「家庭内でも禁煙」アメリカで急増・日本の試算では副流煙での死亡リスクは5%
2007年05月26日 19:30
アメリカ疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)は5月24日、5月31日の「世界禁煙デー(World No Tobacco Day)」に先駆ける形で、アメリカ国内における「家庭内禁煙」に関する世論調査結果を発表した。それによると2003年の最新データでは調査対象家庭の72%もの家庭が家庭内禁煙を実施していることが明らかになった(【発表リリース】)。
スポンサードリンク
●アメリカでの家庭内禁煙率は急上昇中
同様の調査は1992年から1993年の間にも行われており、その時の「家庭内禁煙」結果は43%だった。それが約10年の間に2倍近い伸びを示していることになる。州別ではかつてもっとも禁煙率が高かったユタ州が69.6%から88.8%に、もっとも低かったケンタッキー州でも25.7%から53.4%に、それぞれ「家庭内禁煙率」が上昇している。特にユタ州が飛びぬけて家庭内禁煙率が高いのは、喫煙などを戒めるモルモン教の信者が多く住んでいるからだと思われる。
CDC のJulie Gerberding博士はレポートの中で「この10年間で家庭内禁煙に関する目覚しい進歩を具体的な数字で観ることができた。しかしながら現在でも数百万人もの子どもと禁煙している大人が、副流煙の危機にさらされている。喫煙家が家族と自分自身の健康を保持するためにできるもっとも良い方法はズバリ禁煙することだ」と述べている。
●受動喫煙での生涯リスクは自動車交通事故の10倍以上
それでは「家庭内禁煙」をせずに家庭内で喫煙し、喫煙者本人以外が「副流煙」を吸い込んでしまうことによるリスクはどれくらいだろうか。
たばこの先から立ち上がる、喫煙者以外の人が吸い込んでしまう煙のことを「副流煙」と呼んでいる(吸ってしまう行為は「受動喫煙」)。この「副流煙」が思っている以上に広範囲に影響を及ぼし、大きな害をもたらしうるのはすでに【30センチ? 3メートル? 「たばこの煙」とその害はどこまで届く? 】でお伝えした通り。
・能動喫煙:3.75万人~5万人
・受動喫煙:5000人
・自動車交通事故:480人
・ダイオキシンによるがん:91人
・地方都市のディーゼル
排ガスによる肺がん:30人
1998年に発表された北海道・深川市立総合病院松崎道幸氏1998年の試算によれば(【(リリース、PDF)】)、日本人の人口10万人あたりの生涯リスク(つまり10万人のうち何人がそれを原因として死亡するかという推定人数)を計算した場合、喫煙者自身による能動喫煙は3万7500~5万人、そして家庭内や事務所での受動喫煙は5000人という値が出ている※。
10年以上経過した現在においてもこの試算値が使われており、今仮に最新のデータと機器で算定しなおせば、多少のプラスマイナスは生じるに違いない。とはいえ20人に1人、1クラス40人ならクラスに2人は受動喫煙で命を落とす計算になる。あくまでも単純比較だが、自動車交通事故によるリスクの10倍以上、ダイオキシンの50倍以上になる。
たばこが喫煙者自身だけでなく、周囲の家族にもこれだけの影響を及ぼしうるというデータがすでに10年前に出ている。「それでもまだ、あなたはたばこを吸い続けますか?」
……と禁煙団体のように殊更(ことさら)に訴えかけるつもりはない。それは当方がぜん息の経験を持ち空気の変化に過敏なことや、ニコチンの魔力に取り付かれた人の様相をよく知っていたとしても、だ。
ただ、単に「自分にも他人にも身体に悪いから」と畳み掛けるのではなく、科学的・統計学的な検証データがこれだけ出ているのですよ、と提示し、判断を喫煙者本人に任せることはできるかな、と考えてはいる。投資ではないが「最終的な判断は自己責任・自己判断で」というわけだ。ただし上記データにもあるように、自分の責任が他人にも影響を及ぼすことは、くれぐれもお忘れなきように。
※今件については発表直後「WHOが受動喫煙のリスクはないと発表した」という報道が行われたが【これも否定され、受動喫煙にリスクはあることが再確認されている】。
■関連記事:
【「たばこ1箱1000円で9割が禁煙を”考える”、が……」京大大学院教授が学術論文発表】
【男性の喫煙率40%を切る・厚生労働省調査から】
(最終更新:2013/08/21)
スポンサードリンク
ツイート