【更新】大手情報サイトが「アルファ」たる理由3か条と「スニーザーブロガー」
2007年05月03日 19:30
4月分の統計データを【先日公開したが】、実際にはこの数倍のデータを内部的に集計し、色々な分析を行っている。その分析の過程で気が付いたことを一つまとめてみることにする。テーマは「サイトはどこを向いているのか、どこに向けて情報発信をしているのか」ということ。
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●「読者」は単なる「読者」だけではない
「サイトはどこを向いているのか、どこに向けて情報発信をしているのか」なる質問に対し「読者に決まっているだろ」と意見する人も多いだろう。それはごもっとも。
ただ、「読者」と言っても色々ある。サイトに目を通してくれた人はすべて「読者」で間違いないが、その「読者」すべてが単なる「読者」ではない。中にはサイトやブログを運営している人もいるだろう。サイト論やインターネット技術関連の最新情報を中心に記事を掲載しているサイトやブログには、特にその傾向が強い。また、法人やサービスの関係者が運営するブログもしかり。自分自身のサイト・ブログの運営に、役立つ情報が載っているかもしれないからだ。
役立つ情報があれば、その情報を自分のサイトに活かし、あるいは情報源とする。そして機能を追加したり、記事として掲載する。前者は機能拡充という形で反映され、後者は新しい「発信情報」として世に知らしめられる。
●サイトやブログ運営者に伝達された情報は二次波及する
「読者」がサイト・ブログ運営者だった場合。「読者」という立場で情報を受けた時、その情報を使って「情報発信元」になり、情報ソースの引用元リンクを「情報元」などの形で設定すれば、「大元の情報発信元(A)」-「読者=二次的情報発信元(C)」-「読者(D)」という一連のつながりができる。「二次的情報発信元(C)」の読者(D)がさらにサイト・ブログ運営者なら、同様にさらなるリンク、連鎖がおきうる。(D)のブログの読者(E)が情報を読み、そしてブログに書いて読者(F)に……という形だ。
かくしておおもとの情報発信元(A)は、(A)独自の読者だけでなく、(C)の読者、(D)の読者((E)、(F)、……)のハートもつかむことができるようになる。
サイト運営者たちのハートをつかむ記事を配信すれば、自分のサイト読者だけでなく、サイトB、サイトC、さらにはサイトDの読者をも得る可能性がある。ただしサイトロイヤリティがもっとも高いのは当然サイトA自身の読者なので、はじめから「スニーザーブロガー」に向かった記事構成をしていると、ピントがずれたサイト運営となってしまうことに注意すべきだろう……とキャプションで結構重要なコメントをしてみたりする。
もちろん(A)から(C)、(C)から(D)にいたる過程で、紳士論・倫理観・サイト運営ルールなどに従い、引用元のリンクが貼られていないと、(D)以下からの読者を(A)が獲得することはできない。
また、(D)のサイトが引用元として(C)を挙げた場合、(D)の読者が(A)までたどり着くには(D)→(C)→(A)と二段階のステップを踏む必要がある。途中で面倒くさくなったりリンクが切れている可能性もあり、到達可能性は低くなる。
それでも、「(A)直属の読者以外に、色々なサイトやブログの読者の感心も引ける可能性がある」「自分のサイト以外の読者にも、自分のサイトと掲載情報を読んでもらえる可能性が生じる」のは、情報発信者冥利につきるところがあるだろう。
●バイラルマーケティングと似た図式
上記図式で、このような図式において系統立てる場合上から「α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、……」と呼ぶことから、「サイト・ブログ(A)」に該当するサイトやブログを「アルファブログ」と呼んでいる。
アルファブログを運営・執筆する立場の人、アルファブロガーが書いた記事が、多くのサイトやブログに掲載され、あっという間に世の中に広まり、多くの人がアルファブログに「参照元」「記事のおおもと」としてやってくる状況は、口コミマーケティングこと「バイラルマーケティング」のそれに近い。
「バイラルマーケティング」では、「スニーザー」と呼ばれる「多くの人に影響力を与える、スピーカー的な役割を果たす人」に情報を流し多くの人に影響を与えるよう工夫するわけだが、アルファブロガーたちはそれを意図せずして、多くの「スニーザー」を読者として抱えていることになる。
●大手情報サイトは多くのリンクを得ている
ブログの情報を統括している検索サイト[テクノラティ]では、[ブログのランキング]を各種データと共に公開している。そのデータ上、日本最強最大のブログとして定位置に座する【GIGAZINE】は、過去6か月間の間に6000を超えるリンクを「他のブログやサイトから」張られ、総計で6000以上のブログから3万件近いリンクが張られているというデータがある。上記の図でいえば、「サイト(A)」から直接・間接的に伸びるラインが3万本、サイト(B)以下のサイト6000か所からラインが設定されていることになる。ここまでくると、ちょっとした脳細胞神経のようである。電流を流せばシナプスのように意識が芽生えるのではないかと思うほどだ。
【2007年3月度のGIGAZINEのアクセス数は】1908万ページビュー/722万7000ユニーク数に及ぶ。[読売オンライン]の同月期のそれが2億8888万ページビュー/697万9000ユニーク数だから、ページビューはともかくユニーク数では、かの「読売新聞のオンライン版」を上回る読者数を確保していることになる。
「テクノクラティ」の他の上位サイトも、いずれも数千件単位のリンクを得ており、情報ピラミッドの上で「アルファ」たる位置を占めているのは明らか。
●大手情報サイトが「アルファ」たる理由
ではなぜこれら大手のサイト・ブログが「アルファ」たる立場に位置し、多くの直接読者を集めるだけでなく、多くのサイトに引用され、「スニーザーブログ」によってさらに多くの読者を得ているのか。サイト・ブログの成り立ちもさまざまだし一概に「こうだ」とは言い切れないが、次のような理由が考えられよう。
(1)独自の情報を持っている・発している
他のサイトやブログにない情報を発していれば、必然的にそのサイトは情報の基点となる。企業などのプレスリリースもこれと同じといえる。
(2)分かりやすい
多くの読者が読みやすいだけでなく、「スニーザーブロガー」が理解して引用しやすいものでないと、二次波及はし難い。たとえば「相対的理論に基づいたタイムマシンの可能性とその方程式」を「自分で考えた独自情報」として掲載しても、ほぼ百パーセントの人が理解できずに素通りし、二次波及効果は生まれない。
(3)面白い・興味深い
これは(1)と(2)の両方に関わることなのだが、読者にとって、そして「スニーザーブロガー」にとって、関心のある情報でなければ伝わらない。アニメの最新情報を伝えているサイトの運営者が、株価の動向について云々しているニュースを聞いても転載するとは思えない(萌え銘柄なら話は別だが、理解度は低いのでパスされるかもしれない)。
他にも「アンテナが鋭い、広い」「情報が速い」「権威がある」なども要素として挙げられるが、大きくはこれらの3要素が重要となる。そして先の「テクノクラティ」で上位に位置するブログ・サイトのほとんどすべてが、これらの条件を満たしている。例えば第二位の【しょこたん☆ぶろぐ】は(1)から(3)すべてにおいて、満たしすぎるほど満たしている。先ほどテレビにも出演し、そのブロガーぶりを発揮していたのを見る機会があったが、多い時には一日20回も更新しているそうな。鼻血が出そうである。
●「引用」してもらうため、環境を揃えさまざまな工夫を
自分自身のサイトの読者へ向いた記事構成はもちろん必要。しかしその一方、波及効果を狙い、より多くの人に自分の情報を伝えたいと努力することも必要だ。新聞や雑誌と違い、「サイトやブログの読者」になることのハードルは低い(無料だから)。
上記の図でならサイト(B)やサイト(C)、(D)の読者がリンクされたサイト(A)の記事を見てお気に入りに追加したり、巡回ルートに加え、サイト(A)の定期的読者になる可能性も十分ある。
「スニーザーブロガー」に使ってもらうため、各サイトはさまざまな工夫を凝らしているようだ。先の【ネット新聞読者は紙の新聞読者より記事を読みこなしている】でも実証データが出ているが、大きな写真は第一印象を良くし、強いインパクトを読み手に与え、読ませる気にさせてくれる。テクノクラティ上位のサイトの多くがなぜか「少々の本文+大きな写真1枚+続きを読む」の構成で占められているのも、その「工夫」の一つだろう。
また、情報を伝播してもらうための工夫の一つとして、最近ではブログパーツが流行っている。プロモーションサイトへの誘導や、動画投稿サイトの各動画のパーツですでに大きな成果が上がっているが、情報サイトでも似たような動きが起きている。各記事をブログパーツ化し、「引用」(波及)しやすい土壌を作るというわけだ。
代表例が【ヤフーのみんなのトピックス】。ここでは投稿されたニュース一つ一つすべてに、「このトピックをブログにはる」パーツが提供されている。読者で「スニーザーブロガー」はこのタグをブログパーツのように貼り付け、引用したり、さらにコメントを加えればよい。
本来ならこのようなニュース単位でのパーツ提供は新聞社運営の大手法人ニュースサイトでも行うべきなのだが、「色々と」問題があるようでまだ踏み切れていないようだ。また、MovableTypeなどのブログシステムでも、このようなパーツタグを自動生成するようなプラグインができれば……というのが、当方(不破)の願いでもある。
もちろん、「スニーザーブロガー」に拾ってもらうことばかりを気にした記事構成は慎むべきだろう。何のためにブログやサイトを運営しているのか、本筋・根幹の部分がゆらいでしまう。
しかし記事内容そのものではなく、システム周りなどで(例えば「みんトピ」のニュースパーツ提供のように)多くのブロガーやサイト運営者に拾ってもらえるような便利機能を追加することなら、読者軽視にもあたらない。
何より(繰り返しになるが)、波及効果がどうであれ、一人でも多くの人に自分のこと、情報を知ってもらえることこそが、情報発信側のサイト運営冥利につきるというものだ。少なくとも当方はそう考えている。
(最終更新:2013/09/08)
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