証取委、不当な高額公募価格の設定でエイチ・エス証券への処分を勧告

2007年03月24日 11:00

株式イメージ【証券取引等監視委員会】は3月23日、証券取引法(著しく不適当な引受価額での引受け)に違反したとして、【エイチ・エス証券(8699)】本体と該当案件の担当をしていた同社元部長を行政処分するように、金融庁に勧告した(【発表リリース】)。不適当な公募価格設定で投資家保護の要件を満たしていないとし、行政処分勧告を行ったのは今回がはじめてとなる。

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リリースによると対象となったのは2004年10月の上場時に同社が主幹事証券をつとめた【21LADY(3346)】。21LADYの上場の際に公募価格を設定する時、21LADY側が

「公募価格は、時価総額100億円となる価格が妥当と考えている」
「当社からは、公募価格としてより高い金額を従前から提示されてきており、価格引下げには応じられない」
「公募価格は、最低でも、本件上場申請会社が従前発行していたストックオプションの行使価額を上回らなければならない」


など、自社の都合を前面的に押し出した要求を突きつけ、エイチ・エス証券側も「この要求を受け入れないと、主幹事から外されるかもしれない」という危機感のもとにこれを承諾。結局、エイチ・エス証券内の内部計算式における理論価格をいちじるしく上回る金額とすることに合意した。

一部報道ではこの「かさ上げされた金額」について、理論価格が約6万1000円、機関投資家へのヒアリングを踏まえた最終公募価格が11万円、当初の公募設定価格が約14万円としている。

21LADYはシュークリームで有名な「洋菓子のヒロタ」を子会社に持つことや、社長がベンチャーリンクやタリーズコーヒー出身の女性であることなど、上場前から話題性に富んだ会社ではあったが、上場前後にも「公開時のPERが300近くとは何事だ」「業務や財務内容と比べて設定価格が高すぎる」などといわれ、案の定初値は公募価格の11万円を14.54%下回る9万4000円。以後も公募価格を下回る水準で株価は推移している。

21LADYの株価推移。典型的な「上場ゴール」型チャート。
21LADYの株価推移。典型的な「上場ゴール」型チャート。また、エイチ・エス証券が当初算出した理論株価値が案外理想的な設定株価だったことも分かる

簡単にまとめると、

21LADY「公募価格をもっと吊り上げろ、これじゃ安すぎ。時価総額100億円になるようにしろ、社員らに配ったストックオプションがもうかるようにしろ」
エイチ・エス証券「えー」
21「最初からこれくらいの公募価格にしろ言うてるやん、言うこと聞かないと……」
エ「適正価格をはるかに上回ってるよ、それ。でも言うとおりにしないと主幹事外されるかもなぁ」
21「さあ、どうなのよ」
エ「(つかまされた投資家の多くが損するだろうな、でもしかたない)……分かりました」


という感じになる。

投資家、特に個人投資家を小莫迦にするにもほどがある話だ。

今件が証券取引法違反に該当するかどうかは最終的に金融庁の判断を待たねばならないし、もししかるべき判断が下されても21LADY側には何のおとがめもないだろう。

とはいえ、すでに同社は公開会社である。株式の需要、つまり市場が何らかの答えを出すだろうし、株主らによる権利の行使など、しかるべき情勢変化がおきても不思議ではないと思われる。

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