三菱重工業が欧州の主力戦闘機ユーロファイター・タイフーンの生産ライセンスで交渉中との報道
2007年06月02日 12:00
【ロイター通信】が5月31日伝えたところによると、軍事・宇宙産業大手のイギリス【BAE Systems】が同社の生産している戦闘機で現在ヨーロッパの主力戦闘機でもあるユーロファイター・タイフーン(Eurofighter Typhoon)の生産ライセンス供与について、【三菱重工業(7011)】と交渉中であることを明らかにした。BAEのグループマネージングディレクターであるNigel Whitehead氏がロイター紙に語った。
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Whitehead氏はロイターに対し「現時点では(ユーロファイターの生産ライセンス供与について)三菱重工業をメインに話を進めている。同社は日本の会社の中では戦闘機の生産能力においてもっとも優れているからだ」と述べると共に「しかし提携関係は恐らく三菱重工業に限った話ではなくなるだろう」とも語り、他の大手関連企業とも提携をする可能性を匂わせている。
三菱重工業はすでにF-15Jをボーイング社からライセンス供与を受けて生産しているのをはじめ、パトリオットや垂直ミサイル発射システムなどのライセンス生産をしているが、現在のところBAEからは生産受注を受けていない。
また、日本(の企業)はヨーロッパ方面、というよりアメリカ以外との企業の関係が薄く、シェアも低い。こはひとえにボーイングやロッキードマーチンのようなアメリカ企業が大きく食い込んでいるからに他ならない。しかし現在の航空自衛隊の主力戦闘機F-4ファントムの後継機の候補として、ユーロファイター・タイフーンを検討していることをすでに明らかにしている。
今回の提携話が現実のものとなれば、現在F-22ラプターとF-15Xが最有力視されている航空自衛隊の次世代主力戦闘機の候補機争いに波紋をもたらすことは間違いないだろう。
なお同紙によれば、日本は武器の輸出禁止措置を国是としており、これがBAEや共同開発をしたドイツ、イタリア、スペインにとっても好意的なものとして受け止められている。なぜなら「ユーロファイターの生産を任せても、それを第三国に売却するような事態には(国是から)陥らないだろう」と見ているからだ。 Whitehead氏も「その国是があるからこそユーロファイターの機密保持ができ、情報の他国への漏えいにはつながらないと理解している」とコメントしている。
三菱重工業などによるユーロファイター戦闘機の日本企業でのライセンス生産が、そのまま日本の航空自衛隊の次期主力戦闘機の選択につながるわけではない。とはいえ、今件が現実のものとなれば「日本では生産実績がないからユーロファイターは次期主力戦闘機には適切ではない」とする意見を打ち消すだけの材料にはなる(実績が「薄い」「少ない」ことには違いないが)。
今件は防衛機密保持問題ともあわせ、今後さまざまな論議を巻き起こすことだろう。なお今報道は今のところロイター通信でのみ発せられており、ロイターのスクープと思われる。BAEや三菱重工業など関連企業からは正式な発表は一切行われていない。
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(最終更新:2013/08/20)
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