携帯電話の電池問題の解決策となるか? 米大学教授らが「砂糖電池」こと「生体燃料電池」開発に成功

2007年04月01日 19:30

電池イメージワンセグやPCブラウザ、フルメロなど携帯電話の総合情報端末としての機能充実は留まるところを知らない。また【@IT「ケータイでプロジェクタ、TIが試作機をデモ」】にもあるように、携帯電話にプロジェクタ機能を搭載する会社まで出てくるなど、今後もIT系機器のさまざま機能が追加されるだろう。そこで大きな問題になるのが携帯電話の電池問題。機能が増えれば増えるほど電池消費量も増え使用時間も短くなる。とはいえ大昔の軍用携帯電話や通信衛星のように核電池を使うわけにもいかない(笑)。そんな問題を解決するかもしれない技術が、先日アメリカのセントルイス大学の教授らによって発表された。その名も「砂糖電池」と呼ばれるものだ(【トリガー記事:ITmedia】)。

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【サイエンスニュースオンライン】ではこの「砂糖電池」こと「生体燃料電池」について【あなたの携帯、ジュースが不足してない? バイオな燃料電池がジュースを電力に替える】というタイトルで今件について説明している。

構造としては次の通り。この新しいタイプの燃料電池は特殊な酵素を利用し、糖分を化学反応させて微弱な電力を発生させるというもの。開発したのはセントルイス大学のShelley D. Minteer教授とTamara Klotzbach教授。

新しい燃料電池の寿命は数か月にも及ぶ。触媒に当たる糖分が注入されるとそれを用いて酵素はそれを酸化させ、その過程で電子の流れが発生し、電流が構成されることになる。

「砂糖電池」こと「生体燃料電池」の利点
・身近な物質が補充燃料になる
・バイオエタノールより変換効率が高い
・原材料費の軽減
・廃棄物が環境に与える影響が低い

この砂糖を燃料にした燃料電池、つまり「砂糖電池」こと「生体燃料電池」では、貴金属をほとんど使わないため、原材料費用も安くつくし、燃料そのものの範囲もより広いものとなる。要は砂糖というよりその糖分を利用するので、砂糖そのものではなくジュースや樹液、シロップなど、何でもアリだという。

有機化合物を利用する燃料電池というと、今流行のバイオエタノールを用いた燃料電池が頭に思い浮かぶ。元記事でもこの辺に関する説明がされていて、いわく「さとうきびをバイオエタノールに替えてそれを燃料として稼動させるより、直接砂糖を触媒に使うこの砂糖燃料電池の方が、(直接エネルギー変換できるので)効率よくエネルギーを得ることができる」とコメントしている。

ジュースで携帯の電池補充イメージ残念ながらこの「生体燃料電池」では今のところ少量の電力しか供給することができないが、教授らは「電力を生み出したこと自体大きな成功である」と述べている。現在研究グループはさらなるエネルギー変換効率を得るために、別の酵素を組み込んだ実験をしている最中とのこと。

また、この「生体燃料電池」の利点の一つに「完全な生体分解性物質で作られた電池である」ことを挙げている。つまり電池に付きまとう問題である「使用後の廃棄方法」について、すべてが有機化合物であるため、環境汚染の可能性が少ないというのだ。

研究グループではこの「生体燃料電池」を一般商品化するには最低で3年はかかるだろうとしている。しかしすでに同グループに資金提供を行っているアメリカ国防総省も「戦場で砂糖を燃料にできる」とし大いに注目している。

人類の文明にさまざまな恩恵を与えてくれる「電力」「電気」を色々な物質から生み出そうという試みは日本でも多数の人が行っている。理科の実験で果物に電極を指して電力を生み出す実験は経験した人も多いだろうし(【参考:電気事業連合会、PDF】)、酵素などのナノバイオ技術を用いて砂糖から電力を生み出そうという仕組みは【松下(6752)】でも研究が進められている(【砂糖電池についてのレポート】)。

この「生体燃料電池」の最大のハードルは、その機構自身にかなりコストがかかること。そのため現在では効率が悪くとも、既存の機構をそのまま使えるバイオエタノールに軍配が上がることになる。しかし技術の進歩や量産化を推し進めれば、その問題をクリアすることも不可能ではない。

そう遠くない将来、喫茶店のシュガースティックを携帯に差し込んで電力用燃料を補充するサラリーマンの姿があちこちで見受けられるような、あるいはキオスクで購入したキャラメルをノートパソコンの挿入口に入れて電力補充をする、そんな時代がやってくるのかもしれない。

【情報提供:かむ氏(一言掲示板内)】。Thanks!

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