東証、MSCBや第三者割当増資の乱発にクギ

2007年06月28日 07:00

株式イメージ東京証券取引所は6月25日、上場企業各社に対し、MSCBや第三者割当増資などを行う際の情報開示などについて、これまで以上に十分な情報を市場に提供すると共に、株主や市場への影響を配慮した上で検討、実施するよう要請をした。今回公開の形でこのような要請を行うことで、今後目に余る行為が行われた場合、何らかのペナルティを課すとの東証側の意志の表れとも受け取れる(【発表リリース】)。

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リリースによると、上場企業がさまざまな理由(自己資本の拡充や再建を目指す)のため、市場から資金を調達する「エクイティ・ファイナンス」の一形態としてMSCB(Moving Strike Convertible Bond。転換価格修正条項付き転換社債のうち、修正が6か月に満たない間隔で行われ、さらに下方修正転換価格が参照価格を下回って決定されうるもの。要は株価が下がれば下がるほど多くの株式を引き受け先が手に入れることができる転換社債)や第三者割当増資は有効な手段である一方、市場や既存株主の権利に大きな影響を与えるとの指摘も強い。

例えばMSCBは値が下がれば下がるほど引き受け先が有利になるため、引き受けたファンドや企業が積極的に空売りをして株価下落を誘い、空売り利益とMSCBによる株数増の両方の利益を得ようとするなどの行為が見られる。これは既存株主にしてみれば、株式の希薄化・株価の下落というダブルパンチなマイナス要因となる。

企業の財務状態を考慮すれば、MSCBや第三者割り当てによる資金調達をしなければならない場合(特にMSCBにおいては「MSCBでないと引き受けてくれないほど状況が悪化している」場合)、発行そのものは仕方ないところではある。しかし、企業によっては経営努力をせずに安易にこれらを乱発し、既存株主を軽視する傾向もある。「主事業は株券発行」「市場は単なる資金調達場で株主など眼中にない」「株券造幣局」と揶揄されるほどだ。

そこで東証は今回、MSCBや第三者割当増資において次の点で注意を行った。

1.上場会社は、MSCBなどの発行を行う際には、調達資金の使途、新株予約権などの行使条件の合理性、MSCBなどの発行数量及び当該発行に伴う株式の希薄化の合理性などについて十分に確認・検討を行ったうえで、流通市場への影響及び株主の権利に十分に配慮すること。

2.上場会社は、MSCBなど発行を行う際には、当該資金調達方法を選択した理由、調達する資金の使途、発行条件の合理性等について、わかりやすく具体的な説明を行うこと。

3.上記のほか、上場会社は、第三者割当により株式、新株予約権又は新株予約権付社債の発行を行う際には、当該資金調達方法を選択した理由、調達する資金の使途、発行条件の合理性等について、わかりやすく具体的な説明を行うこと。


今回の「警告」に該当するような傾向は特に新興企業に多く(中には株主総会で「増資はしない」と断言して株主の支持を取り付け、2日後に大規模増資をする東証一部上場の大企業もあるが……)、新興市場の信頼性の低下と市場そのものの低迷の大きな要因ともされている。

今回の東証(東証一部・二部、そしてマザーズ)の注意が、他の市場、特に新興市場に浸透し、効力を発揮することを祈りたいものだ。

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