邪魔者扱いされていたエチゼンクラゲを医療材料に~理化学研究所が技術開発
2007年06月02日 19:35
日本の沿岸で大量に発生して、原子力や火力発電所の取水部分に大量に押し寄せて機能低下をもたらしたり、漁業への被害が深刻化している巨大クラゲこと「エチゼンクラゲ」や「ミズクラゲ」について、【理化学研究所】は6月1日、このクラゲたちから医薬品などに応用が可能な物質である糖たんぱく質「ムチン」を簡単に取り出すことに成功したと発表した(【発表リリース】)。これまで巨大クラゲ群は邪魔者扱いしかされていなかっただけに、その有効活用方法が生み出されたとして注目を集めている。
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「エチゼンクラゲ」は人間と同じくらい、あるいは以上の大きさを持ち、重さも100キロ以上に及ぶ大型のクラゲで、日本海沿岸などに大量に流れ着いて定置網に入り込み漁業に被害を与えたり、発電所の取水口に集まって詰まらせ、電力発電に大きな支障をもたらしている。しかも今までは産業廃棄物として処分、せいぜい畑にまいて肥やしにできるのでは、というくらいの活用法しか考えられなかった。
大型クラゲの水中映像と定置網にかかったクラゲ群。
今回理化学研究所と【信和化工】は共同で研究を行い、このクラゲから糖たんぱく質「ムチン」の新しい種類を発見した。この新しい「ムチン」は、人間の胃液の主成分に含まれる「ムチン」と構造が似ていて、医薬品や化粧品、食品添加物などとして利用できるという。具体的には巨大クラゲを廃棄物として陸揚げしたあと破砕し、固体部分と液体部分(海水)に分離。95%ほどは液体として排水され、残りの5%の固形有機物成分から「ムチン」を抽出するとのこと。
「ムチン」は現在の科学技術では工業的に合成したりバイオテクノロジーによって大量生産することができないため、今回大量に発生して邪魔者扱いされていた大型クラゲから代替品として「量産」できる技術が開発されたのは非常に有意義なことであるとレポートでは述べている。
なお研究所ではこの新しいムチンを、国に新しい資源を生み出してくれることを期待し、古事記にちなんで「クニウムチン(Qniumucin)」と命名したとのこと。
これまで捨てるしか処理方法が無かった巨大クラゲが一転有益な資源になる技術の開発で、今後プラスの意味でクラゲの出現が注目されるようになるかもしれない。あとはいかにコストを下げ(あるいは「クニウムチン」の価値を高め)、商業的に採算が取れる仕組みを生み出せるかが課題となることだろう。
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