「お金は国が出してくれる」「備えは預貯金のみ」シニア層のお金の面での実態調査結果
2007年04月03日 08:00
先の【日本のシニアはちょっとシャイでケータイ苦手!? 内閣府意識調査結果】にもあるように【内閣府】の【第6回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果について】に関する記事では、特に携帯電話やインターネットの観点からリリースを紐解いてみた。同調査結果では他にも色々な興味深い内容が盛り込まれている。今回は経済、特にお金に関する視点で中身を見てみることにしよう。
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●収入源:日米独は公的年金、韓国は子どもからの援助、仏は私公年金が均衡
シニアの収入源(複数選択可)というと日本ではまず年金が頭に思い浮かぶが、日本では90.6%、アメリカでは76.8%、独逸では85.6%がもっとも大きな割合として「公的年金」と答えている。一方で韓国では「子どもなどからの援助」が60.7%が一番多く、フランスでは「公的年金」が61.4%、「私的年金」が63.2%とほぼ均衡している。
日本では「公的年金」の割合が年々増加(第一回調査では64.6%だった)しているのに対し、アメリカでは前回調査の85.4%から減少しているのが気になるところ。
●「経済的に生活に困ってる?」日本は14.5%
「経済的に日々の暮らしに困ることがあるか」という問いには、「困っている」「少し困っている」を足した合計数値を見ると、韓国が49.6%ともっとも高く、次いでフランスの40.0%、ドイツの29.9%、日本はもっとも低くて14.5%となっている。
ただ「困っている」という基準があくまでも個々の主観的な判断によるもので、数字的な絶対評価ではないため、各国の生活環境や文化民族性による違いが生じている可能性も否定できない。
●生活費の備えは「預貯金」が世界共通・米は個人年金や投資、日本は他への対策傾向低し
「50歳代までに老後の経済生活に備えて特に何かしていたか」という問いには、世界共通で「預貯金」が最も高かった。ただ、その中でももっとも割合の高いアメリカが64.7%なのに対しもっとも低い韓国が33.6%と倍近い開きがあるのが各国の貯蓄事情をうかがわせる。
また、預貯金以外の備えの手段としては、アメリカが「債券・株式の保有、投資信託」39.6%・「個人年金」39.8%と積極的に投資方面への注力をしているのに対し、日本や韓国では「何もしていない」がそれぞれ34.9%・54.7%と高いのが気になった。
日本の「備え」の平均件数が1.0という数字からも分かるように、日本人の大半は「預貯金だけを老後の備えにしている」ことが分かる。また、「個人年金への加入」や「老後も働けるように職業能力を高める」の割合が減っていることも問題視されるかもしれない。ちなみに「債券・株式の保有、投資信託」は前回調査の6.2%からわずかに増えて6.8%となったが、これは誤差の範囲だろう。
一方で、「それらのたくわえが十分かどうか」という設問には「そもそも社会保障で基本的な生活は満たされているから資産保有の必要などない」と答えた人はドイツで11.1%と1割を超えているのに対し、フランスで5.3%、日本でも1.8%とかなり低い値を示しており、基本的に「社会保障だけでは満足できない」様子が分かる。
「(社会保障+)保有資産で十分だ」という人はアメリカが28.1%ともっとも高く、ドイツ22.6%、フランス12.9%、日本12.6%、韓国7.4%の順。日本では前回から5ポイントほど増加している。一方で「足りない」とした人は韓国が65.8%ともっとも高く、次いで日本が45.3%。アメリカの25.6%などと比べると倍前後の高い数字を示している。
●医療や公的年金の充実を求め、一方で自力も活用すべしと考える日本
国などの政策に対する考え方のデータでは、「医療や公的年金を充実してほしい」という願いと共に「自分の力でも何とかしなければ」と考えている日本人の姿が想像できる。「高齢者に対する政策や支援で大切だと思うもの」では、「医療サービスの整備や充実」が日本では52.7%ともっとも高い(アメリカは80.3%)が、その一方でほぼ同数として「公的年金制度の充実」も52.4%となっている。「医療と年金をどうにかしてほしい」ということだ。
その一方、「老後の生活費について、どのように考えるか」という問いには日本では「他に頼らない」が47.6%、「社会保障などでまかなわれるべき」が43.6%とほぼ均衡しており、公的援助タイプと自己扶養タイプが競っていることが分かる。日本では時を経るごとに「家族が面倒をみるべき」「他に頼らない」が逓減し、その分「社会保障などでまかなわれるべき」が増える傾向にあること、直前の調査結果との比較ではその「社会保障~」がいくぶん減ったことなどが注目に値する。
ちなみに「公的援助タイプの増加」は他国でも同様の傾向が見えている。
これらの調査結果をまとめると、経済的な観点における典型的な日本のシニア層とは
シニア世代になるまでの備えはしていたとしても預貯金のみ、公的年金生活で少なくとも「暮らしにはあまり困っていない」と思い、「国や自治体にサポートしてほしい」と考えつつも「自分で何とかしなきゃ」という事実認識も同時に頭に思い浮かべている
ということになる(多少無茶のある表現なのは承知している)。
ただし今後、年金給付額が減少することこそあれ増加することはなく、租税その他の負担が増えることや、「武士は食わねど高楊枝」の言葉にあるような「意地」が「暮らしにはあまり困っていない」の回答に見え隠れしていることからも、シニア層の経済的な面における不安は増加するものと思われる。
これからの日本では、「お金の面から考えた人生設計書」こと「ライフプラン」の設計と、それに基づいた計画性のあるお金の稼ぎ方、使い方、貯め方、運用の仕方が重要視されるようになるのだろう。
(最終更新:2013/08/22)
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