「損切りライン」は3%が最多・5%までで8割強が損切り~決断を遅らせる要素は?
2007年06月18日 06:30
先に【「投資の情報通」と思う人ほど資産運用が下手!?・利回りはわずか0.60%】でもお伝えしている、【オールアバウトジャパン(2454)】が6月14日に発表したビジネスマンを対象に資産運用状況に関する調査結果によると、個人投資家の「損切りライン」は3%がもっとも多いことが明らかになった(【発表リリース】)
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今調査はビジネスマン1000人を対象に5月19日から21日までの間、インターネット上で行われたもの。男女比は81.9対18.1。対象は年収700万円以上で株式取引をしている人かあるいは興味のある人。色々と興味深い調査結果が出ているが、今記事では「元本割れに対する認識」すなわち「損切りライン」に関する調査にスポットライトをあててみることにする。
●損切りラインは5%
取引経験者、興味はあるが未経験者の双方に「元本割れ」に対する考え方を尋ねたところ、「未経験者は元本割れそのものが許されない」が最多、「経験者は3%までなら許せる」と答えた人がもっとも多かった。
「取引経験者」「興味はあるが未経験者」の双方にたずねた、元本割れに対する考え方の結果。
未経験者はそもそも「買った価格より株価が下がること自体が許されない」とする人がもっとも多く、「下がっても3%までだ」と答えた32.1%の人を合わせると9割近い人が損失は最低限までしか許されないと認識している。
これが取引経験者になると多少株式投資の現実を把握するようで、「元本割れ自体が許せぬ」とする人は27.1%に減り、一番多い層が「3%までなら許せる」となり、3割近くを占めている。「5%まで」の18.3%をあわせると、74.7%が「5%以上の損失は許せない(損切りする)」という結果になる。
●知識と経験が判断を鈍らせる!?
株価が右肩上がりを永遠に続ける銘柄など存在せず、タイミングによっては一時期買値の数割も値を下げる銘柄も多分にある。そのような銘柄を保有していた場合、「中長期的に考えれば上昇するのだから胃を痛めたり深いことを考えず、ただホールドしていれば良い」と主張する投資家がいる一方で、「下がると分かっているのなら早期に損切りしてさらに下がった時点で買いなおしすればいいではないか(あるいは信用取引口座があるのなら両建てする)」という意見もある。
「好転の可能性」を
想定させ、
損切りを遅らせる
どちらが正しいのかは結果論な場合もあり、また、状況によって変わってくるので断言はできない。ただ、先の記事に「知識が豊富な人の方が利回りは低い」という調査結果と今調査結果を合わせて考えると、知識が豊富な人は「今は急落しても将来上がるかも」という期待を持ってしまうので損切りが遅れ、結局大損してしまうのでは、という推測が成り立つ。逆に考えれば、変な予備知識がない方が機械的に少額の損で損切りを実行でき、利益もすぐに確定するので、結局平均利回りがよくなるのではないだろうか。
例えば「5%を超えたら損切り」という自主ルールを設けていても、知識や経験があると「いや、この銘柄ならもう少し下げても反発する」という調子の良い可能性を考えてしまい、損切りが遅れてしまうことが多々ある。本来プラスに働くはずの経験や知識が、正しい決断を下すのを邪魔しているわけだ。
今回の調査結果やそこから導き出される推論は、どちらかといえば短期売買において成り立ちうるもの。長期投資において「買い値から3%下げたら損切り」というルールを作った場合、よほどの底値買いでないと長期投資そのものが出来なくなる。とはいえ、それ以外の短期・中期売買の繰り返しで資産の増加を図る人にとっては、「余計な知識」が損切りラインをぼやかし、判断を鈍らせてしまうことになりかねない。そういうことになる。
今調査結果は「初心忘れるべからず」という言葉をあらためてかみしめる必要がありそうな内容といえるだろう。
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