川島「脳トレ」教授、自分の受け取り分2億円超も全額提供し、監修料で研究室を大充実

2007年05月17日 19:30

ゲームイメージ[このリンク先のページ(kahoku.co.jpなど)は掲載が終了しています]などの報道によると、『脳トレ』の監修で日本に「頭を鍛えるゲーム」の流行を巻き起こし、「脳トレゲーム」というジャンルさえ定着させた【東北大加齢医学研究所】の川島隆太教授が、昨年度の商品監修料すべてを研究所の収入に組み入れて、研究棟の整備費などに充当させていたことが明らかになった。その額、約4億4000万円。5月14日にはそのうち3億円ほどを投入して作られたブレイン・ダイナミクス研究棟が完成し、報道陣に公開されたという。

スポンサードリンク

これは公開に先んじて【プレスリリース(PDF)】でも公表されていたものだが、川島教授の知財創造経費(産学連携によるロイヤリティ収入)によって立ち上げられたプロジェクトの一環。研究棟にはマウスなどの大脳神経細胞の活動をレーザー光線を使って生きたまま詳しく観察できる「2光子顕微鏡システム」などを完備している。この顕微鏡は世界でも今まで2か所しか設置しておらず、今研究所が3か所目になる。

今後この施設を用いて川島教授らは、細胞レベルでの血流や代謝と、神経細胞の活動の変化を調べ、心の動きに脳の情報伝達がどうかかわっているのかを研究するという。

本来東北大学の規定では、知財創造経費は最大で半分を研究者個人が取得可能な決まりになっている。今回の場合は約2億円強分について、川島教授個人に受け取りの権利があった。しかし川島教授は「新しい装置で脳研究をしたい」として、その全額を研究室に組み入れ、建築費など研究所の充実に回した。今年度も監修料として約3億円が見込まれており、昨年度の残額もあわせ、今度は超高磁場の磁気共鳴画像装置(MRI)を備えた別の研究棟も建設する予定。

研究所では「脳科学基礎研究に基づいて産学連携を行い、その成果として得られたロイヤリティ収入を、脳科学研究の新たな発展に利用(再投資)するという、民間からの外部資金を用いた、大学の研究を持続型に発展継続可能とする産学連携の成功事例です」と説明している。要は「研究所の研究で商品開発をサポートし、それで得られたロイヤリティを研究所の充当にまわし、さらに研究を推し進める」というポジティブスパイラルを狙ったことになる。川島教授自身も「税金を使わず、自助努力で自分たちの研究に再投資する仕組みは世界でも初めてだろう」とし、「成果」に満足げな様子。

日本の大学や大学院、それに属する研究機関では、予算の獲得が一つの大きな課題であり障壁として立ちはだかっている。昨年から今年にかけて、数件の公的補助金の詐取や論文の偽造が事件として報じられたが、それらもほとんどは「お金」の問題と大きな係わり合いがある(いくつかは私的流用が目的なものもあったが……)。

研究成果がしっかりと「仕事」に還元され、それが研究を推し進める材料となり、さらにその分野の人材育成や環境整備にも貢献する。きわめて有効なお金の使われ方であり、賛美すべき行動だろう。その上自分個人の取り分までをも提供したというのだから、頭が下がりっぱなしである。

この研究所からは新たな発見や研究が生み出され、科学技術の進歩に貢献すると共に、ゲームをはじめとするさまざまな商品に活用されて世の中を楽しく、よりよいものにしてくれることだろう。そう考えれば、『脳トレ』をはじめとする川島教授監修も、これまでとは違ったふうに見えてくるというものだ。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ