裁判員制度でもらえる日当は「一時所得」?「雑所得」?

2007年05月24日 12:30

裁判員制度イメージ先日各メディアなどで報じられたように、一般の人から選ばれた裁判員が裁判の審査に参加する【裁判員制度】について、さまざまなルールの素案がまとめられた。その中で、日当(報酬)について、「一日一万円程度を上限に支払われる」ということも決まった。これは案の段階で、本決定というわけではないのだが、早速読者から次のような質問が寄せられた。

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裁判員制度とは、一定の刑事裁判(民事裁判は対象外)において、事件ごとに選ばれた一般の人が、裁判員として裁判官とともに審理に参加する、日本における新しい司法・裁判制度のことをさす。2009年5月に開始される予定で、今現在細かいルールが制定の課程にある。似たような制度としてはアメリカなどの陪審制度が有名。

さて質問とは【一言掲示板】から寄せられたもので、次のような内容だった。

裁判員制度で日当1万円との事ですが、制度有給がある会社だと手当て2重取りになるようなきもするけど、そこのところどうなっているのでしょうか。
また、日当の課税はあるのか、雑収入なのか。疑問です。
(以上、ハバネロさんの書き込み)


日当は「雑所得」

「早速、聞いてみた」。まずは裁判員制度を統括している最高裁判所事務総局広報課。こちらに、日当の課税問題について尋ねたところ、

税金についての判断は裁判所では出来ない。国税庁に問い合わせてほしい。


とのことだった。払うのは裁判所でも、確かに税金に関する判断なのだから、当然といえば当然かもしれない。そこで、国税局の中でも一番身近な東京国税局局室に問い合わせたところ、次のような回答が得られた。

労働に対する対価、報酬の意味合いが強く、一時所得ではなくて雑所得として取り扱う


つまり、本業の所得ではなく、原稿料や印税、講演料など何らかの使役を行うことによる対価であると見なし、「雑所得」として計算する。「一時所得」と「雑所得」では、確定申告時の計算が別物(控除額や課税金額を1/2にするか否か)なので、注意が必要だ。

ちなみに日当以外の必要経費、具体的には交通費、家から裁判所が遠い場合には宿泊料などは支給されるとのこと(【参考:Q&A、PDF】)。いわく、「裁判所に来ることで受ける損失、例えば昼飯代やアルバイトをしていたらもらえたはずのアルバイト料などを、一定の限度内で補償するためのもの」とのこと。

ただし現状において、日当として受け取る段階で始めから税金が引かれているか、それとも「取っ払い」(税金が引かれずにそのまま全額支給)かは不明。最高裁判所でもそのあたりは答えてくれなかった。

「2重取り」については……?

さてもう一つの質問、「裁判員制度で日当がもらえたら、制度有給でお金をもらっている場合は二重取りになるのでは」というもの。これは正直、「おめでとさん」というしかない。元々多くの会社では就業規則などの規定で「公的機関から召集を受けた場合には有給の取得理由として認められる」と定めているところが多い。さらに今回裁判員制度が導入されるにあたり、【トヨタ(7203)】【マンダム(4917)】など大手が「裁判員制度について」と特に定める形で、有給の取得を認めるべく動いている。これは「(たとえ業務・事業に支障をきたすとしても)有給を取得させるなどの配慮をもってこころよく送り出すのが、企業としての社会的貢献となる」という考え方からのもの。社会的貢献の一環として、社員の裁判員制度への参加を後押ししていることになる。

この場合、「有給休暇だからその日の分の給料は引かれることなく、手当てももらえるから二重取りになるけど、いいの?」という疑問も生じて当然だろう。が、それは問題ないと思われる。そもそも企業自らが「裁判員制度への参加を認めている」のであって、それには「交通費や日当の支給」も含まれているからに他ならない。

ただし、裁判員制度で有給を採った翌日、同僚から昼飯なりジュースなりをおごらされる可能性は十分にあるといえよう(笑)。もちろん裁判のようすなどは守秘義務が課せられているので、昼飯やおやつ時の話のネタとして語ってはいけないのは言うまでもない。


アメリカ映画ではよく陪審員の描写を目にするが、少なくとも近代以降において日本ではあまりなじみがなく、またさまざまな不安から「裁判員制度に参加したくない」という風潮が見て取れる。しかしごく一部の例外を除き、基本的に裁判員に任命された場合、辞退することはできない。

今回の日当の決定や税金上の取り扱いの判明から、ある程度不安は取り除かれたに違いない。上記関連サイトを確認して、万一自分が選ばれた時のための予備知識くらいは得ておこう。

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