成人式に「65歳になったら毎月37.3万円の年金もらえるよ」と言う厚生労働省・その試算と可能性
2007年04月30日 12:00
厚生労働省は4月27日、26日に開催された第四回社会保障審議会年金部会において発表した「厚生年金の標準的な年金額(夫婦二人の基礎年金額を含む)の見通し」を公開した(【関連資料、PDF】)。それによると、現在20歳の人が65歳で年金をもらう時には、2001年から2002年頃の経済状況が今後続くと仮定した場合には夫婦で月額29.1万円、最近の経済状況の場合なら月額37.3万円が支給額になるという試算が行われていることが明らかになった。
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この試算についてはすでに「現在20歳の人が年金をもらう65歳の時には、月額37万円に!??」といった形で各所で報じられているのでご存知の人も多いことだろう。
リリースによる、年金支給額試算一覧。人口増加率が高い予想のまま推移すれば、現在20歳の人たちは65歳時点で、夫婦で月額39.2万円を支給される……という試算。あくまでも試算。カッコ内は所得代替率。つまり平均的所得の何%にあたるかを示している。
この試算は
・夫が平均的収入で40年間働き、その間ずっと年金を納めている。妻は専業主婦。
・物価の上昇率は考慮した上で計算(年金は物価スライドを導入しているため)
・物価上昇率は年1.0%、賃金上昇率は年2.5%、運用利回り年4.1%と仮定。
から計算されたもの。
しかし例えばレポート内の別表を見ると、2051年における現役男子の平均賃金は手取りで72.4万円(2006年は38.0万円)と2倍近い数字となっている。
この数字は2051年におけるものではなく、2006年の貨幣価値基準に算出しなおした上で、との話だから、単純計算で2051年には日本人が皆、現在の基準で倍の給金をもらえるハッピーな社会になっている試算である。鳩山内閣の「所得倍増計画」でもあるまいし。
また、今後50年間ずっと低インフレが続いたまま賃金が継続的に上昇する前提となっているなど、非現実的で机上の空論に近い。
【直前の記事】の試算にもあるように、有効な人口政策や生産力向上政策がなされない限り、人口の減少やそれに伴う生産力・国としてのモチベーション低下は避けられない。2005年における出生率は1.25で、さらに今後減少する傾向にある(【厚生労働省・人口動態統計月報年計】※後に1.26に修正)。また、【内閣府の調査記録】を見ても、社会的・経済的支援が不十分なため、子育てを断念せざるを得ない家庭が多く、そのような状況を見て子どもを育むことそのものをあきらめる人が増えているのがわかる。
厚生労働省の出生率変化表。具体的・抜本的政策を打ち出して実行しない限り、右肩下がりのカーブを止める手立ては無い。
年金が将来的にも安定している、問題はないとアピールすることで、滞納者を減らそうとする意図があるのは分かる。滞納者が増えれば増えるほど、状況は悪化し、ますます滞納者が増えるという、マイナススパイラルにおちいりかねないからだ。とはいえ、リアリティの無い試算で素晴らしさを演出しようとしても、逆効果になりかねない。
現状をまずは正しく認識し、その上で最善策を模索し、それを実行するなり関連官庁に上程するなりするのが、真っ当なやり方だと考えられるのだが、どうだろうか。
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