「たばこ1箱1000円で9割が禁煙を”考える”、が……」京大大学院教授が学術論文発表
2007年05月22日 08:00
京都大学大学院依田高典教授(応用経済学)の研究グループは5月21日、たばこによるニコチン依存度別に見た、喫煙・禁煙に関する行動判断への考察を行動経済学の観点から考察した研究結果を発表した。それによると仮にたばこの価格を1箱1000円にした場合、9割もの人が禁煙を考えるということが明らかになった(【発表ページ】)。
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今調査はたばこの価格や健康リスクなどの項目から、行動経済学的手法を用いて実施、確率的に考察したもの。616人の現在喫煙している人たちをたばこのニコチン依存度別に「高依存」「中依存」「低依存」の3カテゴリに分類し、集計した。
それによると、たばこの価格は喫煙者の「喫煙しなければ」という決意をうながすのに大きな役割を果たすものの、ニコチンへの依存度が高い人ほどその効果は小さくなることが明らかになった。例えば欧米並みの600円まで値上がりした場合、「低依存」の人は8割までもが喫煙禁煙を試みようとするのに対し、「高依存」は3割に過ぎないことが判明した。ただし「禁煙しよう」とすることと「実際に禁煙が成功」することは別問題であり、この点について研究グループは「今後の研究課題」として定義している。
たばこの価格と喫煙継続(縦軸)・ニコチン依存度との関係。価格が上がれば喫煙継続率が減ること、依存度が高い人ほど価格が上がっても継続し続ける傾向にあることが分かる。
この図表から分かるように、仮にたばこの価格を1箱1000円にした場合、「高依存」な人でも9割もの人が禁煙を考えることが分かる。ただし後述するように「高依存度」は忍耐度・慎重度に乏しいという統計データも出ているので、禁煙が実際に成功する割合はもっと低くなるだろう。
仮に現実的な「1箱600円」とした場合、「低依存」では78.1%、「中依存」では63.0%、「高依存」では30.2%が禁煙を考える、としている。
「低依存」78.1%
「中依存」63.0%
「高依存」30.2%が
禁煙を考える
また、価格以外の要素、例えば「自分自身の健康」「家族の健康」と依存度の関係も、価格とほぼ同じ傾向が見られた。つまり「高依存」な人には価格以外の要素はほとんど用をなさない。つまり「健康に悪いよ」「家族の健康に影響及ぼすよ」とアドバイスをしても、たばこのニコチンに高度の依存をしている人にはほとんど効果がないことになる。一方で依存度が低い人には、これらの助言も禁煙へのプラス効果が確認された。
さらに研究発表内容では、「喫煙者は、非喫煙者に比べて、忍耐度・慎重度が乏しく、その傾向はニコチン依存度が高まるほど強くなる」とも断じている。
似たような研究結果としては【ファイザー、「500円以上なら禁煙する」意見が過半数などの調査結果報告】でも報じたように【ファイザー製薬】などの調査結果によれば「仮に1箱の価格が500円以上になれば禁煙する」と思う人が55.7%に及ぶことも明らかになっている。
今回の調査はたばこへの依存度によって価格上昇と禁煙への意思決定に差が生じるという、興味深い結果を明らかにしている点で注目に値する。また、昨年のたばこ価格の値上げの際に「いっそのこと1000円くらいにまで値上げしてしまえば禁煙効果が十分に見込める」という話がまた一つ裏付けられたことになる。
たばこ販売元の思惑などもあり、実際には1000円という価格帯は現実度が低い。とはいえ今後さまざまな理由から価格が上昇し、禁煙を検討する人の割合も増えることは容易に想像できよう。その際、今回の調査結果も多いに参考にされるに違いない。
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(最終更新:2013/08/21)
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