移植せずに薬で網膜を再生!? 理研と京大が技術開発へ

2007年04月12日 08:00

網膜イメージ理化学研究所と京都大学は4月11日、目の網膜で光を感じる部分に当たる「視細胞」を薬物投入で効率よく再生する手法を開発したと発表した(【発表リリース】)。網膜は一度キズがついてしまうと修復が難しく、これまでは移植手術しか治す手段がないとされていただけに、注目を集めている。

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網膜細胞再生イメージこの技術はキズがついてしまった網膜細胞に、特定の酵素GSK3βの働きを抑える低分子化合物を投入すると、細胞の分裂や増殖などに関係するたんぱく質Wnt(ウィント)が活性化した時と同じように、細胞の活性化が確認できたという。この仕組みを用いてマウス・サルの実験で網膜細胞の効率的な再生に成功したとのこと。ただしこの再生細胞によって視力が回復したかどうかまでは確かめられていない。

Wnt(Wnt3a)自身が網膜細胞を増殖・活性化することも明らかにされたが、Wnt自身は投与ルートが限られるなど服用の薬にするのはきわめて困難とされている。しかし今回利用された「特定の酵素GSK3βの働きを抑える低分子化合物」ならば容易に薬にできる可能性があり、期待が持たれている

この技術の最大の利点は、これまで網膜が傷ついた時には移植手術をするしか視力回復の方法がないとされていた問題に新たな道を開く可能性が生まれたということ。移植手術の場合(他人の、予備の無い)網膜細胞を利用するので倫理的な問題が生じるし、他人の器官を使うので拒否反応を起こす可能性がある。しかし今回発見された技術なら、自分の細胞の修復機能を活性化して治そうというものだから、拒否反応も倫理観もクリアできる。

「視力が回復したかどうか」という最大の問題は残っているが、人間と同じ霊長類であるサルにおいても実験に成功したのはポイントが高い。今後のさらなる研究の進展と、技術の確立に期待したいところだ。言葉通り一人でも多くの人に「光をもたらす」ために。

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