防衛省、ミサイル防衛システム運用進む・4年間でパトリオットを10基地15部隊に配備

2007年03月11日 11:30

パトリオットイメージ【NIKKEI NeT】が報じたところによると【防衛省】は3月8日、ミサイル防衛(MD)システムの運用にあたり、突然の有事、すなわち他国が突然弾道ミサイルを発射した際の緊急時における行動基準「弾道ミサイル破壊措置緊急対処要領」を政府与党側に提示、政府側もこれを了承した。3月末には航空自衛隊入間基地(埼玉県)に弾道弾迎撃能力のあるパトリオットミサイル(PAC3)を配備するのに備えた措置。またこれら伴い、今後のPAC3の配備先も9日までに明らかになっている(【参照:NIKKEi NeT】)。

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パトリオットミサイルの最新版PAC3はロッキード・マーチン社開発の迎撃ミサイルで、先日沖縄のアメリカ空軍嘉手納基地などに先日配備された。敵性ミサイルを撃ち落とす対空ミサイルは、細長い羊かんのようなものを二つ並べて斜め上に掲げたような外見をしたミサイルケースの中におさめられていて、レーダー車によるレーダーや電源車、アンテナ車など各種運用システムと連携して作動する(【ロッキードマーチン社の解説ファイル、PDF・英語】)。かつて湾岸戦争時にイラク軍によるスカッド・ミサイルを迎撃したことで有名になった。

MDは敵性ミサイルが発射されるのではないかという兆候が見られ、対処に余裕がある場合は防衛相が首相の承認を得て迎撃を命令するが、その余裕がない突発的事態の際に今回の要領が適用される。具体的には「弾道ミサイル発射の疑いやおそれがある」「人工衛星打ち上げ用ロケットなどが落下するおそれがある」という、すでに発射された時点での状況を想定。可能性が高い事態と認識し、防衛相が事前に迎撃を命じておき、実際に敵性ミサイルが発射されれば、現場指揮官が「上」の判断を仰ぐことなく現場の判断で迎撃できるようになる。

また、このPAC3の発射即時体制がルール化されたことに伴い、日本国内のPAC3の配備計画も明らかになった。3月末に入間基地に配備された後は、2007年度に霞ケ浦(茨城県)、習志野(千葉県)、武山(神奈川県)の各航空自衛隊分屯基地に各1部隊を配備。東京を中心とする首都圏の防衛体制を整える。その後2008年から10年にかけて中部東海地方や九州北部など、「飛ばしてくる可能性の高い西側に位置する国」に比較的近い地域の7基地に、12部隊を設置。最終的に4年間で10基地・15部隊を全国に配備する。

交渉なり相手の柔軟化でコトが済めばそれが一番なのだが、そのような理想は果たされないのが外交政策の現実。ノーガード戦略で痛い目にあってからでは遅すぎる。このような場合本来ならTFT戦略(Tit For Tat、しっぺ返し戦略。協調し、その後は相手と同じ戦略を取る。手を結ぶのが一番だと相手に思い知らしめるやり方)が一番なのだが、日本の法制上「しっぺ返し」は不可能に近い。そのため、ハリネズミを装い相手にムダだと知らしめるのが次善の策ということになる。

果たしてPAC3が「相手」への交渉カードとなりうるのかどうか。まずは早急な配備と確実で現実的な運用要綱の確定(現在はまだ了承の段階。23日で閣議決定)を願いたいところだ。


■関連記事:
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【横須賀母港の第七艦隊の護衛艦がすべてイージス艦へ、ミサイル防衛体制強化のため】
【対弾道弾用パトリオット対空ミサイルの首都圏配備、防衛庁がアメリカに要請との報道】

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