若年層ネット動画の普及でテレビ放送からの脱却進む・10代のテレビ視聴時間は6割まで低下
2007年07月22日 12:00
【NTTレゾナント】と【三菱総合研究所】は7月20日、インターネットによる動画配信サービスに関する調査結果を発表した。それによるとネット動画の利用頻度はまだ低いものの若年層ほどその割合が大きく、その分一般テレビ放送をリアルタイムで視聴している割合が低下していることが明らかになった(【発表リリース】)。
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今回の調査はインターネット経由で6月7日から13日の間に行われたもので、有効回答者数は38017名。年齢層は10代から70代で、30代がもっとも多く36.0%、次いで40代24.6%、20代18.3%。男女構成比は男・女が48.0対46.8(未回答5.2)。
調査結果によると、無料動画配信サービス(例えば「Gyao」のような)の利用割合は前回調査の2006年1月の34.4%から、過半数を超えて51.4%に拡大している。しかしその一方で利用する頻度は「週一回以下」が8割を占め、頻繁には利用されていないことが分かる。
●好まれるジャンルは映画や音楽、アニメなど・男女年齢による差が大きい
好まれる無料動画配信サービスの利用ジャンルは年齢・性別で多分に差が出ている。人気のあるジャンル概要は次の通り。
■全般
・映画、音楽、アニメ、ニュースや天気予報
■男性
・若年層はアニメや音楽、お笑い、バラエティ
・中高年層はニュース、映画
■女性
・若年層は音楽、アニメ、映画、ドラマ
・中高年層は映画、ドラマ
これらのジャンル傾向は一般のテレビ放送や雑誌とほぼ変わるところがないものと思われる。特に女性においては年齢に関わらずドラマの人気が高いのには興味関心が寄せられるところ。
●若年層ほど「テレビ放送」から「ネット動画」への移行率が高い
テレビ放送やインターネットによる動画放送、レンタルや録画による視聴など、各種メディアに対する視聴時間の割合を年齢・性別・休日平日別に調査したところ、非常に興味深い結果が得られている。
各種動画の視聴時間構成
レポートによると「金曜日は平日でも(翌日が土曜日で夜更かしができるので)傾向が異なる」「土曜日と日曜も違う傾向がある」とのことで、平日は月曜から木曜、休日は日曜に関するデータを表示しているとのことだが、色々な意味で興味深い結果が出ている。レポートでの言及も含めてざっと挙げてみると次の通り。
・テレビ放送とネット動画をあわせた一日の「映像」視聴時間は男性よりも女性の方が長い。女性は平日でも休日並に長い傾向にある。専業主婦などもデータの対照にあるからか。
・テレビ放送の視聴率(リアルタイム放送のみでレンタルや録画分は除く)が映像視聴時間全体に占める割合は男女共に若年層ほど低い。10代では6割程度にまで下がる。
・年齢、性別を問わず「レンタル・録画した映像視聴」の時間は一定。一方で「ネット動画」の視聴時間は若年層ほど長く、10代男性の休日では映像視聴時間全体の21.4%に達している。
・「ネット動画」は若年層が動画共有サイトによるものが多く、中高年層では無料動画配信サービスの利用が多い。
・無料、有料を問わず動画配信サービスをテレビで見たい人の割合は多く、特に無料ではすでにしている人が9.7%、今後そうしたいという人が48.4%にも及ぶ。
「Gyao」などで動画配信サービスをテレビで見られる装置「ギャオプラス」の提供がスタートしているが、最大のメリットは「パソコンの難しい操作をせずにネット動画を見られる」ことに尽きる。ネット動画ならではの魅力が、パソコンというハードルを目の前に諦めていた人にも堪能できるとあれば、興味を持つ人も出てきて当然といえよう。
テレビの視聴率が下がっているのは某ゲーム機のせいだという言及が関係者から行われたという話が先日ネット界隈を騒がせたり、「テレビでテレビ放送を見るとは限らない」という言葉が随分昔から言われているように、テレビ放送にとって家庭用ゲーム機は最大の敵でありライバルとされている。しかし実際には今回の調査一つをとっても、テレビの集客率が低下している原因は家庭用ゲーム機に留まらず、「ネット上の動画や携帯電話のように、テレビ以外に面白いものが山ほどあるから、何もテレビ放送に固執する必要などない」というのが実情だろう。
どうあがいてもひと一人あたりの一日の時間は24時間以上にならない。睡眠時間を控除すればせいぜい12時間強であるし、学校や仕事など自分の自由が利かない時間を引けば、娯楽に使える時間はせいぜい一日数時間が関の山。限られた時間を効率よく、しかも楽しく過ごすにはテレビ以外にも密度の濃い映像娯楽が数多く存在する昨今において、特定の時間を拘束されるテレビだけを選ぶ理由はない。「レンタル・録画視聴」がすべての年齢・性別・平日休日に関わらず一定時間確保され、時間を上手に利用しようという考えが働いていることを見ても、現代人が「映像視聴に対してシビアに、そして効率の良さと濃さ」を求めているのは明らかだ。
特に流行を牽引し、今後継続的に(年齢を経ても)視聴者となりうる若年層において、リアルタイムのテレビ放送の視聴割合が低く、その分をほぼ丸ごとネット動画が「食っている」のは注目に値する。時間の経過と共にこの割合を持つ年齢層が中年層、そして高年層にも波及することは容易に想像がつくからだ。
その分「割を食っている」テレビ放送サイドからすれば、今まで以上に「テレビ放送ならでは」の楽しさや魅力を演出して注目を向けさせたり、新メディアとの連動を強力に推し量り共存を図るなどの動きが必要不可欠となるだろう。そしてなりより、「どうせテレビ放送なのだから」と信頼されず軽く見られることのないよう、色々な意味で襟を正す必要もあるに違いない。
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(最終更新:2013/08/20)
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