要だが、他にもっとやらねばならないことが山のようにあると思われる。「先に箱モノだけ創ればお客は必ず来てくれるさ」という考え方は、まるで典型的なお役所仕事(しかも失敗事例)に他ならない。うるおったたのは建設業者だけ(『セカンドライフ』の場合は広告代理店やデザイン事務所)だけというマヌケな結果になる。『セカンドライフ』を運営するリンデン・ラボ社自身はともかく、世界内でビジネスを営もうとしている多くの(日本)企業は、そのあたりまで熟考する必要があるだろう。

今回の一連の調査結果が「インターネットそのものの黎明期における、はじめの一歩的な期間に過ぎず、今後飛躍的に躍進するまでの生みの辛さ」と類するものなのか、「期待はずれで今後も失速、低空飛行を続ける」前兆となるのかは、参加するすべての企業の心構えにも責があるといえるのだから。


■関連記事:
【やはり利用率は低い? 『セカンドライフ』利用者率は0.7%】
【日本の『セカンドライフ』利用者は0.8%・「実質ゼロ」の少なさ】

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